目加田経営事務所
▼【稼ぎに見合う働き方】
先週、大阪の現代画廊で大学時代の美術部員有志とグループ展を開催しました。多くの方々にお越しいただきましてありがとうございました。
現代画廊のある場所は大阪でも由緒ある天満界隈の老松通りにあり、高価な骨董品や工芸美術品の画廊がひしめき合っている場所なので、さまざまな人が来られます。芸術雑誌の編集員、近くにお住まいのセレブらしい御夫婦、威勢の良い美術評論家など様々です。仕事の合間に趣味で描いている絵ですので、販売はしていません。売って下さいと言われても値段の付けようがありません。
私の友人で画家を生業にしている人がいます。普通のサラリーマンから画家の道に進んで25年になるそうですが、最近やっと生活ができるようになったと言っています。
彼の絵は号当たり3万円ぐらいです。号と言うのはハガキ大の大きさを言います。全国のデパートの美術コーナーで展示即売会をやったり、画廊で個展を開いたりしてファンをつくっているのですが、なかなか大変だと言います。私も彼のファンの一人ですが、まだ1点しか持っていません。関西出身の彼とは馬があって良く話をしますが、そのなかで唸ってしまうような話が有りましたのでご紹介します。
「サラリーマンの頃は、月給はもらえるのが当たり前だと思っていた。朝、タイムカードを押して、夕方会社をでるまでは仕事をしているのだから、成果とは関係なく給料をもらうのが当然だと思っていた。仕事で会社に利益を残せるような一人前になるまでは当然会社が負担すべきだと思っていた。たとえ、失敗しても、仕事上でのことなので、会社が負担すべきだと思っていた。価値ある仕事ができなくても仕事を与えている会社の責任だと思っていた。当然という気持ちが勝っていて、働く場所があるだけでありがたいという気持ちは正直いってなかった。
でも、いま考えると、何と、欲張りで厚かましい世間知らずな事を平気で言っていたなあと恥ずかしくて仕方がない。今の絵を描く仕事は、好きで始めたとはいえ、お客様が気に入って下さらないと売れない。自分が好きなこととお客様が評価されることは違う。失敗しても誰も負担してくれない。売れなくてもだれも援助してくれない。売れる絵を描いて初めて評価され、仕事をしたと言われる。それで、生活基盤を安定させたうえで、本当に自分が納得できる後世に残るような芸術作品を制作できる余裕が生まれる。初めて売れた時のお金のありがたみは生涯忘れない。常に謙虚に、素直であろうと思う」
彼の絵は平均10号ですから、1点当たり30万円。手取りでは20万円程度です。年間30点売れて、600万円の収入です。注文制作ならゆとりがありますが、制作後の販売となると先行経費がバカになりません。しかも、一寸先は見えない不安定な職業です。
しかし、彼は後悔していないと言います。自分のやりたい事で生活ができるだけで感謝しています。これからももっともっと努力してお客様に喜んでいただける絵をたくさんかいてゆききたいと目を輝かせていました。
果たして、私たちは、自分の働きをどのように考えているでしょうか。その中で自分をどのように輝かせて、会社に、社会に貢献しているでしょうか。
目加田博史
2012.03.15:目加田博史
⇒HOME
(C)
powered by samidare