有限会社コンサルネット

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ベクトルを合わせる

 人間は、個として生まれ、自由に生きているのですから、いろいろな発想をする人があってもいいと思います。組織においても、各人が全く自由な発想のもとに行動し、それでいて調和がとれているというのが、最高の姿だと思います。

 しかし、私の経験からすれば、これは理想であって、実際のところは力がそろわず、決してうまくいくことはありません。歴史を見ても、勝手な連中が集まって長く栄えた集団はありません。

 集団を構成する、個々の人々の志向が一致していないと、力が分散してしまい、大きな力を発揮し続けることができないからです。そのため、常に集団のベクトルをそろえておく必要があるのです。

 ベクトルをそろえるとは、考え方を共有していこうということです。人間として考え行動していくための、最もベーシックな哲学をともにし、それを座標軸に、各人が持てる個性を存分に発揮していこうということなのです。

 同好サークルならば、自由な発想と個性の発揮だけでいいでしょう。しかし、目的を持った集団(会社)であれば、価値観を共有してはじめて、達成への永続的、集中的な取り組みが可能となるのです。


全員参加で経営する

京セラではアメーバ組織を経営する単位としています。

各アメーバは自主独立で経営されており、そこでは誰もが自分の意見を言い、経営を考え、それに参画することができます。

一握りの人だけで経営が行われるのではなく、全員が参加するというところにその真髄があるのです。

この経営への参加を通じて、一人ひとりの自己実現がはかられ、全員の力が一つの方向に揃ったときに、集団としての目標達成へとつながっていきます。

全員参加の精神は、私たちが日頃の開かれた人間関係や仲間意識、家族意識を培う場として、仕事と同じように大切にしてきた会社行事やコンパなどにも受け継がれています。


パートナーシップを重視する

 京セラでは創業以来、心の通じ合える信頼できる仲間づくりを目指し、これをベースに仕事をしてきました。

したがって、社員同士は経営者と従業員という縦の関係ではなく、一つの目的に向かって行動を共にし、自らの夢を実現していく同志の関係、つまり、パートナーシップという横の関係が基本となっているのです。

一般にありがちな権力や権威に基づく上下関係ではなく、志を同じくした仲間が心を一つにして会社を運営してきたことにより、今日の発展があるのです。

これはパートナーとしてお互いを理解し合い、信頼し合える人間同士の結びつきとなったからこそ可能となったのです。

実力主義に徹する

 組織を運営していく上で最も重要なことは、それぞれの組織の長に本当に力がある人が就いているかどうかということです。

本当に力がある人とは、職務遂行能力と共に、人間として尊敬され、信頼され、みんなのために自分の力を発揮しようとする人です。

こうした人が組織の長として、場や機会が与えられ、その力を充分に発揮できるような組織風土でなければなりません。

そうした実力主義によって組織運営が行われれば、その組織は強化され、ひいてはみんなのためになっていきます。

京セラでは、年功や経歴といったものではなく、その人が持っている真の実力が、全てを測る基準となっているのです。



大家族主義で経営する

 私達は、人の喜びを自分の喜びとして感じ、苦楽を共にできる家族のような信頼関係を大切にしてきました。

これが京セラの社員同士のつながりの原点といえます。この家族のような関係は、感謝し合うという気持ち、お互いを思いやる気持ちとなって、仕事をしていく基盤となりました。

家族のような関係ですから、仲間が困っているときには、理屈抜きで助け合えますし、プライベートなことでも親身になって話し合えます。

人の心をベースとした経営は、とりもなおさず家族のような関係を大切にする経営でもあるのです。


お客様第一主義を貫く

企業が利益を追求する集団であるということをはき違え、自分たちだけが儲けんがため、という仕事の進め方をしているケースがあります。

これは絶対にあってはならないことです。社外の客先は当然ながら、社内の部門間であっても、相手に喜んでいただくということが商いの基本です。

私たちが納期に追われて一生懸命に働くのも、お客様が必要とされるときに品物を届けたいと思うからです。

また、“手の切れるような製品”をつくらなければ ならないのも、お客様の要望に応えたいと思うからです。

そして、お客様がさらに高い利益をあげられるように、新製品の開発を行わなければならないのです。

全ては、お客様に喜んでいただくという一点から出ているのです。

自分たちの利益のみを考えるケースが今非常に多いようですが、そのように自己中心的にものごとを考えている人には、ビジネスチャンスは訪れにくいものです。

素晴らしいビジネスができる人とは、相手が儲かるようにしてあげる人です。これがビジネスチャンスをもたらし、ひいては自分の利益も生むのです。