美術館大学構想

いつも図書館の机に陣取り、エスキース帳に、くしゃくしゃの文字やらドローイングを書きなぐっていた高木君の卒業制作は、池に張った氷の上、ずぶ濡れになりながら詠むポエトリー・リーディングだった。

途切れ途切れのドラムス、聞き取れない叫び声(「僕は 彼女の 赤ん坊に なりたかった・・・」)押しだまる聴衆、重たい灰色の空。

誰かに訴える為ではなく、叫びは、自分自身にこそ叫ばれるべき時がある。
今回、彼が「叫ぶため」に求めたシチュエーションは、芸術の名のもと以外に、この狡猾で、ややっこしい世界にはあまり用意されていないだろう。

長い詩の、真剣な朗読が続く間、僕は聴衆の背後をウロウロ歩き回ってばかりいて、落ち着いて聴く事ができなかった。
人々に踏みしだかれぐちゃぐちゃになった雪に足を取られながら、僕は、
「地下水道をいま通りき暗き水のなかにまぎれて叫ぶ種子あり」
という寺山修司の短歌を反芻していた。

宮本武典(美術館大学構想室学芸員)

※このブログに「図書館」がよく出てくるのは僕のデスクが貸し出しカウンター奥にあるためです。あしからず。
2006.02.16:miyamoto:[メモ/展評]


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