精のノート
▼マダリソの思い出 ルサカワンダラーズ
ザンビアで最も人気のあるスポーツはサッカーだ。
どこを歩いてもサッカーをして楽しむ少年たちの姿を見ることができる。
僕も長くサッカー部の顧問をしていた経験を生かそうと、赴任早々サッカークラブを立ち上げた。
最初はたった12人で始まった。
それでもサッカーをしたくて集まってくれた連中だ。
こちらも期待と、何としてもこの子たちを伸ばしてやるとの責任から、
毎日厳しい練習を課してきた。
毎回子どもたちの課題やストロングポイントを見つけてはそれを克服し、伸ばすための練習を工夫して、バラエティに富む練習内容になっていった。
すると、それを見ていた子どもたちが
「コーチ、僕も入れてくれ」
と言いだし、
さらに少し試合で勝ち始めると、
他のチームからも
「こっちのチームに入れてくれ」
と多くの子どもたちが加入するようになった。
こちらではチームは多いものの、指導者が不足しているため、コーチといっても適当に試合のアレンジなどをする人がいるだけで、練習はただゲームをするだけなのが現状だ。
だから、僕の練習が物珍しかったのだろう。
それでも厳しい態度で練習に臨むことは変えなかった。
「自分に負けないこと」
「継続して努力する大切さ」
「チームメイトを尊重すること」
を目標に、毎日本当に声がかれるまで大声を出して練習に励んだ。
正直に言うと、そんな僕の態度についてこられずにやめていった少年もいる。
それでも、本気でやれば、必ず自分の気持ちを分かってくれるはずだと信じ、取り組んできた。
ちぐはぐだったチームも地区のトーナメントで準優勝し、Uー17のカテゴリーのチームはディビジョン2(ザンビアプロサッカーリーグの3部にあたる。日本ではJFLに相当するリーグ)のチームと互角にゲームをするまでに至った。
ただ、僕が嬉しかったのは、そんなことではなかった。
帰国する時、彼らが
「毎日一生懸命指導してくれてありがとう。
コーチが僕たちを大切にしてくれていたことがとても嬉しかった。
確かに練習はクレイジーなほど厳しかったけど、コーチが僕たちのためを思ってしてくれているのは分かっていたし、それでレベルもずいぶん上がり、成長できたから幸せだ。」
と言ってくれた言葉が最高に嬉しかった。
彼らは空港まで見送りに来てくれ、
「コーチ、
チームメイト尊重しろ!だろ!
忘れないよ!」
と僕が口を開ける前に口にしていた。
彼らに何を残せたか、今も自信はない。
ただ、彼らと過ごしたグランドでの日々は確実に僕の心の中にある。
ルサカワンダラーズ。
ルサカで最も素敵なチームだと誇りに思っている。
画像 (小 中 大)
2010.11.05:sei36
⇒HOME
(C)
powered by samidare