現代「奇人伝」

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 民進党(旧民主党)の分裂の遠因をつくったと言われ、“A級戦犯”とか“裏切り者”の烙印を押されたあの人の姿が「国難突破解散」翌日の9月29日、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の移設先とされる名護市辺野古のキャンプ・シュワブゲ-ト前にあった。鳩山由紀夫・元首相である。「アベ政治を許さない」と書かれたプラカ-ドを手にしながら、元首相は言った。「日本という国がガタガタ崩れていく現場をゲ-ト前で見ることができた。米国の言うままに動かされる、まさに現在の日本の政治の姿だ。軍事基地は日本から撤去しなければならないのに、新基地建設を進める日本政府はおかしい」(同日付「琉球新報」電子版)

 

 「最低でも県外」―。移設先をめぐってこう発言した元首相が当時野党だった自民党や官僚包囲網の中で、この公約を撤回。辞任に追い込まれたのは平成22年6月のことである。あれからもう7年以上がたつ。「何をいまさら」というバッシングも寄せられているらしい。だが…。政治家の肩書を捨て、「ル-ピ-」(宇宙人)と揶揄(やゆ)されたこの人に感化されたのは実は私自身だったのかもしれない。

 

 元首相の辞任直後に行われた花巻市議会議員選挙で、私は辛うじて議席を手に入れた。本来なら引退年齢に相当する70歳での初当選である。「最低でも県外」という言葉に凝縮された沖縄の苦悩を私はその時、初めて突き付けられたように思った。初登壇となった平成22年9月定例会で、私は米軍基地問題を取り上げた。「普天間…」と口にした途端、議員席から驚きにも似たどよめきが起こった。次の瞬間、「ル-ル違反だ」「なんで普天間なのだ」という野次と怒号が議場内に飛び交った。約40分の議事中断の末、「事前通告にない質問は会議規則に抵触する」として、全会一致で「厳重注意」処分が言い渡された。

 

 今回の解散劇がきっかけとなった「新党」乱立騒動のさ中、各党に対するツイッタ-のフォロワ-数(読者数)に注目が集まっている。今月2日に結党宣言した立憲民主党が13万2千と自民党を抜いてトップに躍り出た。民進党の約5倍、希望の党の約30倍に上る(5日現在)。その一方で「ただの人」である鳩山元首相のそれは約74万に達している。当然のことながら、世間の話題には上らないが、沖縄では元首相を足蹴(あしげ)にする発言はほとんど聞かない。むしろ、「米軍基地の実態をヤマト(本土)に知らせるきっかけをつくってくれた」という声の方が多い。私自身その後、「議会の品位を汚した」という理由で「戒告」処分を受ける羽目になったが、ぶれないで「沖縄」問題に取り組んでこれたのも元首相の「勇気ある発言」に支えられた部分が多分にある。

 

  もう一人、「国難突破解散」の直接の引き金をつくったのは、「加計」疑惑の突破口を開いた文部科学省の前川喜平・前事務次官である。冒頭解散が「モリカケ疑惑」を隠すためだったと言われるゆえんである。最近、前次官の愛読書が宮沢賢治であることを知った。『銀河鉄道の夜』を繰り返し読んだという元次官はインタビュ-でこう語っている。

 

 「ここ(『農民芸術概論綱要』)に書かれているのは個人の尊厳だが、それだけじゃない。『人間は自分一人だけで生きているのではない』という賢治に共感します。他人が悲しんでいると悲しくなる。放っておけない気持ちになるんです」(9月3日付「岩手日報」)。前川前次官が夜間中学への支援や不登校の子、障がい者、性的少数者(LGBT)などへ向けるまなざしの原点を見る思いがする。「世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない」という有名な一文で知られる長文の概論綱要の全文を前次官はそらんじているという。

 

  思えば、宮沢賢治という人も周囲から奇人・変人扱いされ、石を投げつけられるなどの”集団リンチ”を受けた苦い経験を持っている。没後大分たってから、その成果がやっと世界的に認められたということであり、逆に言えば、その真価が認められるにはそれだけの時間を要したということである。過去をケロッと忘れ、いまや「賢治賛歌」が大手を振っている。現代版「奇人伝」に名を連ねることになった鳩山、前川両氏が認知されるのにはさらなる時間が必要になろう。にもかかわらず、その時代が生み落とす“奇人変人”たちは後世の歴史にとっては掛けがえのないレガシ-(遺産)でもある。賢治の物語世界にどっぷりとつかってきた同郷人として、この先達に心からの謝意を述べたいと思う。

(写真は機動隊の装甲車を背に座り込む鳩山元首相=9月29日、沖縄県名護市の米軍キャンプシュワブゲ-ト前で。琉球新報電子版から)

 

《追記》

 核兵器禁止条約の成立に貢献した「核兵器廃絶国際キャンペ-ン」(ICAN=アイキャン)が2017年のノ-ベル平和賞に。「ヒロシマ・ナガサキ」の受難がいまやっと、実りの第一歩を踏み出したことを喜びたい。「あの日」の記憶を被爆詩人、原民喜の「原爆小景」から―。

 

コレガ人間ナノデス
原子爆弾ニ依ル変化ヲゴラン下サイ
肉体ガ恐ロシク膨脹シ
男モ女モスベテ一ツノ型ニカヘル
オオ ソノ真黒焦ゲノ滅茶苦茶ノ
爛(ただ)レタ顔ノムクンダ唇カラ洩(も)レテ来ル声ハ
「助ケテ下サイ」
ト カ細イ 静カナ言葉
コレガ コレガ人間ナノデス
人間ノ顔ナノデス(後略)

 


 


 

 

 

2017.10.07:masuko:[身辺報告]

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