目加田経営事務所

▼【社員あっての会社】

顧問先企業の中で社員旅行を復活する会社が倍増しました。訪問先は海外と国内と半々ですが、土日を利用した4日以内の行程が大半で、主目的は福利厚生の一環として親睦と懇親です。これができるためには、財務的な余裕と精神的な余裕の両方が整わないとなかなかできるものではありません。
ある顧問先は四半世紀にわたり毎年、関係先も含めて海外社員研修旅行を実施しておられ、おかげさまで私も毎年参加させていただいております。ある顧問先はしばらく中断していた社員旅行を復活させました。ある顧問先は社員研修の一環として先進企業視察を兼ねて毎年実施しておられます。ある顧問先は毎日が分刻みのスケジュールで動いているので非日常の中で社員とのふれあいを目的に社員旅行を導入しました。

良かれと思って実行しても様々な問題も露見します。せっかくの社員懇親の場だから、全員が参加してほしいし、喜んでもらいたいと思うのは当然です。
しかし、誰もが納得できる理由ならまだしも、どう見ても個人的なわがままで参加しない人が出てきたり、参加しない上に旅費相当分を要求してきたり、参加者の中から不満や陰口が出てきたり、普段のうっ憤をここぞとばかりに宴席で醜態をさらしたり。
大金を使って、文句を言われたのでは経営者もたまりません。国内旅行といえども一人当たり10万円程度の費用はかかります。ましてや、営業しておれば計上できたであろう売上(機会損失)を含めると、一人当たり30万円の費用を投資して行う大イベントです。社員50名の会社なら、1500万円をかけているのと同じなのです。
これだけ投資した挙句のクレームでは目も当てられません。先代から続く長年の伝統行事といえども、思い切って中止した企業はたくさんあります。

このようなトップの思いと社員の価値観のギャップによる中断の場合は、ベクトルを合わせて、社風整備と価値観の統一と経営理念の浸透を図らねば、復活できません。ある企業は、これらの条件整備ができたと判断して、周年事業の一環で復活したのです。企画段階から社員の意見を取り入れ、社員による自主的な運営を心がけ、実現にこぎつけました。
実施後の社員の反応はどれも感動的なものばかりでしたので、経営者もとても喜ばれておりました。
経営者とは、かくも社員の喜ぶ姿や笑顔を見たい人種なのだと改めて実感しました。社員を喜ばせたいがために日夜努力しているともいえます。

私の前職の会社では、毎年の1泊2日の国内旅行と5年ごとの海外旅行をブロックごとに班を組んで実施していました。そこには、本人だけでなく家族も参加可能でした。妻や子供は50%自己負担、両親や兄弟は100%自己負担でしたが、堂々と家族で海外旅行できるのは、夢のような制度でした。おかげさまで、両親と2回海外旅行をすることができて、冥土の土産ができたととても喜んでもらいました。両親が事あるごとに、海外旅行で来たことを自慢しているのを伝え聞いて感動しました。
このよき伝統を当事務所でも実行すべく、財布の許す可能な限り、実施しています。

すべての事業は社員の働きによって成り立っていますから、その社員が喜んでくれる、満足してくれることが、ひいてはお客様を喜ばせ、ご満足いただくことになるので、とても大事なことです。経費削減や緊縮政策をとることと、潤いを生み出すことは必ずしも矛盾はしません。金をかけなくても、やり方次第で、できることはたくさんあります。
余裕のない時は無理は禁物です。大事なのは「社員あっての会社、皆のおかげで会社が経営できる感謝」を形に表すことです。
手段の目的化にならないように、権利の主張のきっかけにならないように、マンネリ化して不満の巣窟にならないように、工夫を凝らしましょう。
2012.06.15:目加田博史

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