「Mr.PO」の思想と行動(5)…その“詐術”のからくり

  • 「Mr.PO」の思想と行動(5)…その“詐術”のからくり

 

 「まるで暗号みたいな数字の乱発による“目くらまし”」―。「Mr.PO」(上田東一市長)の詐術手法はひと言でいえば、こんなことになろうか。JR花巻駅東西自由通路(駅橋上化)をめぐって、市側から公表された「Q&A」集を読んでいるうちに頭がクラクラしてきた。35項目にわたる問答(全16ペ-ジ)は数字の羅列ばかり。たとえば、ざっと38億円にのぼる巨額な事業費…目を凝らすと、このご仁が繰り出す“金目行政”のからくりが透けて見えてくる。やや長文のきらいはあるが、〝お任せ民主主義“にオサラバするためにも、辛抱してお読みいただきたい。

 

 「財源として国からの補助金約16億円を見込んでいます。また、JR東日本との負担額が定まっていない、現在使用されている跨線橋の撤去費が約4億円あります。これを除いた約18億円が市の負担となります。この市の負担分の約18億円の95%については、合併特例債の活用を予定しておりますが、合併特例債は償還金(返済金)と金利の70%が国から地方交付税として措置されるため、市の負担分の約18億円のうち、国から交付税措置される額をさし引いた約6億円が市の実質負担額と想定しています。これにJR東日本との負担額がまだ定まっていない跨線橋撤去費の市負担分を加えた約6億円+アルファが市の実質負担額となると考えています」―

 

 「そうか。実際には38億円もかかるのに6億円ですむのなら…。それで駅の利便性が高まるなら、安いもんではないか」―。財政にうとい一般市民や市議の一部が陥りやすい“落とし穴”である。考えて見れば、国庫補助や交付税措置などの財源も元をただせば私たち国民が納める税金である。また「債権」(償還金)は借金そのものであり、その返済は後々の世代まで委ねられる。この「Mr.PO」流が“目くらまし”手法と言われるゆえんである。さらにはこんな記述も。「駅西側は区画整理事業により良好な住宅地として整備されています。ショッピングモ-ルなどの利便施設の整備も進み、独立した生活圏として人口集積が進み、花西地区は人口が増加している地区(他には花南地区)となっています」―。ふと、そうかなぁ。そう言われてみれば…とここにも“落とし穴“が用意されている。で、実態は―

 

 駅橋上化要請の先頭に立ってきた「花西地区まちづくり協議会」は7行政区で構成されている。市の統計資料によれば、平成29年3月から令和2年3月まで4年間の人口は全体で8418人から8538人(伸び率1・4%)とわずか120人増えたにすぎない。逆に若葉町や材木町、石神町、藤沢町の4行政区では人口減に転じている。私自身、高校時代まで旧花巻農業高校に近い「農学校通り」(藤沢町)に住んでいたが、徒歩で駅に向かうのに難儀したものである。ましてや車社会のいま、駅橋上化(東西自由通路)のメリットを享受できるのは徒歩圏内の西大通り地区の住民に限られるのは目に見えている。ある意味、高齢者や障がい者など移動手段が限定される人たちを排除する、一見「公共」を装いつつ、実際はそうではない(健常者優先の)差別的な”公共”事業とさえ言いたくなる。

 

 あまり表には出したくないのかもしれない、もうひとつの重大な数字の隠ぺいがある。「Q&A」集のどこを探しても見当たらないのが肝心のJR花巻駅の乗車人数や東口と西口を結ぶ地下道の通行量である(HP上には地下道の通行量と高校生に特化した利用状況が駅橋上化を正当化するデータとして別途、掲載されている)。JRや市の統計資料によると、花巻駅の1日平均の乗車人数は3269人(令和1年度)で、地下道の平日の通行量は1日平均(出入り)が約1000人と見積もられている。自由通路が完成したからといって、わざわざ遠方から駅を訪れる人はあるまい。したがって、今回の「JR花巻駅東西自由通路(駅橋上化)」によって、直接の恩恵を受ける最高値は(3269人+1000人)=4269人というレベルに設定することができる。

 

 「木を見て、森を見ず」―。細部に気を取られていると、全体を見失うことにハタと心づき、この数字を電卓に入力してみた。総事業38億円÷4269人=約89万円。この算式から浮かび上がってくるのは、受益者一人当たりの事業費がざっと90万円の巨額に上るという事実である。旧花巻市内の遠方や大迫、東和、石鳥谷の旧3町の住民にとっては何ほどのメリットがあろうか。「受益者負担」の公平性を無視した、これまた「エセ公共事業」と言わざるを得ない。さらに、自由通路やエレベ-タなど市所有にかかる工事費が11億円なのに対し、JR所有分は倍以上の24億円。ところが、JR側にとっては補助対象外のこ線橋の撤去費の一部を負担するだけの“ただ乗り”…あっ、思い出した。昔はやった「キセル」(無賃乗車)みたいなあんばいなのである。

 

 「花巻駅東西自由通路整備事業は、駅利用者及び東西居住者の利便性向上を図るとともに、東西の一体的なまちづくりと駅周辺市街地の活性化、賑わいの創出を図ることを目的としています」(令和2年10月31日開催の松園地区住民説明会の資料より)―。活性化や賑わい創出の具体的な青写真を示さないままの「駅橋上化」問題の欺瞞(ぎまん)はるる述べてきたとおりである。それはさておき、新版「おらが駅舎」物語のミステリ-はこれからいよいよ佳境(かきょう)を迎える(以下は5月24日付当ブログ「イ-ハト-ブ歌舞伎『青天の霹靂』(全7幕)」の続編である。作演出・増子義久)

 

 

 ……「Mr.PO」が得意満面で「住宅付き図書館」の駅前立地という珍妙な構想をぶち上げたのは、令和2年1月29日(私は「1・29」事変と呼ぶことにしている)。これを受けた形で、地域単位や諸団体を対象にした「駅橋上化」問題の説明会が本格的にスタ-ト。6月から12月にかけて計16回の説明会が行われた。ここで留意しなければならないのはこの説明主体が「建設部新図書館周辺整備室」ということ。察しの良い方はとっくにお気づきのことと思う。つまりは、新図書館建設と駅橋上化とはコインの表裏…どちらかが欠けても機能しないということなのである。

 

 ところで、事態が思惑通りに進まないのが世の常である。「Mr.PO」がおそらく“サプライズ”気分で公にした件(くだん)の構想に市民の大方がそっぽを向いてしまった。「ブライド」が背広を着て歩いているような、この種の人物にとっては面目丸つぶれである。追いつめられた末、「住宅付き」の部分は白紙撤回を余儀なくされたが、ここで白旗を上げるようなご仁ではない。それどころか、花巻市議会3月定例会に上程された「駅橋上化関連予算」(2603万円)が賛成多数で否決されたにもかかわらず、今度は米国生活で身に付けたらしい「アストロタ-フィング」(エセ草の根運動=“やらせ要請”)なる手法を駆使し(6月9日付当ブログ参照)、再度同じ予算案を議会に再上程するという、なんとも騒々しい〝大立ち回り”ぶりである。

 

 この案件を審査する6月定例会は本日6月17日に開会した。「議会制民主主義」の真価も問われる、今回の「駅橋上化」戦争に”参戦”するのは4人。21日から3日間の日程で論戦が交わされる。それにしても、「Mr.PO」はどうしてこうまで突っ張るのであろうか。おそらく、これまでの度重なる”失政”を知り尽くしているのが、他ならぬご本人だから―というのが私の見立てである。つまりは「恥の上塗(ぬ)りはできない」という干からびた品性のなせるわざ。「五輪中止」を今さら口にはできないという例の類(たぐい)である。

 

 さ~て、お立合い!駅橋上化問題の担当部署はどさくさにまぎれるようにして、4月1日付で「都市機能整備室」(建設部内)に姿を変え、肝心の図書館はと言えば、ちゃっかりと「新花巻図書館計画室」と名義替えをして、生涯学習部内に引っ越ししているではないか。そして、「Q&A」集には苦し紛れにこんな表現が見える。「無理」を押し通し続ければ、いつまでも「道理」が引っ込む―などと思ったら大間違いである。

 

Q「花巻駅東西自由通路(駅橋上化)整備は、新しい図書館を花巻駅東側に整備することを目的として整備するのではありませんか」

 

A「花巻駅を含む地域は花巻地域の中心市街地でありますので、人口が増加傾向にある花西地区の利便性を図る花巻駅東西自由通路(駅橋上化)整備と駅のそばに新図書館を整備することは花巻駅周辺を含む中心市街地の活性化を図る手段となるものと考えております。しかし、新図書館の建設場所については現在、市民の間で駅周辺かまなび学園周辺かで意見が分かれております。仮に新図書館の建設場所がまなび学園周辺になったとしても、花巻駅東西自由通路(駅橋上化)整備は、花巻駅周辺を含む中心市街地の活性化を図るため、検討すべきものと考えています。その意味で、新図書館建設場所に関するご意見はご意見として、花巻駅東西自由通路(駅橋上化)整備の必要性は、新図書館とは別にお考えいただくようにお願いいたします」

 

 「橋上化の方はすべて、私どもの方で整備をさせていただきます。で、伏してお願い申し上げます。貴殿が所有する図書館の立地予定地はぜひとも私どもに、できれば格安でお譲りいただきますように…」―。舞台上ではJR殿に哀願口調で土下座する「Mr.PO」の姿が。観客席からは尻だけが見えて、頭は見えない。皆の衆はアッと驚く大団円に固唾(かたず)を飲む。新版「おらが駅舎」物語もいよいよ、大詰めへ…。観客席からヤジが飛んだ。「『頭隠して、尻隠さず』とはこのこと。“猿芝居”だとしたら、お猿さんに申し分けない。ひょっとしたら、日光東照宮の三猿(見ざる・言わざる・聞かざる)の真似をしているのかも知れないが、どうせ芝居を打つのなら、もっと芸を磨かんかい」―“裸の王様”(アンデルセン)の侘びし気なシルエットを映しながら、緞帳(どんちょう)は静かに下りた。

 

 

 

 

(写真は橋上化の理由のひとつに上げられた地下通路。「Mr.PO」は予算案の再上程を前に防犯カメラの設置を表明した。これを称して、市民の安心・安全に背を向けてきた行政の「不作為」という=JR花巻駅の敷地内で)

 

 

 

《追記》~JR花巻駅と疫病禍

 

 「その頃、汽車は病気やばい菌を載(の)せて来るという迷信があり、停車場を忌避(きひ)する風が盛んであつた。花巻の有志達も略(ほぼ)同様の思想で誰も土地を提供し様とする者がない。この時、伊藤儀兵衛は進んで自分の所有地の中から今日の花巻駅を提供し、駅前の通路を無料で寄附したのである。彼はこの様な迷信を一笑に附したのみならず、文明開化の発達のためには先づ交通通信の機関の完備を見なければならないことを主張した先覚者であつた」(『花巻市制施行記念 花巻町政史稿』)―

 

 現在のJR花巻駅は1890(明治23)年、貴族院議員も務めた豪商、伊藤儀兵衛(1848~1923年)の土地寄進で開業した。今回、歌舞伎に見立てた戯曲「青天の霹靂」を書こうと思った動機は遠い先祖の遺産(歴史の記憶)を一顧だにしない「Mr.PO」の“パワハラ&ワンマン”市政に対する怒りが限界に達しつつあったからである。「元をただせば、駅前一帯は地元篤志家からいただいた土地だった」―。というわけで、今度はJRとの土地交渉を有利に進めるためのネタに使われやしないか…この人物にかかっては油断も隙もあったもんじゃない。気持ちが休まる暇もない。

 

 

2021.06.16:masuko:[ヒカリノミチ通信について]

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