宮内の小獅子
訳あって小振りの二頭が訪れた。 熊吉氏の作 どちらも宮内の熊野大社型の獅子頭を模した型である。大きい方は、何度も取り上げている宮内の菊人形師の菊 池熊吉氏の獅子頭に間違いない。幕付きの小さい獅子頭は熊野大社の例大祭で用いられる本獅子型の獅子頭で、 大正四年と持ち主の姓が小さく記されていた。小さい獅子の塗りは、金箔を貼った下地に黒をブツブツを残し塗 った梨地塗りである。 梨地塗り 脳天には薄く鏡を表す輪が描かれている。眉毛の繊細な赤い線、唇の縁に毛穴を塗り潰した様な跡まで表している 実に凝った作りである。また二頭共に耳の後ろの木口の縁に和紙で作ったタテガミを表すシデが残されている。 本獅子型の獅子には、本獅子に取り付ける市松模様に似た獅子幕が頑丈に取り付けられ、いかにも小さな子供が遊 べる様な獅子頭だった。記名に大正四年とあり作者は限定できないが、小関庄左衛門の晩年の作かとも推測できる。 耳の塗りが新しく欠損した後、新しく作られたかもしれない。熊野大社の七夕獅子頭展で展示された獅子の中に同 じ作風の耳がある。 見比べて、あーだこーだと一喜一憂するのも楽し・・である。
2020.08.23