目加田経営事務所/根橋弘行

▼経営に役立つISOシリーズ 101号−社内のコミュニケーションを良くする−

建設会社A社は、ISO9001の認証取得以来、初めての更新審査を迎えました。社長がインタビューを受けています。
審査員:
認証取得をされてから、3年が経ちましたが、社長が期待していた成果は上がっていますか?
社 長:
全体的に社内のルールが明確になり、決めたことが徹底されてきたと思います。
審査員:
逆に、これから改善が必要な点はどうですか?
社 長:
社内のコミュニケーションをもっと良くしなければならないと感じています。
審査員:
例えば、どんな問題があるのでしょうか?
社 長:
コミュニケーション不足が改善できていません。お客様から聞いた情報に工事部では対応しているけれど、営業部に関係するものが伝わっておらずクレームになったことがありました。また、クレームの対応について工事部で検討しているけれど、営業部の担当者の意見を聞いたら、もっと良い解決法があることが分かった、ということもあり、私としては改善しなければいけないと思っています。
審査員:
なるほど、そういう課題があるのですね。
社 長:
ISO9001の規格には「5.5.3内部コミュニケーション」という項目がありますが、その部分を読んでも内部コミュニケーションが良くなる方法は書かれていませんからどうしたら良いのか、と困っているところです。
審査員:
確かに規格では、「コミュニケーションのためのプロセスを確立する」こと、「品質マネジメントシステムの有効性に関する情報交換を確実にする」こと、を要求しているだけですね。社長のお話をお聞きするとコミュニケーションのやり方について、改善の余地があるようですね。
社 長:
そうです。「5.5.3内部コミュニケーション」をどのように直せば良いのでしょう?
審査員:
規格では、「5.5.3内部コミュニケーション」という項目で「コミュニケーションのプロセスを確立すること」を要求していますが、これは御社の引合い〜完成工事の引渡しまで全てのプロセスで必要なコミュニケーションをとることを要求しているのです。
社 長:
なるほど。それでは、全体的にマニュアルなどの見直しが必要なのですね。
審査員:
そういうことになります。業務の進め方を調べてみると、どこにコミュニケーションの穴があるか見つかるはずですよ。今回も営業部と工事部の審査の中で見ていきましょう。
社 長:
お願いします。
内部のコミュニケーション不足の為に、クレームが発生したり、品質面の不適合が発生している事例が良く見られます。今回は、内部コミュニケーションの改善について検討します。
提案1 内部監査のやり方を変えましょう
内部監査を従来の「適合性を確認する」や「有効性を確認する」というような総花的な監査から問題解決型の内部監査へ切り替えをしていきましょう。
監査の目的を「内部コミュニケーションの問題を発見し、改善の糸口を見つける」と明確にすることで、内部監査員に指示されたテーマについて具体的に突っ込んだ監査を進めさせることが出来ます。内部監査の成果も具体的に確認することができます。
提案2 内部コミュニケーションに関わる項目の手順を見直しましょう
 先ず、下記の項目について改善の必要がないか内部監査等で確認しましょう。
@「5.5.3内部コミュニケーション」
  会議の議事録の作成、他部門への配付の有無や実施状況は適切か?
A「7.1製品実現の計画」
 「7.5製造及びサービス提供」
  業務の進め方の手順や実施状況において必要な報連相は行われているか?
B「7.2顧客関連のプロセス」
顧客とのコミュニケーション結果は確実に関係者(関係企業、他部門を含む)に伝わっているか?
C「7.3設計・開発」
設計・開発の情報(特に変更)が関係者(関係企業、他部門を含む)に伝わっているか?
D「8.2.3フプロセスの監視及び測定」
  業務の進捗状況が関係者(関係企業、他部門を含む)に伝わっているか
まとめ
手順のオーダーメイドを進めていくことがISO活用のポイントです。例えば、コミュニケーションの強化などの具体的な問題については、マニュアルなどの手順に具体的に盛り込んでいきましょう。
以上

2012.01.31:nebashi

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