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京セラの創業者・稲盛和夫名誉会長のご逝去を悼み心よりお悔やみ申し上げます。

今日から、稲盛会長のご偉業に対し尊敬と感謝の念を込めて「京セラフィロソフィー」をご紹介します。

第一回は、第一章「経営の心」より、「心をベースとして経営する」です。

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心をベースに経営をする

 京セラの経営のベースとして、「人の心」というものが非常に強い規範になっています。

 創業当初、頼るべきものといっても、お金もありませんし、あるといえば私の持っているセラミックスの技術だけでした。その技術も日進月歩の技術革新の世界です。

 そのような中で、私は一体何を頼りに経営していけばいいのか、確かなものとは何かを真剣に考えておりました。悩んだ末「人の心」が一番大事ではないだろうかと考えました。

 歴史をひもといてみても、人の心というのは非常に移ろいやすく、頼りにならなくてこれほど不安定なものはないという事例をいくつも見出すことができます。しかし、同時に世の中でこれほど強固で頼りになるものもないという事例も数多く見出すことができるのです。

 私はそういう強くて頼りになる、物よりも何よりも頼りになる、人の心というものをベースにした経営をやって行くべきではないかと思ったのです。

 それでは、どうすればそういう強固で信頼のできる心というものを集めることができるのか。そのためには、中心になるべき経営者(私)が、まずそういう人々のすばらしい心が集まってきてもらえるようなすばらしい心を持たなければなりません。

 また、そういう心を一致団結させ、信じられる者同士の集団にするには、経営者としてのわがままを自戒し、私心を捨ててこの集団のためなら生命をかけて尽くすというくらいの気持ちになって事にあたらなければならないと思っています。

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人の心ほど移ろいやすく頼りにならないと同時に、これほど頼りになるものもない、と考えるところに稲盛さんの真骨頂があると思います。

企業は、「経営者の器以上に大きくならない」といわれますが、器というのは人間の大きさ。つまり、人格的に相矛盾するものを同時に持っている「振幅」のことだといえます。

例えば、

・大胆さと細心さ

・温情さと冷徹さ

・論理的と情緒的

などを状況に応じて矛盾なく使い分けることです。

 これは持って生まれた気質なのか、意識して振幅を大きくできるのかよくわかりませんが、「器を大きくする」という言葉があるということは、努力によって可能なのでしょう。

 稲盛さんは、「私心を捨てて集団のために尽くす」ことが大切だとおっしゃっていますが、それがこれに通じるのかもしれません。