霧空が消えて気持ちのいい秋晴れの日曜日、午後から萩生の廻向山恩徳寺に訪れた。
600年前の伊達時代に城が築かれていただけに土塁や外濠があり、中世の面影を静かに残している。
恩徳寺境内に石現文殊堂があり、例祭に子供の獅子舞が7月中旬に行われている。
中断されていた獅子舞は昭和57年に再興され、その時に地元有志により神輿や獅子頭、道具類も新調された。
同所諏訪型の獅子頭の作者は中津川小屋の渡部 亨氏である。
それ以前の古い獅子頭があると言うので拝見すると、記名は無かったが鑑定すると小関久蔵の作に
思われた。昭和57年の獅子舞再興の祭りの際、その獅子頭に幕を付け山門から出る直前、獅子頭が
突然真っ二つになり応急処置で獅子頭内部にガムテープを貼って何とかその場を凌いだと言う。確
かに痛々しく獅子頭の鼻先から額にかけて割れていた。しっかり軸棒が固定されていたので最悪の
状態は免れたのだろう。破損した獅子頭は数多く見てきたが、見事に真っ二つに割れた獅子頭は見
た事がない。寺の境内から出る寸前での出来事というのもドラマチックに仕上げられた逸話である。
恩徳寺のすぐ西に諏訪神社がある。以前地元の某氏が福島から求めた額に角のある獅子頭を奉納した後、二
頭の獅子頭が盗難にあった。その奉納された獅子頭の災いの為との嫌疑がかかり獅子頭が返されてしまった。
その後その獅子頭所有者周辺に不幸が続き現在、とあるお堂に安置されているのだと言う。機会があればこの
獅子頭も拝見してみたいものだ。その他、長井市九野本の佐藤正一氏の総宮系獅子頭も奉納されている。
恩徳寺には民俗学に詳しい方には有名な絵馬「間引きの図」が奉納されている。間引きとは貧しさや諸事情
の為に産まれた赤児を殺めてしまう事で、その絵には親が獣と化し赤児に手を掛けている恐ろしい姿が描か
れている。絵馬は色褪せ退色も少なくいい状態であり、現在は文殊堂内部にあったものを本堂に移し町指定
文化財になっている。
秋の日はつるべ落とし・・薄暗くなり雨も落ちて来た。
ご住職には突然の珍客訪問にも関わらず、快くご案内いただき獅子頭を拝見させて戴いた。この場をお借り
して突然の訪問の失礼をお詫びし心より御礼申し上げたい。
私のコレクションの獅子頭と恩徳寺の獅子頭と同作者と思われるので写真で比較してみた。
私所有の獅子頭は黒漆が、かなり褐色化しているが恩徳寺の獅子は塗り替えをしたのだろう比較的黒いが
同時期の作風だ。歯の山吹色の下地も同じで、黒沢の塗師竹田儀一氏先代の塗りだろうか。
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2024.11.23 (田村桂子)獅子頭
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2023.04.08 (モリヤ)お神楽についてですが
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2023.03.22 (獅子宿店主)黒沢の住人様
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2023.03.22 (黒沢の住人)感謝
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2022.12.08 (獅子宿店主)もりや様コメントありがとうございます
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