第七話「保険を考える時代」

 新緑の季節は、「あっ・・」と過ぎ去り、なんとなく、じめじめする季節になりました。
 このところ雨の日が多いので、外仕事が雨降りで休みの日は、パソコンで新しいデザインの墓石の設計や、こうした屋内でできる仕事をしています。またこのところは、仕事の合間に保険屋さんに来ていただいて、私達夫婦の『保険』の見直しもしています。
 私どもの三番目の息子も、今年の8月に成人します。あと二・三年で独立する事になるでしょう。子供達三人が家を出て、夫婦二人の生活に戻るのも、もうすぐだと思います。そうなると「今の保険では死亡保険金が多すぎる、これからは、入院時に出る金額が・・」等々、現在加入の保険契約内容では、現状に合わなくなるだろうと思われる点が多くなってきましたので、この際なので夫婦二人とも全面的に『保険』を見直すことにしました。
 ところで、多くの人は、若い頃に友人や親戚に進められ『仕方なし』に入った保険をそのまま満期になるまで置いておくといった事が、多々有るのではないでしょうか。また、そこまででは無くとも、あまり深く考えず「保険には一応入っていた方が良いのかな?」くらいの気持ちで軽く契約した保険を、契約した時のままにしているのではありませんか。
 まあ、その時の保険屋さんにしてみれば、出来るだけ効率の良い条件で(お客さんに対して?)契約するかが第一条件だったと思いますし、また、保険料を支払う我々にしてみれば、支払いの長き年月を考えながらも、自分に何か有った時に、家族が受け取る事の出来るだろう『お金』や、将来元気に迎える事が出来た満期時に、果たして幾らに成るのかが、契約する時の最大の関心事だったと思います。
 保険屋さんは、契約と言う『入り口』。私達は、お金の受け取りと言う『出口』が目的なのです。しかしこの『入り口』から『出口』までの、それはもう長いこと、長いこと、山あり谷ありの人生で、満期日に近づく頃は、どの様な内容の保険を掛けていたかなんか、すっかり忘れてしまいそうです。
 また、私達が一生懸命、『入り口から出口』に向かって歩いている内に、誰にお願いした訳でも無いのに、生活環境、家族構成、自分自身の健康状態、配偶者の健康状態、そして医療水準の向上と、すべてが『入り口』で考えていた内容とは、少なからず変化して行きます。当然『保険』の内容も、それに合わせて方向修正しなければならないのですが、その事については、自分から誰かに訊きに行かなくては、誰も適切なアドバイスはしてくれません。
 『保険』でも『遺言』でも、自分や自分の家族のことを考えて進めなければなりませんが、自分一人では、どの様にしたら良いか、判ら無い事が多々あります。「どうにかしなければ」と、何だかんだと考えているうちに、何か億劫になって来て、何もせずそのままにしてしまう、保険屋さんとのやりとりが煩わしいので、簡単に済ませてしまう等々・・結局はまともな物に成らないのです。
ですから詰る所、その道の専門家にきちんと見て貰うのが一番のようです。
でも、『専門家』って誰?
 この文章を書きながら、私自身も詰まってしまいました。
 そこで、よく考えてみると、今の日本には、色々な職種に関した資格試験が有りますから、その職種に関する資格を有する人が一番の適任なのでしょう。
 確かに、弁護士や医者・公認会計士などのように国家試験に基づいた資格による専門家が一番信頼できるのでしょうし、またその他には、民間の組織が公認する資格もあります。
 ファイナンシャルプランナーなどの有資格者が、保険関係では良きアドバイザーになってくれるのかもしれません。(肩書きが無くても一生懸命相談に乗ってくれる保険屋さんも居ますが)
そう言えば、石材業界にも『△は□ディレクター』と言う資格があります。石種や お墓の形式・組み立て方、基本的な石材の使い方などを、実技無しの、ペーパー試験のみで(参考書持込で)理解したことを確認する、資格試験です。試験に合格すると『お○□ディレクター2級』に認められます。稀に、資格も無く、試験を受けた事が無くても、名刺に『△○かディレクター2級』と明記している兵も居ますから、実に困ったものです。
 話を戻しますが、要は「よく判らないから」と、親戚・友人・知りあいに、何かと相談するのも方法の一つかですが、出来れば必要とする分野の専門家と、日頃から知り合っておく事と、切羽詰ってから慌てる事の無い様、前もって準備しておくことの、二つのことが大切なのです。
 例えば、自分の親の『葬儀』を依頼した業者に、『仏壇』や『墓』まで頼む人がいます、「セット料金でお安くしますよ」などと言う甘い言葉に誘われてね。
 でもそれが本当かどうか、お互いが指定しあった業者間では、少なからずのお金が、私たちの見えないところで、右から左、左から右へと歩いているのかも!
 まあ、お金のことを「おあし」とも言いますから、ふらふら歩いていても不思議じゃないですけどね!
2009.06.15:米田 公男:[仙台発・大人の情報誌「りらく」]