しかし、村人の強いねがいにもかかわらず、工事は、こぶしが原というところから、なかなか先へすすむことができませんでした。
「せきが、くずれたぞー。」
「あぶない、にげろ。」
「それにしても、こぶしが原は、どうしてもだめだ。昔からあそこは、まのふちとよばれていた所じゃ。水が多すぎて、土手が次々にくずれてしまう。」
「しょせんはむりなことだったんだ。」
「この土地に田んぼを作るなんて、ばかげたゆめだったんだ。」
「みんなの気もちは、ようくわかる。でもな、今おれたちがやらなければ、だれがやるんじゃ。」