白鷹町 | みゆき整形外科クリニック

▼ストックホルム症候群

今年は次から次へと自然災害が立て続けに起きています。日本人は昔から大災害の連続の歴史の中で生きてきました。その中でみんなが助け合って生き残ってきたのです。今地球規模の異常気象が言われていますが、今までもこれからも私たち日本人は自然災害を受け入れ、それを乗り越えていかなければなりません。今回の北海道胆振東部地震で被災された方々にお見舞い申し上げるとともにお亡くなりになった方々に対して心よりご冥福をお祈り申し上げます。
今年の一連の災害に際してもマスコミは連日大きく、しかも過度に取り上げ話をおかしな方向にもっていこうとしています。「もっと淡々と事実を報道していればいいのだ、君たちは!」と言いたいです。
スポーツ報道においても相も変わらず、スポーツ至上主義がまかり通っています。「アスリートファースト」などという言葉も金科玉条のごとく言われ始めてきています。「選手第一」なんて言ったらそれを拡大解釈して、スポーツ選手が一番で何をしてもいいと思う低俗な輩が出てくることは明白です。彼らがそんな輩の例と決めつけているわけではありませんが、今回のアジア大会でバスケットボール選手四人が日本のユニフォームを着て売春行為に及んだというニュースがありました。
これをスクープした朝日新聞記者に対してなんで止めなかったのだという話もありますが、選手たちに油断と、ある種の傲慢があったことは否めないと思います。
その他にも今年はスポーツ界の不祥事が次から次へと明らかになっています。1月にカヌー選手が、ライバル選手の飲料用ボトルに禁止薬物を混入する事件から始まり、水泳選手の後輩選手への暴力行為、ラグビー選手のタクシー運転手への暴行事件、女子レスリング選手へのパワハラ問題、アメリカンフットボールの悪質タックル問題、ゴルフプロアマ戦でのプロ選手の不適切対応、日本ボクシング連盟会長の独裁問題、そして今回は体操選手の暴力問題とパワハラ問題です。小生は以前から日本におけるスポーツの暴走を快く思っていませんでしたが、末期的状況になってきたのではないかとさえ思います。
今回の体操選手の問題を聞いて思い出すことがありました。皆さんはストックホルム症候群という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
1973年にスウェーデンの首都ストックホルムで銀行強盗が起きました。犯人らは4人の行員を人質に取って立てこもり、人質解放には1週間を要しました。人質たちは極限の精神状況の中、見張りがなくてもトイレに行って全員が逃げずに戻ってきたり、警察に犯人を打たないように懇願したりと犯人に共感を覚える行動をとりました。なんと人質の一人はその後犯人の一人と結婚までしています。この人質たちの精神状態を後にストックホルム症候群というようになりました。
人は、自分の生死が相手に握られるという極限の精神状態に陥った場合、生命の危機を経て優しい言葉などをかけられると善悪の判断基準が壊れ、自分の生死を握る相手に好感・好意を抱くことがあります。心理学的にはそれを「ラポール」というのだそうです。
古い話になりますが、1965年に東京豊島区で43歳の男が女子高生を連れ去り監禁して、半年後に事件は解決しますが、夫婦のようになっていた事件もありました(通称、「籠の鳥事件」)。これもストックホルム症候群の例と言えるでしょう。
今回の体操選手とコーチの関係はまさにそれではないでしょうか。インターネットで流れた、その体操選手がコーチに殴られる映像を見て、それを思い出しました。体操選手が会見で、パワハラを持ち出したのは弁護士が入れ知恵をして、巧みに問題をすり替えようとしているのだと思います。
まだ世間を知らない10代の体操選手が小さな時からコーチの絶対的な支配下におかれ、コーチのいう事を聞いていればオリンピックに出ることができると思い込んでいるのは想像に難くありません。それを邪魔するものはみな敵に見えてしまうのです。彼女の洗脳を解かないとかわいそうな人生になってしまう気がして仕方がありません。
私は4年前に市民公開講座で「スポーツの功罪」という題で講演をしたことがあります。その時からスポーツ至上主義を問題にしておりました。もともとスポーツは「遊び」なのです。そこに昨今商業主義が入り込んできて、お金が絡むようになり、利権も発生し、スポーツで飯を食べる人間が多くなりました。
今、日本は人口減少が始まり、どの業種も人材不足の嵐です。そんな日本の現状を考えると、スポーツを過度に美化し、スポーツ至上主義でスポーツしていれば偉い、スポーツで食べていけるのが一番いいみたいな風潮は、将来の日本に暗い影を落とすのではないかと心配しています。

2018.09.12:miyuki-cl

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