武士道とは何か!?「もり・かけ劇場」、ヤマ場へ

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 「おのれの良心を主君の気まぐれや酔狂、思いつきなどの犠牲(いけにえ)にする者に対しては、武士道の評価はきわめて厳しかった。そのような者は、『佞臣(ねいしん)』すなわち無節操なへつらいをもって主君の機嫌をとる者、あるいは『寵臣(ちょうしん)』すなわち奴隷のごとき追従の手段を弄(ろう)して主君の意を迎えようとする者として軽蔑された」(奈良本辰也訳『武士道』)―。今年上半期、ロングランを更新続けている「もり・かけ劇場」(森友・加計学園)の演目は衆目の一致するところ「武士道とは何か」であろうか。作演出は言わずと知れた、国際連盟事務次長を務めた当地ゆかりの思想家、新渡戸稲造である。

 舞台の主役は前川喜平・前文部科学事務次官と今月5日付で国税庁長官に“栄転”した佐川宣寿・前財務省理財局長である。10日、衆参両院の閉会中審査が行われたが、出席したのは前川前事務次官だけで、もう一人の主役である佐川前理財局長の姿はなかった。「獣医学部新設に関わるプロセスは不透明で不公正であった。『最初から加計(かけ)学園ありき』で進められ、背後に官邸の意向が働いていたと考えている。行政がゆがめられたと思う」―。背筋をスット伸ばした前川さんは従来の主張を理路整然と述べた。新渡戸の「武士道」、ここにあり―を思わせる弁舌である。次官の職を辞した今年1月20日、前川さんは全職員にメ—ルを送った。

 「特に、弱い立場、つらい境遇にある人たちに手を差し伸べることは、行政官の第一の使命だと思います。ひとつお願いがあります。私たちの職場にも少なからずいるであろうLGBT(性的少数者)の当事者、セクシュアル・マイノリティの人たちへの理解と支援です。無理解や偏見にさらされているLGBT当事者の方々の息苦しさを、少しでも和らげられるよう願っています」(『文芸春秋』7月号)―。さらに、理解者や支援者、仲間を意味する「ALLY」(アライ)のステッカ-を自らデザインし、職場内で配布したことも同書で明らかにした。

 「あったことをなかったことにすることはできない」と“宣戦布告”した後の記者会見で、前川さんは「個人の尊厳、国民主権」と大書したボ-ドを掲げた。この日の参考人審査は結局、「記憶にない」という答弁者側の繰り返しで、平行線のまま終わった。しかし、中央官庁と地方自治体を問わず、よい意味でいわゆる“お役人”の矩(のり)を越えた有為の人材を私は寡聞(かぶん)にして、前川さん以外に知らない。

 もう一人の主役―「知らぬ存ぜぬ」を押し通し、まるで“敵前逃亡”さながら、第48代国税庁長官に就任した佐川さんには多言は必要あるまい。ただ、この人が原発事故の惨禍に見舞われた福島出身だということを知り、無念の極みである。「武士道は私たちの良心を主君や国王の奴隷として売り渡せとは命じなかった」と新渡戸は断じている。佞臣と寵臣を文字通り、地で行った新国税庁長官にはこんな送別の辞がピッタリである。「情けは人のためならず」(7月7日付「朝日新聞」かたえくぼ欄)。同じ紙面には「国税庁長官室に隠蔽(いんぺい)す」という川柳も載っていた。一方、「もり劇場」の陰の主役である学校法人「森友学園」の籠池(かごいけ)泰典・前理事長はこの日、大阪府議会の臨時議会に参考人として出席、小学校の設置問題をめぐる質疑に応じた。

 最後に郷土の偉人とされる新渡戸稲造にひと言―。うちにあっての「武士道」論については特段の異論はない。ただ、外に向かっては朝鮮や台湾、アイヌ民族などへの植民地主義を主張した側面があったことを付言しておきたい。

(写真は毅然とした表情で質問に答える前川さん=10日午後、国会内で。NHKテレビから)

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 終日、胸がふさがれる気分で過ごした1日だったが、そんな中で嬉しい発見も…。6月4日付の当ブログ(「沖縄を叫ぶ」彫刻家)で紹介した金城実さんを詠った短歌が本日(10日)付の朝日歌壇で、歌人の佐佐木幸綱、馬場あき子両氏が☆しるし。馬場評「金城氏は『沖縄を彫る』というテ-マで精力的に活動している彫刻家だ。結句に作者の共鳴感がみえる」

●沖縄を叫びつづけて鑿(のみ)を持つ金城実の気迫さらなり―(三鷹市・山室咲子)




2017.07.10:masuko:[身辺報告]

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