予定通り師走の後半に獅子頭が塗り上がった。
金箔に保護剤を塗布すると、キラキラした反射から落ち着いた輝きに変化している。
唇や内部の赤も、少し黄色がかって新鮮でより活き活きと見える。塗り立ての獅子は
側にいると、まだオリーブオイルの様な漆の匂いが漂ってくる。この位いだと、もう
漆負けによる、あの忌々しいかぶれを心配する事も無く触れるだろう。しかし、これ
からタテガミ植える際に、毛穴を開け直す際に出る切り屑には注意しなくてはならな
い。特に蒸し暑い夏は素肌に着いた切り屑からかぶれることがある。
今回の獅子は特に鼻を反らせている。獅子がより流線型になり邁進する獅子を感じさ
せる。下顎の唇を波立たせ、ぐっと噛み締めた表情を強調した。目を、いかめしく深
めに彫り込んだ。
これからタテガミを植える作業に入るので写真を撮った。タテガミを付けるとガラッ
と表情が変わってくるので、この作業はいつもワクワクするのだ。
タテガミはヤク毛を取り付けた。穴に納まるぐらいの束に分けて二つに折ってまとめる。
鼻髭や頬毛は頭部より短く中央で折る。木地に深さ7mm直径約6mm程の穴を80箇所開
けるが、塗りの段階で幾分痩せてしまう。
植え終わると、やはり生き物感が増して見慣れた獅子の表情に収まった。タテガミの色は
少し黄味がかった白で、栗毛や黒のタテガミでは獅子にならない。黒いタテガミであれば
地の黒と同化して目立たず違和感満載の獅子になるだろう。神社の獅子が長年、酒をかぶ
り見事に黄金色に染まり貫禄充分の獅子がある。
総宮神社の獅子頭 渋谷作