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広田泉伝 [ 完 ]  明日の一歩 共にあること

  • 広田泉伝 [ 完 ]  明日の一歩 共にあること

 4月23日は9時半から「泉の桜」記念植樹。広田夫人がSNSに「大好きな鉄道をいつも見られる場所に植えてもらって喜んでいるだろうと思います。」と投稿されていた。その後米屋こうじさんのトークショー。モニターもなく舗装の上にシートとマクリを敷いただけの会場で、スケッチブックを使ったトークショーが始まった。米屋さんは笑いを交えながらのトークの最後を「共にあること」と題して、声を詰まらせながら次のように語るのでした。

 

 「広田泉という肉体は残念ながら存在しませんが、今日ここに集まった皆さんの胸の中に存在する泉さんと一緒に居た時間を思い出したのではないでしょうか。一人ひとりの胸に広田泉が今も生きていることを確認できたこと。それを今日、ここに集まった皆さんと共有できたのだと思います。そればかりか泉さんのおかげで、この場所に新たなつながりや思い出が生まれていると思います。」

 

 今回の写真展のテーマは、広田夫人とも相談しながら決定されました。「昨日の一歩。明日の一歩。」は広田さんの生き方そのものであり、これからの私たちの在り方を探す意味も込められています。「共にあること」を互いの心に刻みながら、それぞれの明日の一歩を歩んでいきたいと思います。そして毎年、「泉の桜」に集まって広田さんを語り、旧交を温めることができれば嬉しいと思う。

 

  遠くにいてもいつも応援してくれた

  あなたの笑顔を忘れない

  どんなに苦しい時もここから始まると語りかける

  あなたの声を忘れない

  僕らも明日に向かって歩いていく

  あなたの姿を追いかけながら

  ありがとう広田さん

  僕らはともにここにある

 

 

【おらだの会】広田さんから教えられたことはあまりにも多く、今もその全てを語ることはできません。けれども『広田泉伝』はここで一旦幕を降ろし、おらだの会の活動をとおしながら、その一つ一つを形にしていきたいと思います。今後ともご支援ご指導を心からお願い申し上げます。

 最後に本事業の実施にご尽力をいただいた広田十月様、米屋こうじ様、泉の会の皆様、そして本事業に心を寄せてくださいましたすべての皆様に感謝申し上げます。誠にありがとうございました。

2023.05.10:orada3:コメント(0):[がんばるニャンズ]

広田泉伝[完の2] 明日の一歩 広田さんが伝えたもの

  • 広田泉伝[完の2] 明日の一歩 広田さんが伝えたもの

 写真展には、様々な思いを持った方が訪れました。作品の一つを数十分も正座してご覧になっていた方は、「先生の作品は正座せずには向き合えないのです」と言います。「ここから始まる」という題名に共感して、結婚指輪に刻印したという方がいた。その方は「ここで初めて広田さんに会えたような気がします」と語ってくれました。またある方は、「精神的に落ち込んでいた時に広田さんのお話を聞いて立ち直れたのです」と話してくれました。岩手県雫石町からおいでになった方は、寄書き帳に筆を走らせながら「雫石で写真展を手伝いたかった」と残念がった。広田さんはその作品をとおして、また生き様をとおして多くの人に多くのものを伝えていたのでした。私達もこの写真展をとおして、広田さんからもらったものの大きさに改めて気づかされるのでした。

 

2023.05.08:orada3:コメント(0):[がんばるニャンズ]

広田泉伝[完の1] 明日の一歩 広田さんが残したもの

  • 広田泉伝[完の1] 明日の一歩 広田さんが残したもの

 4月になると広田さんの1周忌にふさわしい写真展にしたいとの思いと共に不安がつのった。そしていよいよ4月21日、会場設営の先遣隊と広田夫人、そして愛犬バレが到着した。夫人はサンプルとして飾るTシャツにアイロンがけ。Kさんは梱包の仕方を頭に入れながら丁寧に開梱作業。初めて成田に来たというOさんは電気屋さんに行ってコードの調達。そして広田さんから「雑巾君」というあだ名をもらったYさんは、ず~っと駅舎の窓ガラス吹き。広田さんが残したものの一つがここにあると思った。来訪神・広田泉は村人と共に涙を流し、汗を流す使徒を育てていたのだ。22日、前夜祭を行った。主はいないけれど、6年ぶりで会えた友と待合室で飲めたことが単純に嬉しかった。

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【おらだの会】6年前のお花見会の様子はこちらからどうぞ

写真展&お花見会 その2:山形鉄道 おらだの会 (samidare.jp)

2023.05.06:orada3:コメント(0):[がんばるニャンズ]

広田泉伝[10] 写真家・広田泉 ~ 俳句のような

  • 広田泉伝[10] 写真家・広田泉 ~ 俳句のような

 広田さんが私たちに残してくれた作品が数点ある。一つは荒砥駅車庫の奥にある廃車となったYRである。広田さんは「写真は切り取るんじゃない、えぐり取るんだ」と教えてくれたことがあった。この写真はまさにえぐり取られた空に、YRが今にも飛び立ちそうに見える。私たちがコロナ禍にあって活動に悩んだ時に眺めた作品である。なぜこの作品に入り込むのだろうか。

 2021年11月にパリで開催された広田泉さんの個展に対して書かれた評(La vie du Rail 2022年4月号)が、広田さんのFBに掲載されているので一部を紹介しながら、改めて鉄道写真家・広田泉の作品を観てみたい。あくまでも私的な感想として理解して欲しい。

 

■1秒の光を捉える

自分の選んだ場所にて延々と時間をかけて影と光の表現方法を探し出す。常に遊び心のある画角と逆光を好む。こうして彼の作品は一般的な細部や質感をしっかり見せるような鉄道写真とは違ったものに仕上がっていく。広田泉は詩的な要素を取り入れるのを忘れない。

 

俳句のような写真

広田泉の写真は俳句のようでもある。俳句とは日本独特の短い詩で、即時性とその瞬間を捉えつつもまた長い余韻を残す芸術でもある。著名な日本の歌人といえば17世紀に活動した松尾芭蕉である。俳句には私たちの感性に溢れる普遍の永遠と一呼吸のような瞬時に失われる儚いものが同時に含まれていなければならない芸術である。広田泉の多くの作品にはこの永遠と短詠の二分法が見受けられる。

 

 まさしく上の写真は雲と光と風の一瞬をとらえているように思える。そして「夢は枯野を駆け巡る」ではないが、YRが「夢は諦めない」とでも語っているような詩的な構図になっている。そこには儚いものと永遠なるものが同調し、見る者の心をとらえて離さないではないだろうか。

 

 

 先の専門誌はさらに「写真家とは普通の人々よりももっともっと強い視線で観察するのが仕事である。自分の中にいつまでも子供のような、外の世界に初めて足を踏み入れた旅人のような目線で世界を見続けねばならない。こうした常にわくわくとした憧れの目線と強い生命力が広田泉の活動源となっている。」と続けている。

 

「成田駅界隈探検」と名付けられた4枚の作品がある。日常の暮らしの中にある美しさや感動を写真と短文によって表現している。写真家であり旅人である広田さんが、地域に生きる者に対して、日常を見る「視点」を提示しているように思える。人々に夢と希望を与えて去っていくその姿は、『来訪神』のようにも思えるのだ。

 

 成田駅界隈探検の作品はこちらからどうぞ

 → 成田界隈探検 曲がったことが大嫌い:おらだの会 (samidare.jp)

 → 成田界隈探検 「低っ!」:おらだの会 (samidare.jp)

 → 成田界隈探検 いつもの:おらだの会 (samidare.jp)

 → 成田界隈探検 一年を四つに分けるなんて:おらだの会 (samidare.jp)

 

 

 最後に広田さんのYouTube「本当の応援とは」をご案内して、『広田泉写真展 ~ 昨日の一歩。明日の一歩』のプレイベント『来訪神 広田泉伝』を終了とさせていただきます。お付き合いいただきありがとうございました。

 → 【写真で応援!】本当の応援とは?山形鉄道フラワー長井線 羽前成田駅 - YouTube

 

2023.04.17:orada3:コメント(0):[がんばるニャンズ]

広田泉伝[9]  ここから始まるRd2 2021年10月

  • 広田泉伝[9]  ここから始まるRd2 2021年10月

 2020年5月の診断結果を受けてからも広田さんは走り続ける。同年8月いすみ鉄道大多喜駅での写真展に続いて、10月24日からは羽前成田駅でRound2が行われた。2021年12月のフランス・パリでの写真展に向けてのスタートを切ることになる。会場に掲出された広田さんのメッセージを紹介したい。

 

 

 パリに向けて国内でも幾つかの写真展を考えています。つまり長期戦という訳です。…略…。奇しくも2011年に発売した写真集「ここから始まる―Just starting-」と同じタイトルとなりましたが、自分の人生はいつもこんな感じなんだなぁと改めて気づかされました。

 さてさて「ここから始まるシリーズ」の写真展。第一歩目は、いすみ鉄道の大多喜駅。そして今回二歩目となる山形鉄道の羽前成田駅。来年は岩手県の雫石町で開催予定です。…略…。その他にも候補が幾つか。一緒に歩んでいけたら幸いです。

2020年10月24日 広田泉

 

 

 広田さんを慕う人々が全国各地から駆け付けた。駅舎のライトアップに加えて和傘のライトアップもお披露目された。コロナ禍のあいにくの天候の中で、駐輪場での芋煮会も懐かしい。イベントの度毎に映した集合写真もこれが最後となった。それにしても「一緒に歩んでいけたら幸いです」の言葉が辛すぎる。

2023.04.16:orada3:コメント(0):[がんばるニャンズ]