美術館大学構想

現在進行中
■上写真:第1回打ち合わせ風景
左から、デザイナーの豊田あいかさん、松本先生、昌和デザインの小野社長、jazz & nowの寺内久さん、私

■下写真:作品集荷時のひとコマ
左から、日本画コースの番場三雄先生、私(後頭部のみ)、松本先生の奥様、松本先生、博士課程の高橋さん、谷善徳先生

infomationのコーナーでもお知らせしている通り、現在本学では松本哲男教授の学長就任を記念した展覧会『松本哲男展 鼓動する大地』を開催中です。
年度末の人事決定を受けて一気に立ち上がった本展。
ちょうど年度末のアニュアルレポート編集と、個人的には先にお伝えした3カ所同時開催の個展と重なって、まさに寝る間も惜しんで、骨身を削っての準備となりました。
とはいえ、松本先生とは昨年夏のヴェネツィア・ウ゛ィエンナーレ視察旅行でご一緒して以来、気心がしれていたこともあり、この若輩者に最大限の協力をいただき、また展示関係者の心強いサポートあって、右往左往しつつも、何とか無事オープンとなりました。
ここでは、この展覧会に関わってくださった方々を紹介させてもらいます。

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まず【上写真】の風景ですが、展覧会が決まってすぐに、「とにかく実際の作品を見ましょう」ということで、関係者そろい踏みでアトリエにお邪魔したときのスナップです。

豊田あいかさんは昨年まで『BT美術手帖』のエディトリアルデザインに関わっていたフリーのグラフィックデザイナー。本展のフライヤー、ポスター、カタログのデザインを手がけてくれました。私とは武蔵野美術大学での同期で、夫君も親しい友人で彫刻家です。

昌和デザインの小野社長は、展覧会の会場施工をいつもサポートしてくれている業者さん。今回は、横幅12メートルの作品を直角に自立させ、なおかつ弧を描くように設置するという難しい要求をクリアしていただくために、事前に作品の構造確認をお願いしました。

寺内久さんは、インプロビゼーション(即興演奏)のコンサートをコーディネートしている方。以前、原美術館のギャラリーで寺内さんが企画された、ポロックやロスコなどのアメリカ抽象表現主義の絵画に囲まれての演奏会のインパクトが忘れられず、音楽企画・立案をお願いしました。寺内さんのコーディネートにより、4月28日(土)の夕方、京都造形芸術大学での巡回展初日に、韓国のサックス奏者Kang Tae Huanを招いての絵と音楽のコラボレーションが実現します。

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続いて【下写真】は、山形展のための作品をアトリエから運び出している時のひとコマです。1971年作の『ヴォルヴドュール』は、松本先生が結婚された年に描いた作品。
それなのに院展を落選してしまって、新婚早々落ち込んだというエピソードを奥様を一緒に苦笑いしながら披露されているところです。
仲の良い松本夫妻は並んで立ってぴったり収まる感じです。
奥様は日頃から松本先生の作品やポジフィルムの出入りを管理されていて、カタログ制作時には大変お世話になりました。
また、この日は芸工大の日本画研究室の方々が応援に駆けつけてくださり、倉庫から作品を出して梱包を解き、痛んでいる箇所には修復を施して再梱包・積み込みと、3時間程の作業に力を貸していただきました。
2005年度の美術館大学構想事業を冊子にまとめて出版しました。
デザインは本学卒業生の小板橋さん(アカオニデザイン)に依頼し、ベージュの地に白く『TUAD AS MUSEUM』の文字が浮かび上がる装幀で、雪深い山形の印象が反映されたシャープな仕上がりになっています。
昨年10月に開催したシンポジウム『ことばの柱をたてる-美術館大学ことはじめ-』の採録は特に必読。
酒井忠康氏(美術評論家/世田谷美術館長)、芳賀徹氏(文学者/京都造形芸術大学長)、藤森照信氏(建築家・建築史家/東京大学教授)による鼎談はユーモア満載、知的好奇心をくすぐられる内容で、編集の過程で何度も吹き出してしまいました。
3氏が東北文化の読み解き方や、美術館の裏側について語りに語った3時間を、延べ30ページにわたって完全採録しています。

その他にも、『宮本隆司写真展-箱の時間-』関連イベントとして開催したシンポジウムや、『珍しいキノコ舞踊団』レジテンスをサポートした学生によるルポ、民俗学者で本学大学院長の赤坂憲雄氏とアーティスト富田俊明氏の対談などを掲載しています。

現在開催中の『松本哲男展 鼓動する大地』会場で販売中です。
写真上:富田俊明ワークショップ「『二重体』、『泉の話』を読む」
写真下:舞踏+ポエトリーリーディングの会/森繁哉×富田俊明

先月開催された富田俊明さんによる上記2つのイベントについて、工芸コース3年の竹田佳代さんと、洋画研究生で美術館大学構想室スタッフの後藤拓朗君がレポートにまとめてくれました。

読んでみると、彼らにとって、深い内省と対話の契機となっていたことが分かります。

この企画、その閉ざされた濃密さ故に、立ち会えた人たちは決して多くなかったですので、彼らのレポートからその場の雰囲気を読み取ってもらえたら幸いです。

「アーカイブ」中、富田展ページの2ページ目に掲載しています。

宮本武典(美術館大学構想室学芸員)