長井線を走った蒸気機関車(10) さよなら列車がつなぐもの

 600型から96型まで長井線を走った蒸気機関車の歴史を振り返ってきた。各時代のさよなら列車となった68691号と59634号そして9634号は、今なおそれぞれの地で大事に保存されている。その姿を見ると、この地で共に生きていた友人が、全国に散らばりながらも、その人生を全うした姿を見るようで、何とも言えないものを感じる。

 

 この間、長井線で蒸気機関車を運転していた方からは、最後まで処分できずにいた機関士服を寄託していただいた。そして今回は、故小笠原弘氏が残してくれた写真の機関車が、プラモデルとして復活したことを知ることができた。一枚の写真が過去と現在をつなぎ、その人生をも語るのである。

 

 人々の記憶から消えていたものが、歴史のうねりの中で再び浮かび上がって来ることもある。「ごくろうさん」「ごくろうさんよ」、それは故郷を走った機関車と共に、それに関わった全ての人々への感謝の言葉かもしれない。

2024.07.09:orada3:[長井線を走った蒸気機関車]