渡部 亨氏作の獅子頭

  • 渡部 亨氏作の獅子頭
獅子頭のタテガミ交換の依頼があり獅子頭が訪れた。
8月に入り連日の猛暑で今日は最高気温37℃と熱中症の警報も出ている。


熱海氏の記名は独特で職人技

記名を見ると昭和55年(1980)と40年前に制作された獅子頭で作者は渡部 亨氏、塗りは
幸町の熱海 長吉氏の作である。以前獅子頭展を開催した際にお借りし展示した獅子頭である
事を思い出した。








所有者のF氏は40年以上前、飯豊町中津川小屋の民宿に訪れた際、近くの渡部氏宅に立ち寄り
この獅子頭木地と出会ったそうだ。当時、渡部氏のお宅は獅子宿の様な古民家で、囲炉裏のあ
る茶の間に複数獅子頭が並んでいた。とっておきの総宮系の獅子頭があると、奥さんが蔵から
持ってきてくれたのが、この獅子頭だった。F氏は、その獅子を大変気に入ったが、この獅子は
譲れないが、1週間貸し出すから知り合いにも見てもらって良いと渡部氏が提案されたという。
F氏はその獅子を自宅に持ち帰り、その獅子頭をどうしても欲しいという決意を固めた。 
期限通り返却に渡部氏宅に訪れたF氏は、どうしてもこの獅子頭が気に入ったので譲ってくれと
懇願した結果、ようやく渡部氏が折れた。そして塗りは熱海氏に依頼する事を条件に了解を得た
という。



タテガミは40年経過し色も褪せ、頬の毛は欠損しているが、塗りや金箔の状態はすこぶる良好で
ある。一時期、地域の子供会の獅子舞で貸し出ししたが、大事に管理されたと獅子頭が物語って
いる。正面から見ると左目が右目より飛び出していて、総宮系の特徴を彫り込んでいる。塗りも
本漆特有の艶を発し埃や刷毛痕、金箔も継ぎ痕一つ無い極上の塗りである。
F氏は本町にあった喜美屋で42才の厄落としの宴会で、獅子頭完成のお披露目を兼ねて、この獅子
を出し大いに盛り上がったという。

良い獅子頭は依頼主、彫り師、塗師の三位一体の情熱で産まれる。
2020.08.20:shishi8:[コンテンツ]

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