日本一の無法地帯…辺野古から(下)

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 妻の弔いの旅から戻った翌日の12月14日、国は予告通りに「辺野古」新基地(米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設)の建設予定地に土砂の投入を強行した。当ブログ12月6日(上)と7日付(中)参照。

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 米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古の新基地建設で、沖縄防衛局は14日午前11時、辺野古崎付近の護岸で囲んだ埋め立て予定区域への土砂の投入を開始した。玉城デニ-知事は埋め立て事業の手続きに違法性があるとして12日に防衛局に行政指導していたが、国は県の工事中止の求めには応じず、事前に通知していた14日の土砂投入を強行した。2017年4月に海上での護岸建設に着手して以降、埋め立て用の土砂が投入されるのは初めてで、新基地建設は新たな建設段階に入る。

 だが、9月の県知事選で辺野古新基地建設反対を掲げた玉城氏が過去最多得票で当選した選挙結果を顧みない政府与党の姿勢や、民間港を使って埋め立て土砂の搬出を急ぐ強引な手法に、世論の反発が強まっている。

 

 玉城知事は、今後想定される大浦湾側の地盤改良に伴う設計変更の承認権限も行使しながら新基地建設阻止に取り組む構えを崩しておらず、埋め立て作業が国の計画通り進むかは依然として見通せない。14日は午前8時過ぎから現場での作業が始まり、午前9時に土砂を積んだ台船がキャンプ・シュワブ沿岸のK9護岸に接岸した。土砂をダンプカ-に積み替えて辺野古崎付近まで運び、ダンプの荷台から下ろされた土砂をブルド-ザ-が海に押し入れた。玉城知事は14日朝、県庁登庁時に「予定ありきで県民の民意を無視して進められる工事に強い憤りを禁じ得ない」と記者団に語り、対応の協議に入った。(12月14日付「琉球新報」電子版)

 

 

(写真は土砂投入を知らせる号外と機動隊ともみ合う反対派住民=名護市辺野古の米軍キャンプシュワブ前で。いずれも同日付「琉球新報」から)

 

 

《追記-1》~山城裁判

 

 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設への抗議活動に伴い、威力業務妨害や器物損壊などの罪に問われた反対派リーダーで沖縄平和運動センター議長、山城博治被告(66)の控訴審判決で、福岡高裁那覇支部(大久保正道裁判長)は13日、懲役2年、執行猶予3年とした一審那覇地裁判決を支持し、被告の控訴を棄却した。

 

 弁護側は、辺野古の米軍キャンプ・シュワブの工事用車両出入り口付近にブロックを積み上げた行為について「抗議の意思を示した。表現の自由の範囲内で、威力業務妨害罪の適用は違憲だ」と主張。有刺鉄線をペンチで切った器物損壊罪を除き、無罪を求めていた。(12月13日付「共同通信」配信)

 

 

《追記—2》~絶滅危惧種

 

 政府が米軍普天間飛行場の移設のために約160ヘクタ-ルを埋め立てようとしている名護市辺野古・大浦湾の海には、多種多様なサンゴや国の天然記念物のジュゴンなどの絶滅危惧種を含む多様な生物が生息している。土砂の投入によって豊かな自然環境が失われ、生態系に大きな影響を及ぼすことが懸念される。

 

 沖縄本島東海岸にある辺野古沿岸部は、これまで周囲で大規模な開発もなく、手つかずの自然が残る。現場海域での防衛省の調査では、5806種の生物が確認され、うち262種が絶滅危惧種だった。新種の発見も相次いでいる。県によると、生物の種類は世界自然遺産に登録された屋久島(鹿児島県、約4600種)や小笠原諸島(東京都、約4400種)よりも多い。 既に護岸で囲われた米軍キャンプ・シュワブ南側の海域は水深の浅いリーフ(サンゴ礁)で、沖縄本島周辺で最大規模の海草藻場が広がる。ジュゴンやウミガメの貴重な餌場となるほか、海草の間や砂地に多くの生物が暮らしている。シュワブ東側の大浦湾にはハマサンゴやアオサンゴなどの群集が複数ある。

 

 防衛省は埋め立て予定海域内にある希少なサンゴを他の地域に移植する計画だが、海域外のサンゴの生息にも潮流の変化などが影響を及ぼす可能性がある。海域での調査を続ける日本自然保護協会の安部真理子さん(52)は「護岸工事だけでも生物には十分な脅威だが、回収が困難な土砂の投入は自然環境に不可逆的な影響をもたらす。埋め立てが進めば地形が一変し、生態系が損なわれ、辺野古の海は多様性を失う」と警鐘を鳴らす。(12月14日付「毎日新聞」電子版)

 

 

《追記―3》~第4の琉球処分

 

 政府は、名護市辺野古沿岸に米海兵隊の新基地を造るため埋め立て土砂を投入した。昨年4月の護岸着工以来、工事を進める政府の姿勢は前のめりだ。9月の知事選で新基地に反対する玉城デニー知事誕生後わずか約1カ月後に工事を再開し、国と県の集中協議中も作業を進めた。手続きの不備を県に指摘されても工事を強行し土砂を投入したのは、基地建設を早く既成事実化したいからだ。県民の諦めを誘い、辺野古埋め立ての是非を問う県民投票に影響を与えたり、予想される裁判を有利に運ぼうとしたりする狙いが透けて見える。
 

 辺野古の問題の源流は1995年の少女乱暴事件にさかのぼる。大規模な県民大会など事件への抗議のうねりが沖縄の負担軽減に向けて日米を突き動かし、米軍普天間飛行場の返還合意につながった。ところが返還は県内移設が条件であるため曲折をたどる。関係した歴代の知事は県内移設の是非に揺れ、容認の立場でも、使用期限や施設計画の内容などを巡り政府と対立する局面が何度もあった。
 

 5年前、県外移設を主張していた仲井真弘多前知事が一転、埋め立てを承認したことで県民の多くが反発。辺野古移設反対を掲げる翁長県政が誕生し玉城県政に引き継がれた。県内の国会議員や首長の選挙でも辺野古移設反対の民意が示されている。今年の宜野湾、名護の両市長選では辺野古新基地に反対する候補者が敗れたものの、勝った候補はいずれも移設の是非を明言せず、両市民の民意は必ずしも容認とは言えない。本紙世論調査でも毎回、7割前後が新基地建設反対の意思を示している。
 

 そもそも辺野古新基地には現行の普天間飛行場にはない軍港や弾薬庫が整備される。基地機能の強化であり、負担軽減に逆行する。これに反対だというのが沖縄の民意だ。その民意を無視した土砂投入は暴挙と言わざるを得ない。歴史的に見れば、軍隊で脅して琉球王国をつぶし、沖縄を「南の関門」と位置付けた1879年の琉球併合(「琉球処分」)とも重なる。日本から切り離し米国統治下に置いた1952年のサンフランシスコ講和条約発効、県民の意に反し広大な米軍基地が残ったままの日本復帰はそれぞれ第2、第3の「琉球処分」と呼ばれてきた。今回は、いわば第4の「琉球処分」の強行である。
 

 歴史から見えるのは、政府が沖縄の人々の意思を尊重せず、「国益」や国策の名の下で沖縄を国防の道具にする手法、いわゆる植民地主義だ。土砂が投入された12月14日は、4・28などと同様に「屈辱の日」として県民の記憶に深く刻まれるに違いない。だが沖縄の人々は決して諦めないだろう。自己決定権という人間として当然の権利を侵害され続けているからだ。(12月15日付「琉球新報」社説)

 

 

《追記―4》~沖縄に寄り添うということ

 

 「胸が張り裂けそうだ」。名護市の米軍キャンプ・シュワブゲ-ト前で土砂投入を警戒していた男性は、怒りと悔しさで声を震わせた。辺野古新基地建設を巡り、防衛省沖縄防衛局は14日午前、土砂投入を強行した。海上では最大50隻のカヌ-隊が繰り出したが、土砂を積み込んだ台船と、土砂投入場所が制限区域内にあるため作業を止めることができない。

 護岸に横付けされた台船の土砂が基地内に入っていたダンプカ-に移された。約2キロ離れた埋め立て予定海域南側まで運び、次々投入する。ゲ-ト前には故翁長雄志前知事夫人の樹子さんも姿をみせた。樹子さんは以前、「万策尽きたら夫婦で一緒に座り込むことを約束している」と語ったことがある。しかし夫の翁長前知事は埋め立て承認の撤回を指示した後、8月8日に亡くなった。

 

 「きょうは翁長も県民と一緒にいます。負けちゃいけないという気持ちです」。沖縄戦当時、キャンプ・シュワブには「大浦崎収容所」が設置され、住民約2万5千人が強制収容された。マラリアなどが発生し逃げることもできないため400人近くが亡くなったといわれる。まだ遺骨はあるはずだと、ガマフヤ-代表の具志堅隆松さんはいう。シュワブは、日本本土に駐留していた海兵隊を受け入れるため1950年代に建設された基地だ。沖合の辺野古・大浦湾は、サンゴ群集や海藻藻場など生物多様性に富む。そんな場所を埋め立てて新基地を建設するというのは沖縄の歴史と自然、自治を無視した蛮行というほかない。

 

 日米合意では米軍普天間飛行場の返還は「2022年度またはその後」となっている。岩屋毅防衛相は14日、合意通りの返還が「難しい」と初めて認めた。県は新基地の運用開始まで13年かかるとみている。普天間の危険性除去は一刻を争う。このような状況で辺野古にこだわるのは、沖縄の「目に見える負担軽減」、普天間の「一日も早い危険性除去」、日米同盟の「安定維持」のいずれの面から見ても、あまりにも問題が多すぎる。政府は「辺野古が唯一」と繰り返すが、何の説明もなく呪文のようにそれだけを唱えるのは説明責任を放棄した脅しというしかない。県と政府は1カ月間の集中協議をしたが、この間も政府は工事を止めなかった。県の中止要請を聞きながし、留意事項に定められた「事前協議」には応じず強行の連続だ。

 

 県が埋め立て承認を撤回したことに対し沖縄防衛局は国民の権利救済を目的とした行政不服審査法を利用し、撤回の効力停止を申し立てた。国土交通相がこれを認めたことで工事が再開されたが、法の趣旨をねじ曲げる奇策というほかない。土砂投入は来年2月24日の県民投票をにらんで県民にあきらめ感を植え付けるのが狙いだろう。ここには安倍政権が口を開くたびに強調する「沖縄に寄り添う」姿はみじんも感じられない。(12月15日付「沖縄タイムス」社説)

 

 

《追記―5》~芥川賞作家、目取真俊さんのブログ「海鳴りの島から」

 

 15日(土)はカヌ-25艇と抗議船2隻で、辺野古岬付近と大浦湾の二手に分かれ抗議行動を行った。辺野古岬付近にカヌ-チ-ムが到着した午前9時頃には、すでにN3護岸にダンプカ-がやってきて、土砂の投入が行われていた。N3護岸では次々にダンプカ-がやってきて、赤土混じりの岩ずりを下ろしていった。2台続けてくることもあり、1台が下ろして次に下ろすまでに平均して1分もかからない。ダンプカ-が荷台を傾ける位置も、N3護岸上から中に寄っている。5名のカヌーメンバ-がフロ-トを越えて辺野古岬を目指し、現場近くから抗議の声を上げた。ほかのメンバ-もフロ-ト沿いで抗議と監視行動を午前中行った。

 

 前日の初投入から続き、かなりのペ―スで土砂を投入してきたので、午前10時頃にはランプウェイ台船が空になり、N3護岸からの土砂の投入はいったん終了した。しかし、すぐに次の投入に向けた準備が進められた。午前11時20分頃、空になったランプウェイ台船が、タグボ-トに曳航されてK9護岸から離れ始めた。その前に現場にいたカヌ-8艇がフロ-トを越えて抗議しており、さらに辺野古岬付近から移動してきたカヌ-4艇が続いた。

 

 昼食後、午後1時過ぎから空のランプウェイ台船のそばに、岩ずりを積んだガット船・第百三十六伊勢丸が近づき始めた。同船に載っている岩ずりは、12月3日に名護市安和区の琉球セメントで最初に積み込まれたものだ。あらかじめ構内に山積みになっていたもので、沖縄県の赤土等流出防止条例に違反すると県が指摘したものだ。同船への土砂積み込みも、琉球セメントの桟橋の完了届が提出される前に行われており、公共用材管理規則に違反している。いくつもの違法行為を犯して日本政府・沖縄防衛局が積み込みを強行したものであり、本来は安和区の琉球セメント構内に戻すべきものだ。このような違法土砂を海に投入することは許されない。

 

 フロ-トからかなりの距離があったが、違法土砂の積み込みに対し、カヌ-12艇がフロ-トを越えて抗議した。海保は不意を突かれて海に飛び込む保安官が足りず、ゴムボ-トで直接カヌ-を止める危険行為がなされた。高速で走り回ってカヌ-の前をふさぐのは、動力船としてあるまじき行為だ。午後、積み替えが行われた岩ずりは、週明けの17日(月)に②-1区に投入されると思われる。違法を承知で埋め立て工事を進める安倍政権が、「法治国家」だの「沖縄の負担軽減」などとよく言えたものだ。(12月16日付)

 

 

 

 

 

 

 

2018.12.14:masuko:[ヒカリノミチ通信について]

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