「日米地位協定」の抜本見直し…一転して採択、反対は公明のみ。もう後戻りはできない

  • 「日米地位協定」の抜本見直し…一転して採択、反対は公明のみ。もう後戻りはできない

 

 花巻市議会3月定例会に提出していた「日米地位協定」の抜本見直しを求める陳情(2月18日付当ブログ参照)の審査が8日、総務常任委員会(鎌田幸也委員長ら9人)で行われ、公明党所属議員を除く7人(委員長を除く)の賛成で採択された。今月19日に開催される本会議最終日で議員全員の賛否を問う。可決されれば、内閣総理大臣や関係大臣に意見書を送付することになる。3年前、同趣旨の請願が出されたが、この時は「安全保障などの外交問題は地方議会の権限外」などの理由で、全会一致で不採択になった経緯がある。手の平返しのような今回の採択劇だったが、“開かずのトビラ”と化していた「沖縄」問題に一歩、踏み込んだという点では評価したい。今後の議論の活発化を期待したい。

 

 私は冒頭の意見陳述の中で、次のように述べた。①当花巻市は将来都市像として「イ-ハト-ブはなまき」を掲げ、“弱者”に寄り添うという賢治精神をまちづくりの基本に据えている。その意味では、受難の歴史を背負い続けてきた沖縄とは最も近い位置関係にある、②23年前の1996年、日米地位協定の見直しと米軍基地の整理・縮小を求める県民投票が県単位では全国で初めて実施され、89%以上の県民が賛成した。これが沖縄の「民意」の原点だ、③この時の県民投票のきっかけは前年に起きた米兵3人による少女暴行事件。しかし、公務外の犯罪でも犯人が米軍基地内にいる場合は起訴するまで身柄の引き渡しを要求できない―など日米地位協定の治外法権性がこの時に浮き彫りになった、④本土を含めた国民全体の安全を担保する役割の大半が基地が偏在する沖縄に押し付けられている。この問題は”受益者負担”という観点からも、日本人全体で考えるべきではないか、⑤オスプレイ(垂直離着陸輸送機)の飛行訓練は岩手県を含む東北地方でも展開されており、低空飛行による騒音被害が出ている…などなど

 

 審理の中で委員からは「権限外という理由で前回の請願を不採択にしたのは認識の間違い。地方自治法第99条で、意見書の提出など地方議会の役割を規定されている」、「全国市議会議長会や全国知事会なども見直しを提言している。辺野古埋め立ての賛否を問う県民投票でも7割以上が反対を表明した。こうした民意の高まりを無視できない」―などの意見が相次ぎ、前回の請願不採択時とは雰囲気が様変わりした。しかし「安保と地位協定はリンクしないことに留意すべきだ」などとトンチンカンな意見も。「日米安保条約」第6条は以下のように規定している。

 

「日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、アメリカ合衆国は、その陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区域を使用することを許される。前記の施設及び区域の使用並びに日本国における合衆国軍隊の地位は、千九百五十二年二月二十八日に東京で署名された日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定(改正を含む。)に代わる別個の協定及び合意される他の取極により規律される」―つまりはリンクしないどころか、安保と地位協定はまさに表裏一体だという基本を理解できていない議員がいることに驚いた。

 

 一方、公明党の「日米地位協定検討ワ-キングチ-ム」は昨年夏、「米軍機墜落事故の際の日本側の立ち入り権」、「犯罪時の起訴前の身柄の引き渡し」、「米軍訓練への住民意見の反映」―など日米地位協定のネックの解消を政府に申し入れるなど前向きな姿勢に転じた。ところが、この日の審査で不採択に回った同党所属の2年生市議は「(外交に関わる問題が)地方議会の権限か否かという判断がまだ、つきかねている。それに私は沖縄に行ったことはないし…」と支離滅裂な弁明を繰り返した。日米地位協定どころか、地方自治のイロハもわかっていないらしい。「3年前、こんな当たり前の請願を何で否決したのか。そこが最大のナゾ」と鎌田委員長がぼそっと、つぶやいて立ち去った。その言やよし。でも、前回の請願採決では退席した一人を除いて、委員長を含む当時の議員は全員が反対に回ったんじゃなかったかなぁ…

 

 いずれ、政府側が一方的に主張するだけで、法的な根拠が一切ない(外交、防衛問題などにおける)いわゆる、”専権(管)事項”論の呪縛(じゅばく)からやっと解放され、憲法が定める「地方自治の本旨」に回帰したという意味では、今回の採択の意義は大きい。今後、沖縄に向き合う際の道すじが少しだけでも見えてきたようである。

 

 

(写真は米兵による集団暴行事件に抗議する県民総決起大会。8万5千人の県民が集まった=1995年10月21日、沖縄県宜野湾市の海浜公園で。インタ-ネット上に公開の写真から)

 

 

 

《追記》~安保条約と地位協定のパラドックス

 

 本文で触れたように「日米地位協定」は日米安保条約第6条の規定に基づいて合意された協定である。一方、前条の第5条では米国の日本防衛義務について、こう定めている各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従つて共通の危険に対処するように行動することを宣言する」

 

 歴代の沖縄県知事は一貫して、日米安保条約を「容認」する態度を取り続けている。また、各種世論調査でも日本国民の約8割が「日本の安全にとって、安保は必要だ」と回答している。だとしたら、「安全を担保する米軍基地の約7割が沖縄に偏在するのは不公平だ。日本の安全保障は日本人全体で考えるべき問題ではないのか」―というのが沖縄の民意の原点にある。たとえば、安保破棄・全基地撤去を掲げてきた日本共産党は最近になって「安保破棄」の旗を降ろし、こんな論調に転じている。

 

 「日米安保条約によって、日本が米軍に『基地提供義務』を負うことと、米軍が基地を自由使用し、日本側の立ち入りも認めないということとは全く別の問題です。問われているのは、日米地位協定による日本の主権の侵害を放置していいかどうかです。…日米地位協定の改定は独立した主権国家として、当たり前の要求です。政府に抜本改正を迫る世論と運動を大きく広げる時です」(2018年11月13日付「しんぶん赤旗」)―。約9割の沖縄県民が日米地位協定の見直しを求めた県民投票から23年。この間、革新側を含む本土の私たちはこの訴えに「無視・黙殺」を決め込んできたことになる。もう後戻りはできないことを肝に銘じたい。

 

 

 

2019.03.08:masuko:[ヒカリノミチ通信について]

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