伊勢大神楽の獅子頭について

  • 伊勢大神楽の獅子頭について
置賜には、かつて江戸期において伊勢大神楽の獅子舞が大いに流布し、時代と共に消えていった。
置賜の各地にその片鱗が残され伊勢大神楽様式の獅子頭が確認されている。


    鮎貝八幡の雌獅子
白鷹の鮎貝八幡の獅子頭は宮城助四郎が最上川舟運の繁栄により京都から買い求め獅子舞も習い
伝えられたと言われている。先頃、その最古の一対の獅子頭の雌獅子を修復し、制作方法や素材
、修理痕、尾の存在など興味深いものが判明してきた。そして最近、興味深い獅子頭を入手した。
同型の獅子頭は以前も、オークションに出品されたが落札出来ずにいたが、再び同型の獅子頭が
出品され落札出来た。調べてみると、この獅子頭が正に現在も多数の伊勢太神楽社中で用いられ
ている獅子頭だったのだ。昨年同様に入手した伊勢太神楽系と思われる赤獅子とも類似していた。



 現在も伊勢太神楽の多くの家元で用いられている獅子頭

おそらく、伊勢付近に古くから獅子頭制作工房があり、代々伊勢大神楽の獅子頭を専門に制作し
てきた工房があるのだろう。白鷹町十王の皇大神社の明治期の獅子舞創始も名古屋から宇津権九
郎型の獅子頭を買い求めている。


 白鷹町十王 名古屋から買い求めた皇大神社の明治期の獅子頭

また江戸期、高畠の獅子彫り師 原田弥市も伊勢に獅子彫修行に行ったという話にも繋がる。鮎貝
八幡の獅子頭も同所の工房で造られたのではないか?と推測したくなってくる。


 原田弥市の作

山形市の最上義光のお抱え神楽である㊀餌鷹神楽を元祖とし、置賜や村山の各地に多くの神楽師
が生まれ出た。昨年、上山の月岡城大神楽太夫 佐藤多美夫氏からお話を聞く機会があり、神楽で
用いられた獅子頭も拝見できた。佐藤氏からの話から文禄三年、義光公から拝領された獅子頭も
確認する事が出来た。徐々にであるが、置賜の獅子舞の歴史を垣間見る様である。


 月岡城御用大神楽で用いた佐藤多美夫氏所蔵の獅子頭

長井市は総宮神社の黒獅子舞が主流と考えられてきたが、「総宮神社略誌」に伊勢大神楽の獅子舞
も現在宮司の安部家に存在し、獅子頭も所蔵されている。


 総宮神社の伊勢大神楽の獅子頭

神仏混合と同様に出羽三山山伏系の黒獅子舞と伊勢大神楽の文化が混在し使い分けていたという事
実に驚かされる。いかに江戸期の置賜文化の豊かさと柔軟さを備えていたのか物語るものではない
だろうか。
2019.06.11:shishi7:[コンテンツ]

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