TUAD blog/入試課
▼ヤマガタ蔵プロジェクトのゆくえ
ここ2ヶ月ほど引っ張り続けてきた「ヤマガタ蔵プロジェクト」に関するご紹介。
年末年始にブログが全く更新されないのもせつないので、この蔵プロジェクトに関する記事を中心にできるだけ更新する予定です。
えぇ、あくまでも予定。
ちなみにこの記事は、東北文化研究センターが発行している東北文化友の会 会報誌「まんだら」に掲載された内容です。
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明治時代、二度の大火に見舞われた山形市の商家では、伝統的な耐火建築である蔵がさかんに建てられました。土壁を厚く塗って開口部を最小限におさえた蔵は、現在でも市内に約400、中心市街地だけでも150あまり建っていますが、老朽化や道路整備の影響などにより、次々と取り壊されているのが現状です。東北芸術工科大学の学生が中心となった「ヤマガタ蔵プロジェクト」 は、町から消えつつある蔵を地域資源として有効に活用し、中心市街地に活気を取り戻そうという主旨で、 2003年にスタートしました。その継続的な活動は、 2005年には日本都市計画家協会賞の「学生まちづくり部門賞」を受賞しています。日本の町づくりにおいては、 もはや大きく新しい建物を建てることではなく、すでにある古い建物を掘り起こし、新たな資源として再生させることが鍵となっているのです。 今回は、プロジェクトの発足当初より学生を支え、建築の視点から深く関わってきた本学の山畑信博助教授と竹内昌義助教授が語り合います。司会はプロジェクトへの参加経験を持つ東北文化研究センターの飯田恭子研究員です。
蔵プロジェクト、 始動
司会
ヤマガタ蔵プロジェクト(以下、蔵プロ)は2003年から、東北芸術工科大学の学生たちが中心となって展開してきました。皮切りは、荷蔵を改修してオープンした期間限定の 「オビハチ」でした。 私も蔵の隣の空き地にこしらえたかまどで、ドイツケーキを焼いたりしました。 後に「オビハチ」 はオーナーさんの経営によってカフェ・レストラン 「蔵オビハチ (灯蔵)」として営業を始め、今に至っています。 それまで眠っていた建物が、使うことによって息を吹き返した、保全された例ですね。
山形には中心市街地だけでも150の蔵が残っているそうですが、これほど多くの蔵があるとは地元でも意外と知られていません。お二人はなぜ蔵に着目したのでしょう。 蔵プロの誕生経緯についてお聞かせください。
山畑
まず前段があるんです。 1994年、山形市の委託事業によって芸工大の環境デザイン学科が市内の建造物の調査をした際、土壁と漆喰で作られた蔵の存在が大きく浮かび上がりました。山形市内には明治・大正に建てられた蔵が数多く残っていることが改めて明らかになったんです。
2000年には山形県・山形市・芸工大が連携して、地域社会とアートを結びつける「環境アート推進協議会」が発足し、そのとき、蔵でアーティスト・イン・レジデンスの活動をしてはどうかと企画しました。そこで翌年、追調査をしてみると、前回洗い出したもの以外にもあること、そして環境アートや蔵の利活用に興味を示す蔵主さんが多いことがわかりました。 ただ、蔵の総数はだいぶ減っていましたね。
司会
蔵プロへの伏線があったわけですね。
山畑
そんなとき、卒業研究のテーマで悩んでいた学生に、蔵をテーマに研究したらどうかとアドバイスしたんです。彼女は東京生まれで、山形で初めて蔵に触れた。そして、その空間自体に新鮮な衝撃を受けた。机上の提案だけでなく、蔵を活用して何かしてみたいという強い思いがわき上がってきたようです。
建物をリノベーション(改築・改修)して新しい空間を創るには独自の方法論があると思ってはいたのですが、明確に説明できなかった。学生と何度も話しているうちに、じゃあ実際の空間を作ってやってみようとなったわけです。すると、いろんな学生たちが集まってきました。その中にカフェをやってみたいという学生がいたので、プロジェクトの核として取り上げました。
竹内
そのあたりから私は建築デザイナーという立場で関わるようになりました。いったい何ができるのか、何をやったら面白いのか。そんな模索をしつつ、蔵プロが始動しました。常々、山形という地だからこそできる建築の実験をしたいと思っていたんですが、このとき私は、何かを始めるときに必要なのは潤沢な資金ではなく、素直な思いとか地道に手や体を動かすことだと学生たちに気づかされました。
司会
そんななかで気になるのは、最近、蔵がどんどん姿を消していることです。 それについてはいかがですか。
山畑
急激に減ってきたのはここ一〇年ですね。近郊に続々と大型店舗ができるのと比例するように、町中の空き店舗が増加して居住人口が減り、中心市街地が空洞化していった。道路整備事業の影響もありました。ところが、今度は中心市街地整備改善活性化法が施行されて、山形市もこの基本計画を提出したので、逆に郊外に店舗を出しにくいという状況になっています。 現存する蔵を活用することによって中心市街地に元気を取り戻し、蔵の消失を食い止めることができるかもしれません。
竹内
すでに郊外へと向かっている流れをこれから止めるのは至難の業だと思うんですが、中心に戻ってきたい人と、現存する蔵をどう結びつけて、人を呼び込むか。そんな観点からも蔵プロがお手伝いできたらと考えています。
・・・その2へつづく
2006.12.28:入試課1
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