号外―ルポ「としょかんワ-クショップ」その5(完―2)…“上田私案”の白紙撤回を!?

  • 号外―ルポ「としょかんワ-クショップ」その5(完―2)…“上田私案”の白紙撤回を!?

 

 「としょかんワ-クショップ」の一般の部最終回(5回目)が25日に開かれ、7班に分かれた参加者が新花巻図書館の立地場所などについて、意見を交換した。これに先立ち、当局側から今年1月29日に公表された「新花巻図書館複合施設整備事業構想」〈いわゆる“上田私案”〉や今月19日開催の「(市議会)新花巻図書館整備特別委員会」で示された建設候補地の説明があった。私は「場所について、議論するのは尚早だ」として、“上田私案”の白紙撤回を求めて、以下のような意見を述べた。

 

 

 コロナ禍の下で続けられてきた計7回にわたる長丁場のWSは今日が最後になるわけですが、本来なら最終日のこの日が第1回目にならなければならないと思っています。というのは、WSのたたき台となるべき、市当局が「最善案」とする「住宅付き図書館の駅前立地」構想(“上田私案”)がこちら側の要求でやっと、この日の最終回に提示されたという事情からです。順序がアベコベなんです。

 

 しかし、ひるがえって考えれば、結果オ-ライではなかったのかとも思います。高校生から高齢者まで、何らの束縛もなく自由に「夢の図書館」を語り合えたのは幸運であり、こんな機会はめったにないのではないかと考えるからです。その上での提案になりますが、この際、市当局が「最善案」と称するこの構想を白紙撤回し、WSの中で出された奇想天外でしかも自由奔放な市民の声をできるだけ反映した新たな構想を作り直していただきたいと思います。体育館などとは違って、図書館などソフト面の比重が大きいプロジェクトは建物や場所などより、まず理念を先行させるべきです。「百年の計」という視点に立って、ゼロベ-スで出直してほしいと切に願います。

 

 さらに人類はいま、コロナパンデミックという感染症の脅威の中に生きなければならない「宿命」を背負わされてしまいました。「ニュ-ノ-マル」(新常態)が叫ばれる時代の中で、図書館のあり方も従来のようなまちの活性化や賑わい創出の観点だけから論じることはもはや、不可能だと考えます。私たちはいま、「パラダイムシフト」(価値の大転換)のただ中に身を置いていることを忘れてはならないと思います。

 

 次に「市政への市民参画ガイドライン」によると、市民参画の方法としては①意向調査、②パブリックコメント、③意見交換会、④WSの実施、⑤審議会その他の付属機関における委員の公募―などのほか、「市民会議の開催」を挙げています。ガイドラインはこれについて、「計画等の策定過程で市民の意見や考え方を反映するための会議を組織し、市民と市の執行機関又は市民同士が自由な論議により、意見等を取りまとめ提案する方法をいいます」と定めています。

 

 ところが、市当局が「広報はなまき」(10月1日付)で公表した工程表によると、新花巻図書館の基本計画の策定に参画するのは、花巻市立図書館協議会での審議、一般から意見を募るパブリックコメント、市民説明会の3方法に限定され、WSは除外されています。一方で、今回のWSの開催や議会側の図書館特別委員会の設置などによって、図書館に対する市民の関心が高まり、すでに「考える会」などの市民団体が活動しています。こうした動きは今後も広がっていくことが予想されます。したがって、今後の計画策定の段階ではこうした自発的な市民会議も参画メンバ-に加えるよう担当課と検討していただきたいということを申し上げておきます。

 

 

 

(写真は建設場所についての意見発表をする参加者=10月25日、花巻市葛の市交流会館で)

 

 

 

 

《追記ー1》~一人は賑やか

 

一人でいるとき淋(さび)しいやつが
二人寄ったら なお淋しい

おおぜい寄ったなら
だ だ だ だ だっと 堕落だな

 

 哲学者の鷲田清一さんは「折々のことば」(25日付「朝日新聞」)の中で、詩人の茨木のり子の詩「一人は賑(にぎ)やか」の一節を引用して、こう書いている。この日のWSでの自分の姿を重ね合わせ、思わず、苦笑いしてしまった。「もたれあうのはいや。一人でいる時こそうんと華やいでいたい。孤独は一人ぼっちとは違う。『夢がぱちぱち はぜてくる/よからぬ思いも 湧いてくる』と、詩人は詠(うた)う。馴(な)れあうのでなく、自分を囲うのでもなく、自分の輪郭をじりじり焼いてみよ、ということか。きりっとした孤独、さんざめく孤独」

 

 というわけで、私自身はちっとも淋しくはない。本当に淋しいのは実は、”裸の王様”たる「上田東一」市長その人なのかもしれない。

 

 

 

《追記―2》~賢治とダルマ靴

 

 地元花巻在住の宮沢賢治研究家、鈴木守さんのブログ「みちのくの山野草」(25日付)の追跡ルポー「これが賢治も履いていたダルマ靴」に目を吸い寄せられた。その執念のルポの最後を鈴木さんはユ-モアたっぷりにこう結んでいる。「今の時代、ダルマ靴を売ってくれるお店はおそらくここ以外にないと思われます。つきましては、早い者勝ちです、特に宮澤賢治関連の資料を集めている研究者や組織に、『どうぞお買い求め下さい、一次情報になりますので』と御案内申し上げます」―。当時は高級品だったというこのダルマ靴をつっかけて、花巻城址の「東公園」を散策する賢治の姿が目に去来した。この地に新花巻図書館を建てたいという思いが一層、強まった。

 

 

 

 

 

 

2020.10.25:masuko:[ヒカリノミチ通信について]

この記事へのコメントはこちら

※このコメントを編集・削除するためのパスワードです。
※半角英数字4文字で入力して下さい。記号は使用できません。