全麻の獅子幕の修理を行っている。
薄い麻は透過性があり軽くて良いのだが、耐久性やコストは綿生地より劣る。
前幕のみに使用し本体は綿するのがほとんどである。強く幕を引っ張る獅子舞では幕を握った部分の繊維
の折り目が伸びてちぎれたり穴が開いて、修理をせずに使用すると大きく裂けてくるのだ。この幕の修理
は、無数の穴やカギサキを修理する依頼である。修理後、必ず再び再発するのでロープを縫い込み、裾に
綿生地を取り付けて補強することにした。獅子頭の取り付け口も大きく破損し、作り直しである。その部
分にボタン穴かがりの様な九つの穴があり、そこにロープを通すのだそうだが今一つ理解出来ない。ロー
プは既に端に縫い込んであり、通常そこに穴を開け獅子頭に取り付ける方法が一般的なのだが・・・。
依頼者も獅子の取り付けには立ち会っていないため、一抹の不安がよぎる。
ここ数年、中古で求めた工業用ミシンを使って縫製している・・だましだまし使っていたが、不具合が多
発しミシン修理のプロに往診してもらった。
かなり使用頻度が高く、縫製工場などで使用されたもので製造されてから30年経ち、かなり改造して用い
られたミシンだという。心臓部回路も既に老朽化し、時々不整脈で不意に起動しない事も起きている。
破れた部分に布を裏打ち接着し縫製
一番困るのは自動糸切りが完全に切れず、糸が裂けた様になってしまう事である。
先ず下糸を動かす部分の釜がガタガタにぶれて糸切りの歯には大きな傷が刻まれていた。
厚い麻や綿生地を折り返して縫う際に、折れた針が当たって傷ついていたのだろう。糸の老朽化でも不具合
が起きる事があるそうである。
ミシン本体を倒すと下部に、ミシンオイルが溜まっていて、自動的にオイルが循環しミシンの稼働を円滑に
する構造になっている。そのオイルも糸屑が混ざり、黄変していたので抜き取って新品に交換。
針を固定するビスも片減りして交換。布抑え部や押さえ部分のバネなどこの際とばかり様々交換してもらっ
た。時限爆弾的な心臓部の回路はいつまで持つか不詳だが、しばらくは大丈夫だろう。お陰で、ちょっとし
た安堵度ともに新しい年を迎える事が出来た。人生はこんな小さな難局と解決の繰り返しであるな・・等と
思う年越しだった。
新しい年2020年、今年夏は東京オリンピックも開催される。18日には上京し上野で「東京シシマイコレク
ション 2020フォーラム」に参加し長井の獅子舞や獅子頭を紹介する予定である。故郷の獅子舞文化を紹介
し、各地の獅子舞文化交流が出来ればと考えている。