「エルトゥ-ルル号」からの恩返しーゆいっこ花巻が受賞

  • 「エルトゥ-ルル号」からの恩返しーゆいっこ花巻が受賞

 「エルトゥ-ルル号海難事故」(1890年9月16日)と「テヘラン邦人救出劇(1985年3月19日)―。この二つの出来事を軸にした日本・トルコ合作の映画「海難1890」(田中光敏監督)が静かな感動の輪を広げている。一方、東日本大震災をきっかけにNPO法人日本トルコ文化交流会(ウグル・ユジェル理事長)が2年前に創設した「エルトゥ-ルル号からの恩返し―『日本復興の光大賞16』」の特別賞に花巻市内の被災者支援団体「いわてゆいっこ花巻」(大桐啓三代表)が選ばれた。震災から丸5年目を迎える中での朗報に被災者を支えてきたボランティアの喜びもひとしおだ。

 今から約125年前、オスマン帝国(現トルコ)の軍艦「エルトゥ-ルル号」が本州最南端の和歌山県串本町沖で台風に巻き込まれて座礁・爆発。乗組員587人が犠牲となり、生存者はわずか69人という大惨事になった。親善訪日使節団が明治天皇に謁見した帰路の出来事で、村人たちは総出で救助作業に当たり、全国からも義援金が寄せられた。それから時を経ること95年、今度はイラン・イラク戦争のさ中、イラクのフセイン大統領(当時)の「航空機無差別攻撃」宣言でテヘラン在住の日本人が孤立。トルコ側が急きょ、救援機を提供し、全員が脱出に成功した。2つの史実をつないだキ-ワ-ドは「助けを求める者に、手を」―。

 東日本大震災が発生した5年前、トルコの救助隊は3週間以上被災地に滞在し、日本トルコ文化交流会も炊き出しや被災地の子どもたちにトルコ旅行をプレゼントするなどの活動を続けた。「日本復興の光大賞」は震災の記憶が風化する中、遠い昔の海難事故の恩返しと1日も早い復興を願って創設され、今年が2回目。被災自治体や民間のNPO法人、ボランティア団体など37団体の中から大賞に1団体、特別賞に3団体が選ばれた。審査委員長はジャ-ナリストの池上彰さんで、審査委員には女優の宮本信子さんや東京大学大学院教授の藤原帰一さんらが名前を連ねている。3月3日に東京・明治記念館で授賞式がある。

 「いわてゆいっこ花巻」は震災の3日後に市民有志が立ち上げた。以来、救援物資の支給や炊き出し、お茶っこ会、内陸避難者に対する傾聴活動、同郷会の組織化、農作業の場作り、温泉浴、ハイキングなど多様な支援活動を続け、現在に至っている。今後は被災者だけではなく、高齢者や要介護者、認知症患者、子育て世帯など格差が大きくなる一方の、いわゆる”社会的弱者”にまで支援の輪を広げたいという。そのための「誰もが利用できる地域の居場所の創造」が喫緊の課題だとしている。設立趣意書にはこう記されている。

 「岩手・花巻が生んだ宮沢賢治は人間のおごりを戒め、『いのち』のありようを見続けました。『遠野物語』は人間も動物も植物も…つまり森羅万象(しんらばんしょう)はすべてがつながっていることを教えてくれました。この「結いの精神」(ゆいっこ)はひと言でいえば『他人の痛み』を自分自身のものとして受け入れるということだと思います」。9千キロも離れた二つの国を結び付けた“きずな”は言葉も通じない人々のこころ―「真心」だった。今回の受賞について、大桐代表は「これは賢治精神にも通じると思う。率直に喜びたい」と話している。

 映画は日本・トルコ友好125周年記念事業として、安倍晋三首相の肝いりで制作され、「『海難1890』を成功させる会」の最高顧問には首相自身が就任している。「(人命救助といえども)自衛隊機は法律の制約で飛ばすことはできない」といったセリフが飛び出すなど安全保障関連法を意識させるような場面も出てくる。題材が素晴らしいだけに後半分の安直な演出はいただけない。それはさておき、「いわてゆいっこ花巻」の設立に関わったひとりとして、今回の受賞に心からの拍手を送りたい。


(写真は震災直後、「ゆいっこ花巻」が被災者を招待した日帰り温泉旅行。着の身着のままの被災者のために性別、年齢別に下着を用意して提供した=2011年3月、花巻市の志戸平温泉で)

 

 
2016.01.11:masuko:[身辺報告]

あれから5年ー1

  • あれから5年ー1
震災直後、全国から救援物資が寄せられ、ボランティアが連日、仕分け作業に追われた=花巻市一日市の「いわてゆいっこ花巻」の事務所で
2016.01.11:[編集/削除]

あれから5年ー2

  • あれから5年ー2
「ゆいっこ花巻」の被災地支援の拠点のひとつの安渡小学校。校庭の片隅にテントを張り、炊き出しなどの支援を続けた=2011年4月、大槌町安渡で
2016.01.11:[編集/削除]

あれから5年―3

  • あれから5年―3
震災後に生まれた4か月の赤ちゃんも参加した、「ゆいっこ花巻」のお茶っこ会=2011年10月、大槌町の安渡第2仮設団地で
2016.01.11:[編集/削除]

あれから5年―4

  • あれから5年―4
ドラム缶を改造した手作り焼き器での”復興石焼イモ”が人気を博した。この写真はアメリカの救援活動「トモダチ作戦」への返礼として、政府を通じてオバマ大統領へ贈られた=2012年1月、釜石市の大曾根仮設団地で
2016.01.11:[編集/削除]

この記事へのコメントはこちら

※このコメントを編集・削除するためのパスワードです。
※半角英数字4文字で入力して下さい。記号は使用できません。
今日 85件
昨日 442件
合計 447,507件