卯の花姫物語 5-⑬ 賊将二人の降参

賊将二人の降参
 籠城の中で大将かぶの一人に吉彦秀武と云えば既述の通り、興戦の火おこしをした人であるにもかかわらず、こう云う事を考えたのである。元から木一本の短気者の老人であったからこそ、あんな事も仕出かしたと共に、今度はこんな事もしたと考えるのは当たっているのである。俺は一たい実衡の奴が自分を馬鹿にしたからこそ戦い迄して彼らをやっつけてしまいたい心算りでいたのだが、今度奴が死んでしまった上は何にも八幡殿に怨みがない俺である。何人でもない人と戦いする意味はない、意味をなさない戦いをしてはいられないと考えて、しゃあしゃあと戦いの張本人であり乍ら城を抜け出して降参をして来た。降参の理由としてそう語って来たと云うことであった。如何に気一本の人だからと云っても、余りにも早速な非道なひどい戦いの張本人もあったものと、籠城軍のがわからはそう思われたのであったろう。更にそればかりではなかった。平常武衡、家衡とも余り気の合わないのを見ておった藤原清衡の処も行きかけの駄賃に、御前もこんな処にいつ迄もいるとろくな事がないから八幡殿に降参して俺と一緒に出て行く様にと進めてさっさと連れ出して来たと云う事であったのだ。今では義家に無二うの忠心を励んでおると云う事である。
 一たいこの清原氏一門の家庭は一門の仲が悪いと云う事もあったが、又非常に複雑を極めたもので図解でも示さないと一寸判らない程にめちゃめちゃと複雑した家庭であったのである。参考に系図の略図を左に書いて示して見れば、こんなものである。
2013.01.23:orada:[『卯の花姫物語』 第5巻]

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