その晩、同行していた二人の女性のうち若い方の女が、時候の障りで患い、どっと床についたまま起き上がることができなくなった。仕方がないから、「しばらく逗留させていただきたい。」と願ったのでありました。するとその家の人達は、非常に心の優しい方々であったので、色々に親切に手に手を尽くして看病してくれた。そのおかげで、娘は程なく病気は治ったが、まだまだ皆の衆と一緒に道中されるような身体には回復してはいないので、「そういつまでも大勢で厄介になっていることもできません。」とて、羽黒参詣が済んでの帰りまで、娘を泊めて貰うように懇々願った所が、その家では快く引き受けて、「決してご心配下さるな。」と言うてくれました。一同の山伏は大そう喜んで、今まで世話になったお礼を萬々申し述べて出立したのでありました。