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▼中小建設業のためのISO9001・2015活用ブック

 ISO9001が7年ぶりに改訂されました。すでに改訂が終わった会社さんも多いと思います。しかし、内容となるとどうでしょう。自社の業務マニュアルになっていますでしょうか?

 ISO9001は、品質マネジメントの仕組みといわれるように、計画―運用―評価―改善のP-D-C-Aサイクルを回すことにより、自社の業務改善につながるとても有効な規格です。しかしながら実態は、実務に役立つどころか二重業務の弊害が発生しているのが現状です。

 私は30数年来、建設業の経営コンサルタントとして、中小建設業を500社以上みてきました。その中で、ISOが現実の業務と合わない。余計なことをやらされていると重荷に感じているという会社がたくさんあります。

@「品質マニュアル」が規格用語ばかりで、何を書いてあるのかよく理解できない。結局読めない、読まない。無用物となっている。

A ムダな規定や手順書、帳票(様式)をたくさん作成している。
 文書管理規定、内部監査規定、是正処置規定、施工品質計画書、受注確認書、業者評価表、不適合報告書など。

B 内部監査やマネジメントレビューが形骸化している。
 これらは「現場パトロール」や「幹部会議」などですべて代行できます。
などなど、ISOを導入してから本来不要な業務や文書がたくさん発生しているのです。

「ISOって大変だ、でも、いまさら返上するわけにもいかないし」。その結果ISOは棚上げになり、定期審査の前になって、一部の人が苦労してデータを作成する。これでは、何のためのISOなのか分かりませんし、担当者が可哀想です。

 その要因は、品質マニュアルの内容が自社の業務手順になっていないこと。ほとんどが大手企業や他社の物真似であり、わかりにくい規格用語や内容が羅列されているのです。ISOは本来、中小企業のためのシステムであり、自社の業務を簡潔にマニュアルにすればいいのです。

本来ISO9001は、次のような付加価値をもたらします。

(1) 業務の標準化、マニュアル化により、誰が何をなすべきかが明確になり、業務のレベルアップができる。

(2) 品質向上と顧客重視の仕組みにより、顧客満足度が向上する。

(3) 社員の教育訓練、育成計画が作成され、能力向上に役立つ。

(4) 継続的な改善の仕組みが構築され、仕事の質の向上がはかれる。

(5) 決めたことを守る体質が強化され、業績向上に寄与する。

 ISOを導入して、業績向上につながらなければ価値はありません。ISOの成果は、経営トップの責任といえます。ぜひ、中小建設業に合った内容への変更をお勧めいたします。

 2015年版の発行がこれらの弊害から脱却するチャンスなのです。なぜなら、品質マニュアルの要求も文書化の要求もなくなったからです。自社の業務マニュアルを作成すればいいのです。その進め方と具体策をこれから述べていきます。

 改訂がすでに終わった会社も、まだの会社も、これから新規取得を考えている会社にもお役に立てると思います。ご意見があればどうぞお気軽にお問合せください。


ISO9001・2015年版・規格要求事項の建設業向け解釈

<規格要求事項>

4.組織の状況

4.1組織及びその状況の理解
組織の目的や経営戦略、外部及び内部の課題を明確にして品質マネジメントシステム(以下、品質活動の仕組みという)を構築し、運用すること。
これら外部及び内部の課題に関する情報を監視し、見直しすること。

注記 1:課題とは、好ましい要因や状況、好ましくない要因や状況をいう。
注記 2:外部の課題とは、国際、国内、地域の法令、技術動向、競争環境、市場動向、文化、社会及び経済の環境から生じる課題などをいう。
注記 3:内部の課題とは、企業の理念、価値観、社風、信用、ノウハウ、業績結果などをいう。

<解 説>

・経営計画を立てている会社は、上記の内容は当然考慮していると思います。
・経営計画を立てたことのない会社では、「SWOT分析」などをする方法もあります。

※SWOTとは、企業の強み(Strength)、弱み(Weakness)、機会(Opportunity)、脅威(Threat)のことで、それぞれの頭文字をとってSWOT(スウォット)といいます。企業が経営戦略や経営計画を策定するためには、自社の内部環境(経営資源)と外部環境(経営を取り巻く環境)の分析が不可欠ですが、SWOT分析はその両者を統合的に行う手法です。

<規格要求事項>

4.2利害関係者のニーズ゙及び期待の理解
 
 顧客要求事項、法令・規制要求事項を満たす施工物及びサービスを一貫して提供するために、組織に与える潜在的、顕在的な影響を考慮し、組織は次の事項を決定すること。

 a) 品質活動に関連する利害関係者
 b) その利害関係者の、品質活動に対する要求事項

 これらの利害関係者及びその関連する要求事項に関する情報を監視し、見直しすること。

<解 説>

・施工物及びサービスの「サービス」とは、引渡し後のメンテナンスや定期的な訪問活動、瑕疵責任などのことです。
公共工事中心の会社では、サービスという概念がわかりにくいかもしれませんが、「施工物(ハード)」だけが対象でないことを理解する必要があります。

・利害関係者とは、顧客、行政、所属業界団体などをいいます。
場合によっては、協力会社、仕入先、社員も該当します)。利害関係者及びその要求事項をどの範囲まで対象とするかは、企業に任されています。

<規格要求事項>

4.3品質活動の適用範囲の決定

 品質活動の適用範囲を決めるとき、その境界及び適用可能性を決定すること。

 この適用範囲を決定するとき、組織は、次の事項を考慮すること。
 
 a) 4.1に規定する、内部および外部の課題
 b) 4.2に規定する、関連する利害関係者の要求事項
 c) 施工物及びサービスの内容

 組織は、この規格の要求事項を可能な限り適用すること。

 品質活動の適用範囲は、文書にして利用可能な状態で維持すること。

 この規格の要求事項を適用できないときは、その正当性を示すこと。

 その場合、それが施工物及びサービスを提供する能力や責任に影響を及ぼさないこと。
 
<解 説>

・適用範囲や規格の適用除外をできるだけなくせという方針です。
 公共工事中心の会社では、設計を適用除外としているところも多いと思います。

・従来から「施工計画」をそこに充てている会社もあります。
 施工計画の良し悪しが、品質を左右します。

・施工計画書をだれが作成し、だれが承認するのか、施工検討会の実施基準などがあれば、それを記述します。


<規格要求事項>

4.4品質活動及び仕事

4.4.1この規格の要求事項に従って、必要なプロセス(以下、業務工程または仕事の単位という)及びそれらの相互作用を含む、品質活動の仕組みを確立し、実施し、維持し、継続的に改善すること。

品質活動に必要な仕事内容及びその全体の流れを整備し、次の事項を明確にすること。

 a) これらの仕事に対して必要な情報、及び期待される結果
 b) 仕事の順序及び相互関係
 c) 仕事内容及び管理の効果を実証するために必要な監視及び測定、関連する評価指標、判断基準及び方法
 d) 必要な資源を明確にし、これらが利用できることを確実にすること
 e) 仕事に関する責任及び権限の割当
 f) 6.1の要求事項に従ったリスク及び機会。及び、これらへの適切な取組みを計画し、実施すること
 g) 仕事の実施状況を監視、測定(該当する場合)、評価するための方法、及び計画した結果を達成するための業務手順の変更
 h) 仕事内容や品質活動の改善を検討する時期や回数

4.4.2必要な程度、次の文書を維持すること。
 a) 品質活動や仕事の運用を支援するための文書。
 b) 品質活動や仕事が計画どおりに実施されたと確信するための記録。


<解 説>

・これは、具体的な要求事項ではありませんし、マニュアルに記述する事でもありません。この項以降の具体的な要求事項通り進めていけばいいものです。
・品質活動の体系図などで全体図を表す会社が多いです。
・必要な程度の文書とは、自社で決めていいという意味です。


<規格要求事項>

5.リーダーシップ

5.1リーダーシップと責任

5.1.1 経営者の責任
 
 社長は、次に示す事項によって、品質活動に関するリーダーシップ及びコミットメント(以下責任という)を実証すること。

 a) 品質活動の有効性に責任を負う。
 b) 品質方針及び品質目標を確立し、それらが組織の戦略的な方向性及び組織の状況と両立することを確実にする。
 c) 品質方針が組織内に伝達され、理解され、実施されること。
 d) 仕事内容と品質活動要求事項の整合性を図る。
 e) プロセスアプローチ及びリスクに基づく考え方の利用を促進する。
 f) 必要な資源が利用可能であること。
 g) 要求事項を実行し、目的を達成することの重要性を伝達する。
 h) 計画した結果を達成すること。
 i) 必要な人々を雇用し、指揮し、支援する。
 j) 継続的改善を促進する。
 k) その他の関連する管理層がリーダーシップを発揮できるよう、役割を支援する。

注記 この規格で“事業”という場合、それは、組織が公的組織か民間組織か、営利組織か非営利組織かを問わず、組織の存在の目的の中核となる活動という広義の意味で解釈することができる。

<解 説>

・プロセスアプローチとは、仕事の基本であるPlan(計画)、Do(実施)、Check(検討または評価)、Act(改善)を実行実施することです。

・リスクに対する考え方とは、事業にはどのようなリスクがあり、それを防止または軽減するための方策を考えることです。具体的には、「6.1リスク及び機会への取り組み」で検討します。

5.1.2 顧客重視

 社長は、次の事項によって、顧客重視に関するリーダーシップと責務を果たすこと。

 a) 顧客要求事項及び守るべき法令・規制を明確にし、理解し、一貫してそれが守られている。(8.2受注、8.5施工)
 b) 施工物及びサービスの適合性、並びに顧客満足を向上させる能力に影響を与える可能性のあるリスク及び機会が明確にされ、対処されている。(6.1リスク及び機会)
 c) 顧客満足の向上を重視することが維持されている。(9.1.2顧客満足)

<解 説>

・「5.1リーダーシップ」は社長が具体的に何かをすることではなく、各項の要求事項を社員が実施すればよい。


<規格要求事項>

5.2品質方針

5.2.1 品質方針の確立

 社長は、次の内容を含んだ品質方針を策定し、維持すること。
 a) 組織の目的や置かれている状況に合致している。
 b) 品質目標の設定及び見直しのための枠組み(方向性)を与える。
 c) 要求事項を守ることを約束する。
 d) 継続的改善を約束する。

5.2.2品質方針の伝達

 品質方針は、次に示す事項を満たすこと。
 a) 文書にして利用できるようにする。
 b) 組織内に伝達し、理解し、実行できるようにする。
 c) 必要に応じて、関連する利害関係者が入手できるようにする。

<解 説>

・品質という限られた視点ではなく、安全、品質、原価、工期、環境対策すべてを統合した方針の作成をお奨めします。経営方針、安全方針、品質方針などがバラバラに存在していては、わかりにくいでしょう。

<規格要求事項>

5.3 組織の役割、責任及び権限

 社長は、関連する役割に対して、責任及び権限を割当て、組織内に伝達し、理解されるようにすること。

 社長は、次の事項に対して、責任及び権限を割り当てること。

 a) 品質活動の仕組みが、ISO9001の規格に合っていることを確実にする
 b) 仕事が、計画した結果をだすことを確実にする。
 c) 品質活動の成果、改善の機会、変更、変革の必要性を社長及び幹部に報告する。
 d) 組織全体にわたって、顧客重視を促進すること。
 e) 品質活動の変更を計画し、実施する場合には、最初の計画と整合性があり、欠落がないようにすること。

<解 説>

・管理責任者という用語がなくなりました。しかし、現実には責任者が不明な組織はないと思います。責任及び権限は、中小企業では一人三役は当たり前ですから、厳密に業務分担をする必要はありません。もちろん組織や職務分掌が決まっている会社ではそれを流用できます。品質マニュアルという業務マニュアルを作成するなら、その各項で主な責任者を明記すればよいでしょう。


<規格要求事項>

6.計 画

6.1 リスク及び機会への取組み

6.1.1 リスク及び機会の決定

 品質活動の計画を策定するとき、4.1に規定する課題及び4.2に規定する要求事項を考慮し、次の事項のために取り組む必要があるリスク及び機会を決定すること。

 a) 品質活動が、計画した結果を達成できることを保証する。
 b) 望ましい影響を増大する。
 c) 望ましくない影響を防止、または低減する。
 d) 改善を達成する。

6.1.2 取組みの計画

 次の事項を計画すること。

 a) 上記によって決定したリスク及び機会への取組み
 b) 次の事項を行う方法
  1) その取組みが品質活動に組み込まれ、実施される(4.4参照) 
  2) その取組みが有効であることの評価

 リスク及び機会への取組みは、施工物及びサービスの適合への潜在的影響と釣り合いのとれたものであること。

注記1 リスクへの取組みの選択肢には、リスクを回避すること、ある機会の追求をするためにそのリスクをとること、リスク源を除去すること、起こりやすさまたは結果を変えること、リスクを共有すること、十分な情報を得たうえで意思決定によりリスクを保有することなど。

注記2 機会は、新たな慣行の採用、新製品の発売、新市場の開拓、新たな顧客への取り組み、パートナーシップの構築、新たな技術の使用、組織のニーズまたは顧客のニーズに取り組むための実行可能な内容など。

<解 説> 

・リスクとは、事業に影響を与えるマイナス要因のこと。

@ 品質活動が計画した結果が得られない
A 望ましくない影響が顕在化、増加する
B 継続的改善が達成できない

といった事態につながるリスクと機会には、どんなものがあるかを組織として把握しておくように、という趣旨です。

・リスクや機会を考える上で、情報源になるのが、内部及び外部の課題(4.1)と利害関係者の要求事項(4.2)です。

・例えば、
@ 人身事故を起こせば、入札に参加できないリスクがある。
A 顧客の要求が個性化しているので、特徴のない商品では見向きもされないというリスクがあるなどです。

・機会とは、
@ 民間需要の開拓強化
A 新技術や新規事業の導入
B 異業種連携による新需要創造などが考えられます。


<規格要求事項>

6.2品質目標及びそれを達成するための計画策定

6.2.1 品質目標

 関連する部門、階層及び業務内容に応じて、品質目標を確立すること。

 品質目標は、次の事項を満たすこと。

 a) 品質方針と整合している。
 b) 測定可能である。
 c) 適用される要求事項を考慮に入れる。
 d) 施工物及びサービスの適合、及び顧客満足の向上に関連している。
 e) 監視する。
 f) 伝達する。
 g) 必要に応じて、更新する。

 品質目標を文書にし、保持すること。

6.2.2 計画

 品質目標を達成するために、次の内容を含んだ計画を決定すること。

 a) 実施事項
 b) 必要な資源
 c) 責任者 
 d) 達成期限
 e) 結果の評価方法

<解 説> 

・部門別に目標を立て、それを達成するための具体策を作成することです。

・これも、品質方針で述べたように、品質だけでなく、経営的な視点で品質を含んだ目標設定することが大切です。

例えば、
@ 営業部門では、受注残、受注、受注粗利益目標、官民受注比率、新規開拓、顧客満足指数など
A 工事部門では、安全、品質、原価、工期、環境対策に関する中から優先順位を考えて目標設定する。

6.3変更の計画

 品質活動の変更が必要だと判断した場合(4.4 参照)、その変更は、計画的かつ体系的な方法で行うこと。

 次の事項を考慮すること。
 a) 変更の目的、及びそれによって起こり得る結果全て
 b) 品質活動が最初の計画と整合性があり、欠落がないこと
 c) 現在の人や施設設備で対応できるか
 d) 責任及び権限の割当や再割当は必要ないか
 
<解 説> 

・ここでいう変更は
@4.4品質に関わる仕事の仕組みの変更、つまり、新事業の導入や組織体制が変わったときのこと。
A目標を達成するための計画を変更するときが、これに当たります。

・いずれにしても当然のことをいっている内容です。マニュアルに書かなくても、矛盾なくできていれば問題ありません。

しかし、ダメな審査員は、「6.3変更の計画はどうしていますか?」などという意味のない質問をするので困りものです。そこで、仕方なく、マニュアルに書いているのが現状でしょう。

・優秀な審査員は、業務マニュアルの中から、規格のどの項目が当てはまるのかを知り、文書ではなく、現場で実施されているかで判断します。そんな審査員が増えることを期待しています。


<規格要求事項>

7.支 援

7.1資源

7.1.1 一般

 品質活動の確立、実施、維持及び継続的改善に必要な資源を決定し、提供すること。

 次の事項を考慮すること。

 a) 内部に存在している資源の実現能力、及びその資源の限度。
 b) 外部提供者(協力会社や仕入先、取引先など)から取得する必要があるもの

7.1.2 人々

 顧客要求事項及び法令・規制要求事項を一貫して満たすことができることを確実にするために、組織は、品質活動の有効な運用のために必要な要員を提供すること。

7.1.3 施設、設備、資機材

 施工物及びサービスの適合を達成するための仕事に必要な施設、設備、資機材などを決定し、提供し、維持すること。

注記 施設、設備、資機材には、次に示すものがある。
 a) 建物及び関連する施設、備品など
 b) 設備(ハードウェア及びソフトウェアを含む)
 c) 輸送システム
 d) 情報及び通信技術

7.1.4 仕事環境

 仕事に必要な、また適切な施工物及びサービスを提供するために必要な環境を決定し、提供し、維持すること。

注記 必要な環境には、物理的、社会的、心理的、環境的要因及びその他の要因(例えば、気温、湿度、人間工学、清潔さ)などが考えられる。

<解 説>
 
・7.1.1〜7.1.4は、常識的な内容であり、特別な条件が求められているわけではありません。

7.1.5 測定機器

 適切な施工物を構築するために必要な測定機器を使用する場合には、組織は、有効で信頼できる測定結果を確実に得るために次のような必要な処置をとること。

 a) 実施される特定の種類の測定に対して適切である。
 b) 継続的な目的に適合することを確実にする。

 組織は、適切な測定機器を証明する文書を維持すること。

 測定の履歴が法令に適用、顧客や利害関係者の期待となっている場合、測定結果の妥当性を証明するため、次のことを実施すること。

 a) 定められた間隔又は使用前に、国際又は国家計量標準に対応する計量標準により校正又は検証を行う。そのような標準が存在しない場合には、校正又は検証に用いた基準を記録する。
 b) 校正済みかそうでないか識別できるようにしておく。
 c) 校正の状態及びそれ以降の測定結果を無効にするような操作、損傷又は劣化が起こらないよう保護する。

 計画された妥当性確認、もしくは校正中、使用中に機器に欠陥があることが判明した場合には、それまでに測定した結果の妥当性に問題がないかどうかを明確にし、必要に応じて、適切な是正処置をとること。

<解 説> 

・建設業では、トータルステーション、トランシット、レベルなどがこれに当たります。
 校正が要求されているだけで、持ち出し管理や使用前点検記録が求められているわけではありません。メジャーやスタッフは常識的な使用で問題ありません。

7.1.6 組織の知識

 仕事に必要で、適切な施工物及びサービスを提供するために必要な知識を決定すること。

 この知識を維持し、必要な程度まで利用できる状態にすること。

 変化するニーズ及び傾向に対処するとき、現在の知識を考慮し、必要な追加の知識を習得する方法、又はそれを検索する方法を決定すること。

注記 1 組織の知識には、知的財産及び学んだ教訓などの情報が含まれる。
注記 2 必要な知識を習得するために、組織は、次の事項を考慮することができる。

 a) 内部資源(例:失敗及び成功事例から学んだこと、組織内の各分野の専門家の文書になっていない知識及び経験など)
 b) 外部資源(例:規格・標準、学界、会議、顧客又は協力会社からの知識収集)

<解 説>

・社内に埋もれている、仕事を行う上で必要な知識、施工する上で必要な仕様や基準を整理し、足りなければ、外部の知識の入手や検索方法を決めておくということです。

・品質上の小さな欠陥情報、成果報告会の資料、会社の経費で購入した書籍・情報サービス、社員を派遣した研修・講習・セミナーなどが該当します。
・現状で問題なければ新たなことをする必要はありません。


<規格要求事項>

7.2力量

次の事項を行うこと。

 a) 品質に影響を与える業務をその管理下で行う人々に必要な力量を決定する。
 b) 適切な教育、訓練又は経験に基づいて、それらの人々が力量を備えていることを確実にする。(協力会社を含む)
 c) 該当する場合には、必ず、必要な力量を身につけるための処置をとり、その有効性を評価する。
 d) 力量の証拠として、適切な文書を保持する。

注記 適用される処置には、例えば、現在雇用している人々に対する、教育訓練の提供、指導の実施、配置転換の実施などがあり、また、力量を備えた人々の雇用、そうした人々との契約締結などを含めることもできる。

7.3認識

 組織の管理下で働く人々(協力会社を含む)は、次の事項に関して主体的に認識を持つこと。

 a) 自分たちが守らなければならない品質方針
 b) 自分たちが達成しなければならない品質目標
 c) 品質の向上によって得られる利益や仕事に対する自らの貢献
 d) 決められた手順を守らない時の問題点とその意味

<解 説>

・旧「6.1.2力量、認識及び教育・訓練」が、「7.2力量」、「7.3認識」に分かれただけです。要求事項は変わっていません。

・いずれにしても、社員の力量(能力)向上は企業の生命線ですから、単なる資格取得だけでなく、計画的に考えることでしょう。

・形式にとらわれることなく、計画―実施―評価―改善は、重要なことです。


<規格要求事項>

7.4コミュニケーション

 次の内容を含んだ品質活動に関連する内部及び外部のコミュニケーションの仕組みを決めて実行すること。

 a) 内容
 b) 実施時期
 c) 対象者
 d) 方法
 e) 実施者

<解 説>

・社内の会議や連絡体制をこの際整理して、不要なものは辞め、必要なことは追加することが重要です。会議が多すぎる会社も問題ですね。


<規格要求事項>

7.5文書及び記録

7.5.1 一般

 品質活動は、次の事項を含むこと。
 a) この規格が要求する文書や記録
 b) 品質活動の有効性のために必要であると組織が決定した文書や記録

注記 文書の程度は、次のような理由によって、それぞれの組織で異なる場合がある。
 a) 組織の規模、施工物やサービスの種類
 b) 仕事内容の複雑さ
 c) 人々の力量

7.5.2 作成及び更新

 文書や記録を作成及び更新する際に、次の事項を確実にすること。
 a) 適切な識別及び記述(例えば、タイトル、日付、作成者、参照番号)
 b) 適切な形式(例えば、言語、ソフトウェアの版、図表)及び媒体(例えば、紙、電子媒体)
 c) 適切性や妥当性を考慮した適切な見直し及び承認

7.5.3 文書や記録の管理
 
 文書や記録は、次の事項を確実にするために、管理すること。
 a) 文書や記録が、必要なときに、必要なところで、入手可能かつ利用に適した状態である。
 b) 文書や記録が十分に保護されている(例えば、機密漏えい、不適切な使用、欠落からの保護)。

 文書や記録の管理に当たって、該当する場合には、必ず、次の行動に取り組むこと。
 a) 配付、入手、検索及び利用
 b) 読みやすさ、保管および保存
 c) 変更の管理(例えば、版の管理)
 d) 保持及び廃棄

 品質活動の計画及び運用のために組織が必要と決定した外部からの文書や情報は、必要に応じて、特定し、管理すること。

注記 アクセスとは、文書や情報の閲覧だけの許可に関する決定、文書や記録の閲覧及び変更の許可及び権限に関する決定、などを意味する。

<解 説>

・文書と記録が一本化され「文書化した情報」に変更。品質マニュアル、文書化された手順の要求が削除されました。

・規定や手順書がある会社は、できるだけマニュアルに一本化されてはいかがでしょう。文書が少なくなれば管理も楽になります。

・外部文書や設計図書の管理も常識的な管理方法で問題ありません。台帳作成を求めているわけでもありません。


<規格要求事項>

8.運 用

8.1 運用の計画及び管理

 次に示す事項の実施によって、施工物及びサービス提供に関する要求事項を満たすため、さらに6.1で決定した取組みを実施するために必要な過程を、4.4で説明したとおり計画し、実施し、かつ管理すること。

 a) 施工物及びサービスに関する要求事項を明確にする
 b) 工程並びに施工物及びサービスの合否判定に関する基準の設定
 c) 施工物及びサービスに必要な機材や人などの決定
 d) その基準に従った、工程管理の実施
 e) 施工物及びサービスの適合を証明するために必要な段階確認・検査、アフターメンテナスなどの記録

 この計画は、組織の運営に適したものであること。

 計画した変更を管理し、意図しない変更によって生じた結果を見直し、必要に応じて、有害な影響を軽減する処置をとること。

 外注した業務が管理されていることを確実にすること。

<解 説>

・ISO9001:2008「7.1 製品実現の計画」に該当します。
・施工物だけでなく、実施過程についても合否判定基準を定め、その基準に従って管理することが求められています。
・しかし、具体的な要求事項ではなく、8.2受注〜8.6検査及び引渡しで対応しています。マニュアルに書く必要もありません。


<規格要求事項>

8.2受 注(製品に関する要求事項)

8.2.1 顧客とのコミュニケーション

 次の事項に関して、顧客とのコミュニケーションを図るための手順を確立すること。

 a) 施工物及びサービスに関する情報
 b) 引合い、契約若しくは受注処理、又はそれらの変更
 c) 苦情を含めた、顧客の考え方や受けとめ方の知得
 d) 適用可能な場合には、顧客の所有物の取扱い又は処理
 e) 該当する場合には、事故や災害など不測の事態が発生した際の対応手順

<解 説>

a) 工事履歴や施工事例のこと。定期点検やアフターメンテナンスなどを売りにしていれば、ホームページや会社案内に記述していることでしょう。

b) 引合い〜受注、変更契約の窓口を明確にするということ。中小建設業では、営業専任を置いていない会社も多く、全員対応ということでも問題ありません。

c) 苦情や顧客満足情報などの収集方法のこと。「8.5.5引渡し後の活動」や「9.1.2顧客満足」で記述している会社がほとんどです。

d)「8.5.2顧客所有物」で対応しています。

e) 不測の事態で契約内容が履行できなくなった場合の対応のこと。契約内容で明確になっていれば問題ありません。

8.2.2 受注内容の明確化

 顧客に提供する施工及びサービスに関する要求事項を明確にするとき、次の事項を確実にすること。

 a) 受注内容、適用される法令・規制、当社からの提案事項など。
 b) 会社が責任をもって施工及びサービスを実行する能力をもっていること。

8.2.3 受注内容の確認

 顧客に提供する施工及びサービスに関する要求事項を満たす能力を持つことを確実にすること。

  受注する前に、次の事項を含め確認を行うこと。

 a) 顧客(発注者や元請)との約束(施工及び引渡し後のサービス(瑕疵責任、品質保証、定期点検など)の内容。
 b) 顧客との約束はないが当然しなければならないこと。
 c) 自社で決めたこと
 d) 施工物及びサービスに適用される法令・規制。
 e) 契約内容の追加・変更。

 これらは、顧客と契約する前に実施しなければならず、契約又は注文内容が変更される場合には、それが解決されていること。
 
 顧客が注文内容を口頭で伝えてきた場合にも、内容を確認し、何らかの形で記録に残すこと。

 該当する場合、必ず、次の事項に関する文書を保持すること。
 a) 確認の結果 
 b) 施工物及びサービスに関する新たな要求事項

8.2.4 受注内容の変更

 契約や注文内容が変更されたときには、関連する文書(契約書、設計図書、施工計画書、施工図など)の変更を確実にすること。

 また、変更内容を関連する人に確実に伝達し、理解されること。

<解 説>

・規格の区分が、旧規格と異なりますが、要求事項は変化ありません。自社の引合い、現地調査、見積、契約の手順を記述すれば問題ありません。

・「能力確認書」などISO用の帳票が要求されているわけではありません。見積をするときに、施工能力(技術的な対応、工期、コストなど)は検討されているはずです。

・むしろ、民間工事の打合せ内容において、「言った、言わない」といった問題をなくすための方策(例えば、筆談により必ず記録を取るなど)が必要と考えられます。


<規格要求事項>

8.3設 計(または施工計画)

8.3.1 一般

 設計施工で受注する場合には、設計の仕組みを確立し、実施し、維持すること。

8.3.2 設計の計画

 設計の段階及び管理をする際に、次の事項を考慮すること。
 a) 設計の内容、期間及び複雑さ
 b) 要求される審査などのプロセス
 c) 設計の検証及び妥当性確認
 d) 設計の責任及び権限
 e) 設計の社内、社外の資源の必要性
 f) 設計に関与する個人及び関係者間のやりとりや管理の必要性
 g) 設計への顧客及び関連する消費者や団体などの関与の必要性
 h) 以降の施工及びサービスに関する要求事項
i) 顧客や密接する利害関係者が期待する設計手順の管理レベル
j) 設計の要求事項を満たしていることを実証するために必要な文書

8.3.3 設計のための情報

 組織は、次の事項を決定すること。
 a) 機能及び性能に関する情報や施工に不可欠な情報
 b) 以前の類似の設計からの情報
 c) 適用される法令・規制
 d) 組織が実施することを約束している基準又は規範
 e) 起こる可能性のある故障の影響

 設計のための情報は、目的に対して適切で、漏れがなく、曖昧さのないものでなければならない。情報に相反するものがあるときは、これを解決すること。

8.3.4 設計の管理

 次の事項を確実にするために設計の手順を管理すること。
 a) 設計図書の内容(図面、仕様書など)を明確にする。
 b) 設計審査を計画どおりに行う。
 c) 設計図書が設計情報を満たしているために検証を行う。
 d) 施工物が設計通りできているために妥当性確認を行う。
 e) これらの活動について文書を保持する。

8.3.5設計図書

 設計図書は、次のような様式で提示されること。
 a) 設計情報の入力に漏れがない。
 b) 施工方法、資材の購入、専門業者の使用に対して必要な情報を含む。
 c) 検査や段階確認の際の判定基準(寸法、材料の仕様、外観など)が決まっている。
 d) 安全で適正な使用のために必要な事項が明確になっている。 
 
 設計図書は保持すること。

8.3.6 設計の変更
 
 設計の途中およびそれ以降に行われた変更内容を明確にし、施工に悪影響を与えない範囲で検証し、管理すること。

 次の事項に関する文書を保持すること。
 a) 変更内容
 b) 検証の結果
 c) 変更の許可を誰がしたか
 d) 悪影響を防止するための処置

<解 説>

・規格の構成は変わりましたが、要求事項は変更されていません。むしろ、旧規格の設計審査、検証、妥当性確認が集約され、簡素化されました。

・また、「設計品質計画書」などの計画書を作成している会社もありますが、審査、検証、妥当性確認の時期をいつするとか、形式的で内容がないものが多い。

・むしろ、現地調査の内容充実や企画・提案力を上げる方策などの方が重要です。


<規格要求事項>

8.4購 買

8.4.1 一般

 資機材の購買・リースや施工を外注する場合、施工物が要求事項に適合することを確実にすること。

 次の事項に該当する場合には、協力会社から提供される材料や機械、労務が要求事項に適合することを確実にすること。

 a) 施工物のすべてが外注業者によって施工される場合。
 b) 施工物が外注先から直接顧客に提供される場合。
 c) 施工物の一部が外注される場合。

 協力会社が要求される能力を持つように評価、選定、仕事内容の管理及び再評価に関する基準を定め、運用すること。

 協力会社の評価、仕事内容の管理及び再評価の結果を文書にして保持すること。

8.4.2 協力会社の管理の方式と程度

 顧客に一貫して適切な施工物を提供するために、協力会社から提供される材料、機械、技能などが悪影響を及ぼさないことを確実にすること。

 a) 外注する仕事を自社の管理下に確実におく。
 b) 協力会社の施工方法及び施工物の管理方法を決める。
 c) 次の事項を考慮に入れる。
  1) 協力会社が、施工能力をもっているか、法令・規制を順守できるか、潜在的な影響まで含めて検討する
  2) 協力会社の施工力や管理力の有効性を評価する
d) 顧客に対して一貫して適合する施工物を引渡すため、協力会社から提供される材料、機械、労務、技術などの検証又はその他の活動(受入検査、段階確認・検査など)を定め、実施すること。

8.4.3 外部提供者に対する情報(発注)
 
 協力会社に伝達する前に、要求事項が妥当であることを確実にすること。

 次の事項に関する要求事項を協力会社に伝達すること。
 a) 工事の内容・範囲、工期・納期、金額等
 b) 次の事項の承認
  1) 施工物
  2) 施工方法、使用材料、設備
  3) 検査及び引渡し
 c) 作業員の力量
 d) 自社の管理方法と相まってうまく管理しているか
 e) 指定した納期・工期を守っているか、仕様・規格を満たしているか
 f) 工場検査がある場合、その検証方法

<解 説>

・原文は「外部から提供されるプロセス、製品及びサービスの管理」と、購買という言葉がなくなり、建設業にはわかりにくい表現になりました。

・要求事項そのものは変わっていないので、旧要求事項の内容をそのまま使用した方が理解しやすい。

・問題は、ほとんどすべての会社で「業者評価表」などのISO導入以前には使用していない帳票を作成していること。例えば、新規業者を採用するとき、資格要件や取引条件の確認、必要により面談や信用調査を行っているはずです。それをそのまま記述知ればいいのです。

・また、既存の業者評価も毎年1回全業者を評価したり、使用した業者のランクをつけたりしている会社も多くありますが、「管理の方式と程度」がそこまで要求されているわけではありません。実際は、問題があった業者をどうするか検討されているケースがほとんどだと思います。

・発注においても、自社の発注方式を記述すればいいものです。本社経由の発注、現場からの発注など、発注のルールを明確にするいい機会です。


<規格要求事項>

8.5施 工

8.5.1 施工管理

 施工を計画し管理すること。

 管理の内容は、次のうち該当するものは必ず実施すること。

 a) 次の事項を含めた文書または情報を利用する。
  1) 施工及びサービス、または実施する活動内容
  2) 達成すべき結果
 b) 検査のために必要な資源を使用する。
 c) 管理基準、合否判定基準を検証するための段階確認や検査を実施する。
 d) 施工やサービスに必要な設備や機材、環境を使用する。
 e) 必要な適格性や力量を備えた人々を任命する。
 f) 施工が、それ以降の監視または測定で検証することが不可能な場合、計画した結果を達成する能力の妥当性確認を行い、定期的に妥当性を確認する。
 g) ヒューマンエラーを防止するための処置を実施する。
 h) 納期管理、引渡し及び引渡し後の活動を契約どおりに実施する。

<解 説>

・施工管理の要求事項は極めて常識的な内容にとどまっています。これは、業種や規模が異なるため、基本的な内容でしか記述できないためです。

・自社の施工管理のレベルを上げるために「施工計画」作成、「施工管理」手順を充実させる必要があるわけです。

・旧規格7.5.2施工プロセスの妥当性確認は、f)に記述されています。建設業では、資格者が、決められた手順で施工し、適切な段階確認や検査が実施されていれば、いわゆる特殊工程には当たらないといえます。

8.5.2 識別及び工事履歴(トレーサビリティ)

 必要な場合には、資材の受け入れから、施工、引渡しまでの全工程において適切な手段で工程や施工物を識別すること。必要な工事記録を保持しておくこと。

8.5.3 顧客の所有物

 顧客または協力会社、仕入先の所有物(以下、顧客の所有物という)は責任を持って管理すること。
 
 顧客の所有物の識別、受け入れ時の検証と保護を実施すること。   

 顧客の所有物を紛失したり、損傷した場合には顧客に報告し、その内容を記録すること。

注記 顧客の所有物には、材料、部品、道具、設備、顧客の構内、知的財産、個人情報などを含む。

8.5.4 保存

 資材の受け入れから施工物の施工、引渡しまでの間、必要な取扱い、保管、養生、保護を行うこと。

注記 この保存には、識別、取扱い、包装、保管、伝送又は輸送、及び保護を含む。

<解 説>

・8.5.2〜8.5.4は簡略化されました。常識的な対応がされていれば問題ありません。

・8.5.2工事履歴では、「工事記録」があれば、特別な記録は必要ありません。
顧客所有物預かり書、不適合報告書なども要求されているわけではありません。

もし、問題があれば記録は求められていますから、「工事日報」や「打合せ記録」など、従来からある帳票で対応すればよいわけです。

8.5.5 引渡し後の活動

 該当する場合、引渡し後活動(アフターメンテナンスやクレーム対応など)は責任をもって実施すること。

 引渡し後の活動の内容を決定する際に、次の事項を考慮すること。
 a) 関連法規、規制などへの対応
 b) 発生する可能性のある不良、不具合、故障などの想定
 c) 保証期間や修理対応期間
 d) 顧客の要求
 e) 顧客からの問い合わせや苦情への対応

注記 引渡し後の活動には、例えば、保証、メンテナンスサービスのような契約義務、及びリサイクル又は最終廃棄のような補助的サービスの下での活動を含む。

<解 説>

・定期点検やアフターメンテナンスの手順を記述する。
・また、苦情や要求への対応手順もここで記述することが多い。

8.5.6 変更の管理

 事故や想定外の出来事、顧客指示などによって、施工計画の変更が必要になった場合、必要な見直しや管理を行うこと。

 変更の見直しの結果、変更を正式に許可した人、及び必要な処置の記録を保持すること。

<解 説>

・契約後の変更は「8.2.4受注内容の変更」、設計変更は「8.3.5設計の変更」で対応します。この8.5.6は施工中の変更です。この時点での変更手順を記述すればよい。


<規格要求事項>

8.6検査及び引渡し

 施工物の適切さを検証するために段階確認や検査などを行うこと。段階確認及び検査は施工計画に従って、施工の適切な段階で実施すること。

 施工計画で決めたことが問題なく完了するまでは、引渡しを行わないこと。ただし、引渡しの責任者が承認し、顧客が承認した時は、例外とすることがある。

 段階確認・検査及び引渡しの記録を保持すること。これには次の事項を含むこと。

 a) 合否判定基準への適合の証拠
 b) 検査者の名前、引渡しを許可した人

<解 説>

・旧「8.2.4製品の監視及び測定」が「8.6製品のリリース」となりました。建設業では、検査及び引渡しのことです。

・公共工事は、施工計画通りに段階確認や検査が実施されていれば問題ありません。

・民間工事では、事前に検査項目と判定基準を決めておくことが重要です。

・重要なことは、検査の指摘事項は手直しすればいいのではなく、ISOでは「不適合」として記録を求められていることです。

現実は、検査に合格してよしとしている会社も多いと思います。

・ある会社では、「ヒヤリハット」と同じ考えで、現場パトロールや検査で発見された「指摘事項」のデータを収集・分析し、改善につなげています。


<規格要求事項>

8.7不良品、不具合の管理(不適合品の管理)

 不適合(不良品や不具合)な材料を間違って使用したり、引渡しすることを防ぐため、それらを識別し、管理することを確実にすること。

 不適合の性質、施工物及びサービスに与える影響の度合いに応じて、適切な是正処置をとらなければならない。これは、引渡し後に発生した瑕疵にも適用される。
 
 該当する場合、組織は、次の一つ以上の方法で、不適合を処理すること。
 a) 修正
 b) 分別、散逸防止、返還又は廃棄
 c) 顧客への通知
 d) 特別採用による受入の正式な許可の取得

 修正を施した場合には、適合を再検証すること。
 次の事項を含んだ記録を保持すること。
 a) 不適合の内容
 b) とった処置
 c) 取得した特別採用の内容
 d) 不適合の処置に対する決定権者の特定

<解 説>

・公共工事中心の会社では、「不適合」はないという会社も多いでしょう。したがって、「是正処置」もありません。

・本当に不適合はないのでしょうか?前述の現場パトロールや検査の指摘事項のように、改善につながる不適合データは実はたくさんあるのです。

・また、6.2品質目標の項で述べたように、安全、品質、原価、工期、環境対策は関連しています。例えば、原価管理が苦手な社員が安全管理が素晴しいとうことは考えられませんし、逆に安全管理がしっかりしている人は、原価管理も工程管理もしっかりしているのです。安全、品質、原価、工期、環境対策すべての視点で問題を洗い出し、改善することに限界はありません。

・不適合のデータをどう表面化して改善につなげるかが、企業の体質であり、実力なのです。


<規格要求事項>

9.評 価

9.1監視、測定、分析及び評価

9.1.1 一般

 次の事項を決定すること。
 a) 必要とされる監視及び測定の対象
 b) 妥当な結果を確実にするための、監視、測定、分析及び評価の方法
 c) 監視及び測定の実施時期
 d) 監視及び測定の結果の、分析及び評価の時期

 上記内容の結果及び品質活動の有効性を評価すること。
 この結果の証拠として、記録を保持すること。

<解 説>

・ISO9001:2008「8.1 一般」「8.2.3 プロセスの監視及び測定」に該当します。
・a)〜d)で、方法や実施時期といった手順レベルまで踏み込んだ内容になりました。

・例えば、
@ 目標達成度(受注残、受注、完工、粗利益など)は四半期に一度確認
A 指摘事項は毎月集計
B 顧客情報(アンケートまたは聞取り)は半期に一度集計
C 施工情報(安全、原価、工期、環境対策)は毎月工程会議で確認
D 定期点検実施状況の確認など
重要な指標を会議で検討することです。

これらのことは、従来から何らかの形で実施されていますよね?
そうです、ISOだからといて特別なことをする必要はないのです。

・内部監査もマネジメントレビューも現場パトロールや会議などの日常業務に組込めばいいのです。

9.1.2 顧客満足

 顧客のニーズ及び期待が満たされているか、顧客がどのように受けとめているかを監視すること。この情報の入手及び使用の方法を決定すること。

注記 顧客の考え方に関する情報には、顧客満足度調査又は意見調査、提供した施工物又はサービスの品質に関する顧客からのデータ、市場シェアの分析、顧客からの賛辞、顧客による検査の指摘事項、クレーム情報などがある。

<解 説>

・工事評価点がある工事ではそのデータ、評価点がない工事では検査の指摘事項や聞取り内容などです。

・民間工事では、顧客アンケート調査などの方法もあります。

・市場シェアや顧客からのお褒めの言葉、また、クレーム情報も顧客情報です。

9.1.3 分析及び評価

 監視、測定及びその他の情報源からの適切なデータ及び情報を分析し、評価すること。

 分析の結果は、次の事項を評価するために用いる。
 
 a) 施工物及びサービスの品質向上。
 b) 顧客満足の向上。
 c) 品質活動の有効性向上。
 d) 経営計画が順調に実施されていることを実証する。
 e) リスク及び機会への取り組みの有効性
 f) 協力会社を評価する。
 g) 品質活動の仕組みを改善する。

注記 データを分析する方法には、統計的手法が含まれる。

<解 説>

・○○のデータを分析する。→上記の7つの目的のために必要なデータを収集し、分析すること。と変更されました。


<規格要求事項>

9.2内部監査

9.2.1 目的

 次の目的のために、あらかじめ定めた間隔で内部監査を実施すること。
 a) 次の事項に適合している。
  1) 品質活動において、組織自体が決めたこと
  2) ISO9001の規格内容
 b) 品質活動が有効に実施され、維持されている。

9.2.2 実施事項

 次に示すことを行うこと。

 a) 内部監査の頻度、方法、責任及び全体計画、監査内容の計画、実施、報告。
監査内容は、品質目標、仕事内容の重要性、顧客からの情報、組織に影響を及ぼす変更、及び前回までの監査の結果を考慮に入れること。
 b) 各監査について、監査基準及び監査範囲を明確にする。
 c) 監査の客観性及び公平性を確保するために、監査員を選定し、監査を実施する。
 d) 監査の結果を関連する管理層に報告することを確実にする。
 e) 遅滞なく、必要な修正を行い、是正処置をとる。
 f) 監査の実施及び監査結果の記録を保持する。

注記 手引きとしてJIS Q 19011を参照。

<解 説>

・品質目標、顧客からの情報、組織に影響を及ぼす変更が追加され、これらを踏まえた監査内容を要求しています。しかし、重要な仕事や問題が多い部門はシッカリ監査し、品質に影響の少ない仕事やよくやっている部門の監査はそれなりでよいという従来からの方針は大きく変わっていません。

・建設業では、なんといっても現場が重要です。安全、品質、原価、工期、環境対策で決めたことが適切に実施されているか? 現場での監査がすべてといっても過言ではありません。現場パトロールで、上記の項目をチェックシートにして、内部監査としている会社もあります。

・もちろん、年1回実施していれば最低条件は満たしています。

・また、すべての項目を監査する必要はありません。最低年1回はすべての項目の監査をしなければならない、などとはどこにも書いてありません。

・よく、「経営者の監査がされていませんね」などという審査員がいますが、経営者は内部監査の依頼人です。それにしても経営者の何の監査をしろというのでしょうか?「品質方針を作成していますか?」「役割、責任及び権限は明確ですか?」「マネジメントレビューを実施していますか?」とでも確認するのでしょうか?
マネジメントレビューの有効性を評価できるのなら価値がありますが、、、。


・内部監査のポイントは次の通りです。

(1) 目標が計画通り実施されているか
(2) 計画通り実施されていないとすれば何が問題か
 ・計画が具体的ではないのか(6.2目標及び達成計画の問題)
 ・力量に問題があるのか(7.2力量の問題)
 ・他に問題があるのか(なぜなぜなぜ→真因をつかむ)
(3) 問題点の指摘(真因)
(4) 対策の立案(修正処置、是正処置)
(5) 追跡監査(有効性の確認)


<規格要求事項>

9.3経営者による見直し(マネジメントレビュー)

9.3.1一般

 社長は、組織の品質活動が、引き続き、適切、妥当かつ有効であることを確実にするために、あらかじめ定めた間隔で、経営者による見直しを実施すること。

9.3.2検討事項

 経営者による見直しは、次の事項を考慮して計画し、実施すること。

 a) 前回までの決定事項の実施状況
 b) 戦略や品質活動に関連する外部及び内部の課題の変化
 c) 次に示す品質活動の仕組みの成果及び有効性、並びに傾向
  1) 顧客満足及び密接な利害関係者からの情報
  2) 品質目標の達成度
  3) 仕事全体の成果、並びに施工及びサービスの適合性
  4) 不適合及び是正処置
  5) 監視及び測定の結果
  6) 内部監査、外部審査の結果
  7) 協力会社の評価
 d) 資源の妥当性
 e) リスク及び機会への取組みの有効性(6.1参照)
 f) 改善の機会が適切かどうか

9.3.3 決定及び処置

 経営者による見直しでの決定及び指示事項には、次の内容及び処置を含めること。
 a) 改善の機会が適切かどうかの決定。
 b) 品質活動のあらゆる変更の必要性。
 c) 資源の必要性。

 経営者による見直しの結果を記録し保持すること。

<解 説>

・経営者の役割は、方針、目的を設定し、実施のための支援を行い、実施結果を確認し、必要に応じた処置の指示を出すことです。

・この「9.3経営者による見直し(マネジメントレビュー)」は、実施結果の確認に相当します。ここでは、経営者自身による、品質活動の仕組みの全体的な確認が要求されています。

・新規格では、検討項目に「4.1 組織及びその状況の理解」「6.1 リスク及び機会への取組み」「9.1 監視、測定、分析及び評価」に関連した項目が追加されました。決定、指示事項の項目も、より経営的な視点からの意思決定が求められています。

・具体的に解説すると、先ず検討項目では、

a) 前回までの決定事項の実施状況
 ・前回議事録の確認のことです。通常の会議でも、決めっぱなし、やりっぱなしを、なくすために、会議で決めたことが実施されているかを確認していると思います。

b) 戦略や品質活動に関連する外部及び内部の課題の変化
 ・「4.1組織及びその状況理解」で検討した内容に変化がないかを確認することです。組織の戦略上、影響を与えることがないかどうかを検討します。

c) 次に示す品質活動の仕組みの成果及び有効性、並びに傾向

1) 顧客満足及び密接な利害関係者からの情報
 ・「9.1.2顧客満足」で把握した、工事評価点、顧客調査結果、賞賛や苦情などの情報のことです。データを分析してまとめてあればわかりやすいでしょう。

2) 品質目標の達成度
 ・これは説明の必要はないと思います。「9.1監視、測定、分析及び評価」で評価されていれば、その結果報告だけでも結構です。

3) 仕事の成果、並びに施工及びサービスの適合性
 ・原文は、プロセスのパフォーマンス、並びに製品及びサービスの適合性です。

  プロセスのパフォーマンスとは、受注、設計、購買、施工などの仕事全体が成  果を上げているか。施工物及びサービスの適合性とは、施工過程や定期点検な  どが計画通り実施されているか、ということです。

 ・これまで述べてきた、施工過程や検査の指摘事項をどう扱うかという問題です。

4) 不適合及び是正処置
 ・「10.2不適合及び是正処置」参照
 ・同じような指摘事項が何回か発生した、あるいは大きな問題が発生した時は、再発防止のための是正処置を実施します。その結果報告です。

5) 監視及び測定の結果
 ・「9.1監視、測定、分析及び評価」で実施したことの結果確認のことです。

6) 内部監査、外部審査の結果
 ・「9.2内部監査」及び外部審査で指摘されたことの結果確認です。

7) 協力会社の評価
 ・「8.4購買」で決めた、協力会社の評価結果の確認です。

d) 資源の妥当性
 ・「7.1資源」「7.2力量」に問題はないかということです。人材採用や能力向上の必要性、設備の更新や新規導入などの検討がこれに該当します。

e) リスク及び機会への取組みの有効性(6.1参照)
 ・「6.1リスク及び機会への取組み」で決めたリスクの低減や除去、機会への参入状況はどうかなどです。

f) 改善の機会が適切かどうか
 ・上記の結果を踏まえて、「9.1監視、測定、分析及び評価」の項目や回数、「9.2内部監査」の回数、「9.3経営者による見直し」の回数などは適切かどうか、ということ。

・決定及び処置では、

a) 改善の機会が適切かどうかの決定。
 ・検討項目f)で述べたことを検討し、見直し結果を決定します。もちろん、問題なければ、現状のままでも結構です。

b) 品質活動のあらゆる変更の必要性
 ・品質目標及び達成のための計画、組織体制、マニュアルなどの内容変更、設計や仕様、施工方法の改善などがこれに該当します。

c) 資源の必要性。
 ・検討項目で検討した、d)資源の妥当性の結果を記録します。

 以上の内容をみれば、経営にとって当たり前のことを要求しているわけです。これらのことは、経営会議や幹部会議などで検討されている会社も多いことでしょう。

 マネジメントレビューという特別なことをしなくても、経営者が参加される日常の会議の中で、各項目を検討すればいいのです。

 それも、毎月すべての項目を検討する必要はありません。例えば、「施工上の指摘事項やクレーム情報は毎月集約して報告する」。「目標の達成度は四半期に一度確認する」。「半期に一度、外部及び内部の課題の変化を確認する」。などと決めておけばいいのです。


<規格要求事項>

10 改 善

10.1 一般

 顧客要求事項を満たし、顧客満足を向上させるために、改善のために何を、いつ、どのように実施するかを決定し、必要な処置をとること。
 
 これには、次の事項を含めること。
 a) 要求事項を満たすため、並びに将来のニーズや期待に取組むための、施工物及びサービス内容の改善
 b) 望ましくない影響の修正、防止または低減
 c) 品質活動の結果及び有効性の改善

注記  改善には、例えば、修正、是正処置、継続的改善、現状を打破する変更、革新及び組織再編などがある。

<解 説>

・改善のために新たに実施することがあれば、その内容と方法を決めなさいといっていますが、この品質活動の仕組み全体、更には日常の会議や内部監査などを確実に行うことが先決でしょう。


<規格要求事項>

10.2不適合及び是正処置

10.2.1 不適合が発生した場合、次の事項を行うこと。

 a) その不適合に対処し、該当する場合には、必ず、次の事項を行う。
  1) その不適合を管理し、修正するための処置をとる。
  2) その不適合によって起こった結果に対処する。
 b) その不適合が再発又は他のところで発生しないようにするため、次の事項によって、その不適合の原因を除去するための処置をとる必要性を評価する。
  1) その不適合を見直し、分析する。
  2) その不適合の原因を明確にする。
  3) 類似の不適合の有無、又はそれが発生する可能性を明確にする。
 c) 必要な処置を実施する。
 d) とった全ての是正処置の有効性を確認する。
 e) 必要な場合には、計画の策定段階で決定したリスク及び機会を更新する。
 f) 必要な場合には、品質活動そのものの変更を行う。

 是正処置は、検出された不適合のもつ影響に応じたものであること。

注記1 場合によって、不適合の原因を除去するのが不可能なことがある。
注記2 是正処置は、再発の可能性を許容できる基準まで軽減することができる。

10.2.2 次に示す事項の証拠として、記録を保持すること。

 a) 不適合の性質及びとった処置
 b) 是正処置の結果

<解 説>

・不適合とは、「8.7不良品、不具合の管理」で述べたように、現場パトロールや検査の指摘事項、クレーム、手戻り、工期遅れ、事故、仕事の仕組みの不具合など、実は意外とあります。

 それを隠すか、できるだけ出して改善につなげるかは会社の社風や体質の問題であり、大きな差があります。

・予防処置という言葉がなくなりました。これは、ISOの仕組み自体が予防処置という考え方になっこと。

 さらには、是正処置の中に予防処置の考えが取り入れられたことです。例えば、b)・・・他のところで発生しないようにするため、3)類似の不適合の有無、又はそれが発生する可能性を明確にする。という文言が追加されました。

・必要な場合には、計画の策定段階で決定したリスク及び機会を更新する。品質活動そのものの変更を行う。ことも追加されました。

・いずれにしても、予防処置をしっかり行い、万が一問題が発生した時は、再発防止のための是正処置をとることは、ISOに限ったことではないですね。


<規格要求事項>

10.3継続的改善

 品質活動の適切性、妥当性及び有効性を継続的に改善すること。

 継続的改善の一環として取り組まなければならない必要性又は機会があるかどうかを明確にするために、分析及び評価の結果並びに「9.3経営者による見直し」の決定内容を検討すること。

<解 説>

・継続的改善とは、段階的でもよいから年々改善が実施されていることをいいます。常に右肩上がりの「連続的改善」である必要はありません。ISOの仕組みをうまく使って経営改善に役立て、社員も顧客も会社も幸福になれることを願っております。                                 


2017.03.15:反田快舟

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