目加田経営事務所/根橋弘行
▼経営に役立つISOシリーズ 104号−是正処置は関係者を巻き込んで実施しましょう−
食品製造業A社は、ISO9001の認証取得以来、初めての更新審査を迎えました。社長がインタビューを受けています。
審査員:3年間の運用状況を今回の更新審査では確認していきたいと思います。継続的改善という観点では、成果はいかがでしょうか?
社 長:是正処置を確実に取り組むよう社内に意識付けしています。実際、全社で昨年1年間で是正処置を20件実施しました。一昨年も同じくらいの是正処置が実施されています。
審査員:それは活発に是正処置が実施できていますね。ちなみに活発に出来ている要因は何でしょう。
社 長:それこそ、ISO効果ではないでしょうか?
審査員:ISO効果?
社 長:そうです。会社には必ず改善点がある、ということをISOの規格は言っているのだと思っています。ですから私は、問題が発生したことは隠さなくて良いから、是正処置を必ずとるように口うるさく言っています。それが、是正処置の活発な実施につながっていると思っています。
審査員:良いことですね。ISOに取り組む前には、そういう改善活動はあまり実行されていなかったのですね。その是正処置のきっかけとなる不適合はどういう内容が多いのですか?
社 長:お客様からのクレームがほとんどです。大きなものから小さなものまで色々ありますが。
審査員:それで是正処置をした結果、同じ不適合は再発はしていませんか?是正処置報告書を見せて頂きますと、「納期遅れ」のクレームが何件かありますね。お客様側からすると、「何回も納期遅れを起こすのではなくて、一発で改善して欲しい」という声があるはずです。
社 長:おっしゃる通りです。今後は是正処置をただ実施するだけでなく、もっと深く検討していく必要がありますね。
審査員:是正処置の流れというのはどうなっていますか?
社 長:クレームが発生すると、すぐに担当者がお客様のところに飛んで行って状況を確認し管理責任者の専務に報告します。専務は状況を確認して、原因の発生部門に是正処置を指示します。関係する部門ではミーティングなどを開いて原因と対策を考えて専務へ報告するのです。その内容が妥当ならば専務からゴーサインが出ます。
審査員:なるほど、是正処置報告書の印鑑の欄の順番の通りですね。今後は、原因と対策の検討は、もっと沢山の関係者が関わるようにしてはどうですか?
社 長:どういうことでしょう?
審査員:例えば、この納期遅れのクレームについての是正処置では、製造部だけで検討して終わっています。しかし、配送は営業部門の業務ですから営業部のメンバーを参加させて検討した方が幅広く効果的な検討ができたのではないでしょうか?実際、この是正処置の後にも納期遅れのクレームが発生して今度は営業部が対応している記録があります。
社 長:なるほど、関係部門が集まって是正処置を進めることで再発が防げた可能性がありますね。やり方を検討してみます。
是正処置を実施した後に、同じ様な不適合が発生していることが良く見られます。一部の担当者にとっては是正処置となっても、全社的な再発防止策になっていないことからです。今回は効果的な再発防止策の取り方について検討します。
ご提案1 是正処置の検討は関係部門を巻き込んで行いましょう
原因分析と是正処置(再発防止策)の検討は、単独部門だけで解決できる問題は少ないはずです。かならず、キーマンを参加させた検討が行われるようにしましょう。
前のプロセスや後ろのプロセスの担当者を加えることで幅広い見方を取り入れることができます。また、キーマン不在の欠席裁判になってしまうと決して良い結果は期待できません。
ご提案2 ミーティング形式で行いましょう
是正処置は是正処置報告書を作成することが目的ではありません。原因や対策を侃々諤々と話し合うプロセスが大切です。多少時間調整が大変でもフリーディスカッションのプロセスを経ることで成果は大きく変わってきます。
まとめ
是正処置のプロセスを効果的に運用するのは管理責任者によって誰を参加させるかというアレンジが大切です。是正処置プロセスの充実化を図っていきましょう。
以上
2012.03.15:nebashi
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