獅子頭の金箔張りは塗屋さんの分野なのだが練習してみた。
部分的な修理での金箔貼りは行ってきたが、獅子の眉毛、目、歯、コブ等になると結構な面積になる。
金箔は金を10000分の2・3ミリメートル まで薄く延ばしたもので、鼻息で吹き飛んでしまうので
息も詰まる作業である。上手く綺麗に早く作業が出来るには長い経験が必要である。金箔も高価であ
るので、もったいない精神がはたらくとチマチマ細かく切って貼ると余計に時間がかかり箔を接着す
る溶剤も乾いてしまい剥がれやすくなるので大胆さも必要だ。
塗り上った塗面にマスキングして境界を作る。マスキングテープ等ない昔はチョークの様なもので境界
線を描いて、箔下の漆を薄く塗り、頃合いをみて軽く拭き取り金箔を押したらしい。古い獅子頭の消え
掛かった金箔の部分の線が見事で、その熟練さに惚れ惚れしてしまう獅子がある。
そこまで到達する事は出来ないが、実際に金箔貼りを経験しているかどうかが大事で、仕上がりの判断
力を養うことが出来ると考える。
マスキングテープを貼るのも曲線ばかりで、時間がかかる。円を貼るには細かく切ってもテープの直線
では必ず角度が出来てしまうので、カッターで曲線を切って貼るとテープを貼る回数が激減する事に気
づく。こういう細かい工夫は、やはり経験しないと生まれないものだ。その積み重ねで仕事の効率が向
上するのだろう。
透明な箔の接着剤を筆で塗るのだが、乾くのが早く、どこまで塗ったのか分からなくなる。テープで境を
作って進める。午前中から始めて6時まで頭部が貼り終わったが経験不足は否めない。この忍耐を要する
作業は、貼り終わってマスキングテープを剥がす時に一気に報われる。
漆黒だった獅子が金箔を貼る事によって、その目鼻のフォルムが突然現れてくるクライマックスの瞬間
に立ち会うことが出来るのだ。
今日は下顎を仕上げて金箔貼りの作業が完成だ。貼りたての金箔は脆いので、しばらく放置しないと直ぐ
に擦り傷が現れる。養生時間を経て、次はタテガミを植えて完成である。タテガミを植える時に金箔を傷
つけてしまいやり直しした苦い経験がある。金箔保護剤を塗ると安心だ。
午後から顎の歯に金箔を貼り仕上がったが、ムラが出来て難有り・・保護剤を塗ると艶やテカリが消えて
均一になるだろう。歯と歯が接触しないように口の中に紙コップを重ねて浮かせている。