地方創生の光と影

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 「国の思惑や本音を逆手にとって、地方の発信力を強めていくことが本当の意味の地方創生につながるのでは…」―。花巻市議会の市政調査会が主催した講演会で、花巻市出身(花巻北高・早稲田大学)のジャ-ナリスト、安藤毅さん(46)が「安倍政権の地方戦略を読む」と題してこう力説した。安藤さんは日本経済新聞の政治部や経済部を経て、現在は同社発行の経済誌「日経ビジネス」の編集委員。政権中枢部や霞が関への取材経験も豊かで、普段は表ざたにならない「ウラ話」に議員たちは身を乗り出して聞き入った。

 安藤さんは鳴り物入りで登場した「地方創生」について、「官邸や霞が関の関心はすでに『一億総活躍』に移りつつある。地方へ大盤振る舞いを続けるのはもう限界。国の支援メニュ-もほぼ出そろい、あとは地域間の淘汰(勝ち組と負け組)に任せるだけではないか」と話した。一方で「GDP600兆円」「希望出生率1・8」「介護離職ゼロ」―を掲げた、いわゆる「一億総活躍社会」の実現については「これは突然、首相周辺から浮上した話。側近中の側近である菅官房長官も事前に知らされていなかった」と内輪話も披露した。

 このような安倍内閣を安藤さんは「目標設定内閣」と位置付け、その危うさをこう指摘した。「市場に期待を持たせ、常に何かをやっていると思わせる、いわば“空気戦略”が特徴。アベノミクスのトリプルダウンを受け、夏の参院選挙を想定した起死回生の戦略こそが『一億総活躍』。霞が関で一時、幅を利かせていた、各省庁の混成部隊だった(地方)創生本部事務局も今では退潮ム-ドになっている」。石破地方創生大臣は最近、こう断言したという。「先駆的な事例に重点的に配分する『トップランナ-方式』を取る」。この言葉の中にも地方の一律の底上げはもうやめるというメッセ-ジが含まれている。

 「外部人材の活用とカキや塩のブランド化などにより、人口の2割が若い移住者」(島根県海士町)、「葉っぱビジネスの成功による健康長寿の町」(徳島県上勝町)、「IT先進地域として、ベンチャ-企業が参集」(同県神山町)…。地方創生の成功例とされる小自治体の共通項として、安藤さんは①地域内の危機意識の共有、②卓越したリ-ダ-、地域内外のよそ者・若者・知恵者の存在、③地域資源を生かした方策への政策特化、④人脈・情報集中・スピ-ドを重視した「リスクを取っての行動」、⑤国と(地方の双方にとって利益のある)「win-win」の関係の構築を挙げた。

 さらに、質疑の中で安藤さんは「中央目線の国(の役人)の側は正直言って、地方創生へのアイデアは持ち合わせていない。かといって、地方発の知恵をうまく吸い上げるためのシステムも機能しているとは言えない。それでいて、役人の習性として任期中に実績を上げるために”お墨付け”を与えたがる。この辺の呼吸が大変難しい。ミイラ取りがミイラにならないためにも『花巻ならでは』の発信力を強めていく必要があるのではないか」と締めくくった。

 「行政がやりっぱなし、民間が頼りっぱなし、市民が無関心」―挑発的な言辞で知られる石破大臣のこの「逆三位一体」発言を逆手にとって、上田市政のまちづくり(地方創生)が「勝ち組」に名乗りを上げ、さらにトップランナ-に登りつめることができるのか。今年はその成果が試される年になりそうである。


(写真は熱弁を振るう安藤さん=29日、花巻市内のホテルで)
2016.01.31:masuko:[議会報告]

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