昭和52年当時の中津川の獅子制作中の写真をトアル筋の方から送っていただいた。
飯豊町中津川小屋で獅子頭を多数制作した置賜を代表する昭和の獅子彫り師 渡部 亨氏と太田康雄氏である。
この頃お二人共に脂が乗り気切った時期で、黒獅子の他にも神楽系の獅子も制作しているようだ。
渡部氏は大正10年(1920)生まれなので当時57歳となる。
お二人の制作の様子の写真としては初めてで、大変貴重で価値のあるレアな写真であるが、文章が残っていない
のが残念な所である。
渡部氏の写真は一枚だけ所蔵しているが、太田氏については皆無だった。時代の流れは、こういった記録を押し
流してしまうのだが、ヒョッコリ浮かび上がってくるので面白い。
渡部氏は小屋地区の一番奥の家で制作し、庭に野菜を洗ったりする池(タンナゲ)があり、そこに獅子頭の材料と
なる丸太を水に浸けて準備していたようだ。今でも神社総代の方の証言に渡部氏の自宅まで訪れ、獅子頭制作の
依頼した話を聞くことがある。
渡部氏が突きノミを持って中心の写真に写っている獅子頭は神楽系の赤獅子の様で、口元の隙間や、耳の下の巻き
毛が直線的で氏の生真面目な性格を象徴している。そして背景の障子や、腕カバーは如何にも昭和的な風景だ。
太田氏の写真では背景の壁に下げたり並べられたりする整然と道具類に感心する。
カメラマンの注文に応じてノミを当ててポーズをしているのだろう・・太田氏の獅子頭制作中の写真は初めて見た。
彫りはじめの獅子頭の工程も、実に直線的で渡部氏の直伝なのだろう。氏は渡部氏が亡くなり、後に福島に移転し
獅子頭を制作している。
渡部氏の螺旋状のキリで手回しで開けている写真がある。電動工具など少ない時代だったので、今よりはかなりの
時間と労力を要しただろう。飯豊町小屋では材料は豊富でも、道具の調達はもとより営業や獅子頭の塗りの依頼、
納品なども大変だっただろう。
この獅子頭は渡部氏の作で、恐らく中小松の新山神社風で頬に毛を付けないのが特徴で分かる。
こちらは太田氏の黒獅子と神楽獅子。これで太田氏も神楽獅子を制作していたことが分かった。何処かで見た顔
つきである。
私とは違って、実に合理的に制作し、突然の訪問者にも恥ずかしくない程キチンと仕事部屋も片付けられている
のに感心する・・見習わねば。
これらの写真から太田氏の獅子頭ではないかという作者不明の獅子頭が浮かんできた。
飯豊町添川の熊野神社と川西町東大塚羽山神社(現在寒河江家所蔵)の獅子頭である。
L型の構造や鼻の形が共通している。
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2024.11.23 (田村桂子)獅子頭
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2023.04.08 (モリヤ)お神楽についてですが
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2023.03.22 (獅子宿店主)黒沢の住人様
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2023.03.22 (黒沢の住人)感謝
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2022.12.08 (獅子宿店主)もりや様コメントありがとうございます
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