イタヤカエデ材の仕入れ

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米沢市の南部、まだ春遅い残雪に埋もれた綱木集落のこけし工房に訪れた。

工房の主は山形県こけし会会長 田中惠治三さんである。


綱木ダムから、さらに上った山深い集落である。

何十年も前に知人が分校の教師を務めていた時に訪れて以来である。

綱木集落には獅子踊りが伝えられ、米沢では梓山と綱木だけになっている。

宿場町として栄えた綱木集落には、関東文挟流の三匹獅子踊りが400年前から伝えられているが古い

文献は火災にて消失し不詳だという。現在も地域数軒、その他地区外の保存会会員によって8月15日

に獅子踊りが奉納されている。




先日、林業の知人より紹介で、ベテランこけし作り職人の田中さんと連絡が取れた。

田中さんの使用するコケシの材料は主に堅木のイタヤカエデ、ミズキも使うコケシ作家も居るという。

獅子彫り工房から綱木の田中さんの工房までは車で一時間、結構な距離である。

集落に入り徐行しながら進むと、人影が見え声を掛けると田中さん本人だった。

集落には雪に潰された廃墟化した空家が目立ち、人が住んでいるかどうか判断が容易である。

家は人が居なくなると、手の裏を化す様に表情を変える。



染料の色はスカーレット、黄色、青、黒


工房内は、様々な材料の角材が積まれ大きなストーブを中心として、コケシ用のロクロが二台、製材機

集塵機が所狭しと置かれ、雑然ながら活き活きとしていた。我が工房と同じだ。

その中に、山形県神社庁発行の「令和二年家庭本暦」の表紙に、見覚えの有る鮎貝八幡の獅子頭の写真

が目に入った。私の獅子レーダーの精度は、まだ健在である。


昨日、綱木の獅子踊りのネット検索した写真に田中さんが太鼓を打つ映像を見つけていた。

現在は膝を痛めリタイヤしているという。


目に入った、道具についてアレコレ質問するが、田中さんは優しく答えてくれ、小さな丸棒を固定し

ロクロで削って、着色の実演まで見せてくれた。コケシの着色は染料で、その材料も同業者が減り入

手も困難になっている。

コロナ感染が始まって以来、受注量が激減し米沢では田中さん意外、コケシ職人の後継者も無く廃絶の

危機だという。

私の獅子彫りも同様にこれから日本の伝統的な工芸は、多くはその技術と共に廃絶するだろう。

ただし、わずかな希望だけは持ち続け、ヒントとなるものは残したい。




獅子頭の軸の材料となる、イタヤカエデの大小20本の角材を譲っていただき綱木集落を後にした。

コケシ工房から少し上ると山神神社があり、立ち止まって眺めると拝殿の龍が目に入った。



まだ山道は雪深く、長靴出ないと参拝に行けそうも無い・・・。



早速、明日は仕入れたその材料で軸棒を試作してみよう。





2022.04.04:shishi9:[コンテンツ]

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