卯の花姫物語 2-① 前号までのあらまし

 長井の村々に、今も伝わる黒獅子祭り。それには、歴史のはざまに揺れた悲しいい物語が秘められている。それは平安時代の末期、今から約950年も前の出羽・奥州の政治のうねりに翻弄された、卯の花姫の悲恋の物語でもある。
 当時の出羽・奥州の二か国は、馬と砂金の産出によって、きわめて裕福で強力な権勢を誇った地域であった。棟梁は安倍頼時、その息子が貞任である。卯の花姫は、安倍貞任の娘である。
 安倍氏の権勢は、当時の国司を凌ぐものであり、国司軍に対して、鬼切部(現在の宮城県鳴子町鬼首)の戦いに完勝した。しかしこの戦いによって、安倍氏は朝敵となってしまう。朝廷は、源頼義・義家を奥州征伐の大将軍に任命。義家は、八幡太郎義家であり、今も各地に残る八幡神社に祭られている武将でもある。源氏の大将父子が討伐に来ると知り、安倍氏は降伏。
 頼義の計らいで無罪の恩赦を受けた安倍氏は、天喜2年の春に、報恩の饗宴を国府・多賀城で開くこととなる。この時に、卯の花姫と義家が出会うこととなるのである。また、卯の花姫の侍女・桂江も義家の家臣・高木新三郎家経と一目ぼれの仲となる。さらにこの饗宴に同席していた斑目四郎武忠(後の清原武衡)も、卯の花姫を恋慕することとなる。ここに至って、歴史的物語の主要な人物が登場することとなる。
 奥州を二分した前九年・後三年の役という政治を縦糸に、安倍家の姫と源義家そして清原武衡の愛憎を横糸に、壮大な歴史物語がいよいよスタートする。第2巻は「前九年の役」から始まる。
2013.01.01:orada:[『卯の花姫物語』 第2巻 ]

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