獅子頭の新調の際、同時に獅子頭を保管する木箱を作る神社がある。
それが代々、伝統として残り奉納する人の意識によって変化している。
獅子箱の
総宮神社の獅子箱
裏の蓋部分には記名が書かれている
また獅子頭の保管は、伝統的なスタイルの箱とは限らず、代用品とし
て茶箱が用いられたり、その神社独特の箱だったりする。大きさにより
獅子幕を下に敷き一緒に保管する場合もある。最近、獅子幕はほとんど
の神社がドライクリーニング業社に依頼し、川で幕洗いをする伝統も少
なく水質汚染の影響を受けている。洗った幕の乾燥のため、神社や消防
ポンプ小屋の旗竿で干す風景も見られなくなっている。
茶箱を利用した獅子箱 湿気防止に効果的
平山北向見渡神社の獅子頭と獅子箱 作者が同じなのか上の総宮神社の箱と酷似している
総宮神社などの獅子箱に見られる特徴として、獅子頭のサイズに合わせて
作られ、前面に窓があり、角材で斜めにバッテン状に作られ内側には亀甲の
金網が取り付けられている。獅子頭を魂の入った生き物として考えられ、密
閉することを避けた考え方で作られているのが面白い。
獅子頭が夜な夜な騒いで悪さをしたという物語も存在している程、超自然的な
生き物としての取り扱いである。
新調したての獅子頭は関係者によって神主から入魂してもらう。
修理や新調の為の事情で、地区から離れる場合は魂を抜いて移動する事もあっ
た。某神社では現在でも、獅子頭新調の為の事情でも、獅子頭を貸し出しはし
はしないとする考え方もある。彫り師としては、手本の獅子頭を忠実に写しと
る為に貸し受け、精密に採寸して制作に向かいたいところであるが・・・。
さて、伝統的な獅子箱の仕様、作り方について見てみると箪笥の差物大工に
よる仕様が見て取れる。地場の杉材を使い、一枚板または二三枚を張り合わせ
角には置賜箪笥同様の補強金具や取手が取り付けられている物もある。仕上げ
は透明な飴色の漆で塗り仕上げされている。記名は奉納された年代、当時の神
社総代や奉納者の名前が達筆で書き残されている。その書き残した筆跡も味が
あり、難読文字や略字などを解読するのも楽しい物である。以前川西町玉庭酒
町は黒神社の獅子箱の文字が、米沢藩の古文書筆跡と一致することを発見し、
一人大喜びした事がある。
獅子の入った獅子箱は、例祭になると保管場所から出し神社神殿前や拝殿に
安置され、古い獅子幕を敷き、その上に獅子頭が飾り付けられる。
獅子箱は道具に徹し注目され事は無いが、時代を経た様々な情報が折り込ま
れている。機会があれば注視して観てもらいたい獅子舞文化の興味深いアイ
テムの一つである。
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