日報“論壇”という偽善…ボツ2本にみるメディアの翼賛化!!??

  • 日報“論壇”という偽善…ボツ2本にみるメディアの翼賛化!!??

 

 「議論をたたかわせるために設けられた論争の場所」―。広辞苑などは「論壇」について、こう定義している。地元紙「岩手日報」にもそんな論争の場が設けられているが、新花巻図書館の立地問題に関する限り、採否の基準が一方に偏しているのではないかと危惧を抱いている。「駅前か病院跡地」という意見集約が大詰めを迎える中、今月5日付で投稿をしたが、一応のタイムリミットである26日までに掲載されなかったので、不採用と判断した。

 

 さらに、2年以上も前の2022年10月10日付で新図書館問題に関する投稿をした際も結局、日の目を見ないまま現在に至っている。上掲の写真は当方の投稿を尻目に2023年3月31日付で掲載された論壇原稿で、「駅前」立地に賛同する内容になっている。議論をたたかわせることに背を向けたとたん、そこに待ち受けるのはメディアの死…翼賛化である。以下にボツ原稿を2本採録する。読者諸賢のご判断を仰ぎたい。

 

 

●2025年1月5日付投稿原稿

 

 

 「JR花巻駅前か旧総合花巻病院跡地か」―。新花巻図書館の立地場所をめぐって、10年越しの論争が続いているが、現在、計画が進められているJR花巻駅の橋上化(東西自由通路)と図書館とは実は通路でつながった「ワンセット」構想だったことが開示請求した行政文書から明らかになった。その二拓の意見集約をするための「対話型市民会議」がいま、大詰めを迎えている。開示文書は市側が「駅前」立地を早い時期に既成事実化していたことを示しており、意見集約の結果に注目が集まっている。

 

 開示文書によると、いまから8年前の平成29(2017)年「花巻市まちづくり勉強会」と「花巻駅周辺整備調査定例会」という非公開の組織が相次いで立ち上げられた。駅前再開発を話し合うためのJR側との合議体で、図書館を所管する生涯学習部と橋上化を担当する建設部とが同席していた。例えば新図書館については、平成30(2018)年1月17日に開催された「整備調査定例会」で、市側は「図書館は2階か3階建てのイメージ。自由通路につなぎ、2階でレベル合う案も検討する。市側が通路を図書館につないだレイアウトを作成する」と発言している。

 

 その2年後の令和2(2020)年1月、市側は新たに「賃貸住宅付き図書館」を駅前に立地するという構想を議会や市民の頭越しに公表にした。駅前のJR所有地を50年間、定期借地するというこの構想に対し、多くの市民から「50年過ぎた段階で取り壊しが決まっている公共施設など聞いたことがない。市有地の病院跡地に建てるべきだ」との反対論が噴出。市側はその年の11月、住宅との併設案と定期借地の件を撤回し、いまに至っている。

 

 あの騒動から丸5年が経過した。この間市側は市民の意見を取り入れるためのワークショップや市民説明会、各種団体との意見交換、さらに二つの候補地ごとの事業費比較などを実施し、対話型市民会議でそれぞれのメリットとデメリットを出し合うという手順を踏んできた。3回にわたったこの会議は1月26日に最終回を迎える。市側は「その結果を最大限、尊重した上で最終建設地を決定したい」としている。しかし開示文書を見る限り、市側が病院跡地への立地を検討した形跡はみじんもない。就任後の平成28年、まちなか活性化のため、病院跡地への図書館建設を提唱したのは当の上田東一市長だった。180度の政策変更の背景には何があったのだろうか。

 

 

●2022年10月10日付投稿原稿

 

 

 目の前にこつ然と現れた広大な“空間”に身を置きながら、「図書館の立地はここしかないな」と直感した。花巻市は10月11日から27日まで市内17か所で新図書館の建設場所をめぐって、意見集約のための市民説明会を開催した。その第1候補に挙げられているのがJR花巻駅前のスポ-ツ店用地で、当局側はその取得に前向きな姿勢を見せている。

 

 こんな折しもかつて、花巻城跡に隣接した旧総合花巻病院の移転・新築に伴って、24棟を数えた病棟が解体された結果、私たちは約100年ぶりに由緒ある遺跡など城跡のおもかげに接するという幸運に恵まれた。晴れた日には高台の城跡から霊峰・早池峰など北上山地の雄大な姿を望むができる。当該地は郷土の詩人で童話作家、宮沢賢治の作品にも数多く登場し、たとえば『四又(よまた)の百合』に出てくる“ハ-ムキャの城”とはすぐに、花巻城跡と察しがつく。
 

 さらに、賢治が学んだ現花巻小学校と自らが教壇に立ち、“桑っこ大学”とも呼ばれた旧稗貫農学校に挟まれたロケ-ションはまさに「文教地区」にふさわしい立地条件と言える。現在「まなび学園」(生涯学習都市会館)として、市民に学びの場を提供している場所もこの地に隣接し、かつては賢治の妹トシが学んだ花巻高等女学校(県立花巻南高校の前身)の建物だった。これもまた、歴史の奇縁かもしれない。
 

 実は「図書館法」(昭和25年4月)の生みの親が当地ゆかりの「山室民子」だということは地元でも余り、知られていない。慈善団体「救世軍」の創設者・山室軍平の妻で、花巻の素封家に生まれた旧姓・佐藤機恵子が民子の母である。民子は図書館法を起案するに当たって、生涯教育の大切さを訴えた。
 

 1世紀という時空間をへて、今よみがえった「百年の記憶」と未来を見すえた「百年の計」と―。解体工事で全貌を現した「濁り堀」について、専門家グル-プは「一級品の貴重な遺構。現状保存が望ましい」と答申した。将来は原形を維持したまま、“歴史公園”として利活用できるのではないか。夢は広がるばかりである。いまこそ、山室民子の“遺訓”を生かすべき時ではないかと思う。花巻小学校とシニアが集う「まなび学園」の間にポッカリと浮かんだ空間。まさに、天啓(てんけい)とでも呼びたくなる、“生涯学習”の場にふさわしい環境ではないか。

 

 「天啓」とは「天(神)の啓示」を意味する言葉である。「魂の癒しの場」―。世界最古の図書館といわれるアレキサンドリア図書館(エジプト)のドアにはこう記されているという。

 

 

 

 

 

(写真は2023年3月31日付の岩手日報と同日付の「日報論壇」)
 

 

 

対話型「市民会議」が終了へ…果たして、公正・中立性は担保されたのか~最終結論は来月へ先延ばし!!??

  • 対話型「市民会議」が終了へ…果たして、公正・中立性は担保されたのか~最終結論は来月へ先延ばし!!??

 

 「駅前か病院跡地か」―。新花巻図書館の立地場所を話し合うための対話型「市民会議」(75人で構成)が26日、3回にわたった会議の最終回を迎える。双方のメリット・デメリットを総括したうえで、市側が建設地を決定する段取りになっている。折しも、タレントの女性スキャンダルをめぐって、その実態と経緯を調査するための「第三者委員会」のあり方が問われている。当事者のフジテレビ側は当初、会社寄りの委員会を設立して切り抜けようとしたが、広告主などからの批判が殺到。結局、独立性の高い日弁連の(日本弁護士連合会)のガイドラインに沿った委員会を設け、その「公正・中立性」を担保することになった。この騒動を横目で見ながら、足元は大丈夫かなとふと思った。

 

 建設地の決定に関わる重要な判断材料のひとつが「建設候補地」の比較調査で、この業務を受託したのは大手コンサルタント会社の「大日本ダイヤコンサルタント」(本社・東京)。同社は地質や地層の調査・分析に実績があり、今回も“災害リスク”を強調する調査内容になっているのが目につく。この点に関してはこれまでの議会質疑でも「当該跡地では100年もの長い間、病院経営が続けられ、病棟群が建ち並んでいた。突然、リスクを突きつけられ、市民も戸惑っている」とその真意に首をかしげるやり取りがあった。

 

 さらに、今回の業務委託の指名入札に当たって、上田東一市長は「図書館など公共施設の基本計画の策定業務に豊富な実績を持つ業者を選定したい」(令和5年12月20日の定例記者会見)としていた。ところが、同社を含め入札に参加した業者11社はすべて、JR各社と請負関係にある独立行政法人「鉄道建設・運輸施設整備支援機構」(JRTT鉄道・運輸機構)の有資格業者だということが判明。「どの業者が落札しても、結局はJR寄りの業者に落ち着く仕組みになっていたのでは…」とその公平性や中立性に疑義を呈する声も高まっていた。

 

 一方、市民会議の進行役を務めるファシリテータ―については当初、「公募型」プロポーザル方式で広く人材を求めることにしていたが、結局応募したのは1社だけ。この業者も評価点に達しなかったため、昨年8月に不調に終わった。本来なら、再公募するべきなのに市側はこの事業の予算(約1000万円)をそのまま“流用”する形で、「公募」どころか連携関係にある慶応義塾大学SFC研究所に助言と協力を求めた。関連予算の再上程もなし、”禁じ手”などどこ吹く風…議会無視の強行突破だった。

 

 その結果、同大学大学院特任教授で「LOCAL&DESIGN」(株)の代表取締役である山口覚さんにファシリテーターを依頼し、いまに至っている。SFC研究所と当市は、2018年7月に「地域おこしに関する研究開発の連携協力に係る覚書」を締結しているが、ファシリテータ―業務が「地域おこし」とどう連動するのか―不透明な部分を残した“見切り発車”のまま、終着駅に到達した感はぬぐえない。いずれにせよ、10年越しの新図書館の着地点の行方に市民の注目が集まっている。なお、市民会議は予備日として、2月15日の開催も予定されている。

 

 

 

 

《追記ー1》~市民会議、最終結論は来月に先延ばし

 

 

 対話型「市民会議」は26日、3回目の話し合いを持ち、建設候補地(駅前と病院跡地)のメリット×デメリットを出し合った。それぞれの主張が多方面にわたったため、予備日にしていた2月15日に最後の会議を持ち、論点を整理することになった。この日の会議の冒頭、メインファシリテーターの山口覚・慶応義塾大学大学院特任教授は「私は故意にしません」と意味深長な発言を口にした。

 

 

 

《追記―2》~”大山鳴動”したあげく、幕を開けて見れば…失速した対話型「市民会議」の意見集約とは!!??

 

 

 「駅前か病院跡地か」―。新花巻図書館の建設場所の意見集約をするための対話型「市民会議」は当初予定された3回の会議が終わり、来月15日に予備会議を開催することになったが、鳴り物入りで設定された割にはその低調ぶりが目立った。その端的な例が会議出席者の定数割れ。市側によると、無作為抽出で選ばれた15歳以上の市民3,500人を対象に参加希望者を募り、応募した75人の市民でスタートする手はずになっていた。

 

 構成の内訳は若年層(10代~30代)が35人、中高年層(40代~60代)が34人に対し、高齢者層(70代以上)はわずか6人。しかし、実際に会議に出席したのは第1回目(昨年11月17日)が65人、第2回目(同12月21日)が64人と連続して定数を下回り、3回目(今年1月26日)に至っては18人も少ない57人に止まった。「75人」という構成自体、人口比89,862人(令和6年12月31日現在)に比べても到底、民意を反映する数値とは言えない。それをさらに下回ったということは「市民会議」自体の有意義性が問われても致し方あるまい。

 

 

 

 

 

(写真は市民会議の経緯を知らせる「ニュースレター」第2号。市HPから)

「黒塗り公文書」の闇を暴く(下)…「住宅付き」図書館という名のサプライズ、「病院跡地」は最初から蚊帳の外~市民を欺く「背信」行為!!??

  • 「黒塗り公文書」の闇を暴く(下)…「住宅付き」図書館という名のサプライズ、「病院跡地」は最初から蚊帳の外~市民を欺く「背信」行為!!??


 

 「思い切ったプランを持ってきた。図書館と親和性の高い事業で、駅利用者や来街者で賑わうイメージ。地域の人が集えるイメージである」―。「花巻市まちづくり勉強会」の最終回が開かれた2018(平成30)年10月3日、市側は「花巻/新図書館プロジェクト」(計画資料案)と銘打った資料をJR側に提示した。しかし、22枚にのぼる肝心の本文部分は全部、黒塗りされていた。おそらく、この闇(やみ)の中にこそ、外部には知られたくない“不都合な真実”が書かれているにちがいないと思った。

 

 「花巻市まちづくり勉強会」と「花巻駅周辺整備調査定例会」が解散された直後の2019(平成31)年1月9日、今度は副市長をトップに据えた「新花巻図書館整備プロジェクトチーム」(PT会議)が立ち上げられた。図書館整備に特化した形の組織で、2022(令和4)年7月6日まで10回の会議を持っている。公民連携の手法で紫波図書館などを手がけた(株)オガールの代表取締役、岡崎正信さんがオブザーバーとして参加するようになったのは(平成31年)4月24日以降の3回の会議。以下の発言に見られるように、専門用語を駆使した岡崎さん主導型の図書館構想が次第に輪郭を見せつつあった。

 

 「公共性や花巻らしさがあるものがベスト。電車通勤者の住宅の需要もあり、高校生も多いので塾やカフェも必要」、「市側としては、どんなテナントが良いか。図書館との親和性を持ったものを考えたい」、「JRから土地を借りて、まちづくり会社を作り、SPC(特別目的会社)を立ち上げ、市はまちづくり会社とSPCに出資。JRにはAM(投資用資産などの管理業務)とPM(不動産の管理や運営の代行業務)を担ってもらう」、「発表で地価が上がる恐れもある。タイミングを考える必要がある。テナントについては再考が必要だが、住宅と賃料をどれだけ安くできるか、再検討する」…

 

 「新花巻図書館複合施設整備事業構想」―。岡崎さんをアドバイザーに迎えた約9カ月後の2020(令和2)年1月29日、私が「1・29」“事変”と名づける、いわゆる住宅付き図書館の「駅前立地」構想がまさに青天の霹靂(へきれき)のように天から降ってきた。50年間の定期借地権を設定した上で、賃貸住宅を併設するというこの構想案は蜂の巣をつついたような騒ぎに発展した。上田(東一)市長本人はたぶん、大向こうを唸らせる“サプライズ”だと思っていたにちがいない。それが完全に裏目に出た。コロナ感染症が日本で初めて確認されたのはちょうどその2週間前。ソーシャルディスタンスと3密防止が叫ばれる中、図書館“迷走劇”はコロナ禍と並走するようにして泥沼化していった。

 

 「駅前の賑わい創出?まるで、今次のパンデミックに逆行するような図書館論議ではないか。50年たったら、撤去しなければならない公共施設など聞いたことがない。」―。議会側は直ちに「新花巻図書館整備特別委員会」を設置。市民の意見を聞くために急きょ、開かれたWS(ワークショップ)ではこの案に賛意を示す参加者がゼロという前代未聞の結果に終わった。岡崎さんに丸投げされた形の、いわゆる”上田私案”は1年も持たずにその年の11月12日、住宅併設と定期借款の部分の撤回に追い込まれた。ちなみにこの際、岡崎さんに支払われた業務委託料はざっと500万円にのぼった。

 

 図書館に複合的な付加価値を付けることを求めていたJR側の攻勢がこの前後から目立つようになった。当時の会議録や復命書にはこんな強気の発言が載っている。

 

 「住宅が上に乗ることで、賑わいの観点でプラスアルファがあるという意味合いもあり、今回協力することにしているので、それが変わるとなると振り出しに戻る可能性があると思う」(令和2年8月26日付)、「大元の『賑わいのある図書館』というところから、借地(50年間の賃貸借)プラス複合施設ということを想定して協議させていただいてきたと認識している。その後だんだん、(JR)用地を買うことを検討するとか、図書館単体という形など状況が色々変わってきているので、根本的な部分が心配である」(同10月9日付)…

 

 「駅前か病院跡地か」―。一見、中立性が担保されてきたかのような“立地”論争も黒塗り公文書の裏側から見れば、一貫してJR主導型で進められてきたことが手に取るように分かる。その主従関係を象徴するような発言がある。“サプライズ”構想が暗礁に乗り上げつつあった時期、市側はひれ伏すばかりにこう、訴えている。

 

 「お願いの部分ではあるが、市が土地を購入することについて、再検討してもらえないかというのが1点目である。2点目は定期借地とは違い普通借地は期間を更新することになるので、普通借地権を設定してもらえないかということである。3点目は定期借地権の期間について、50年という期間が短すぎるという意見もある。この期間を長くすることは出来ないかという相談である」(令和2年9月14日開催のPT会議)

 

 全文黒塗りの「花巻/新図書館プロジェクト」には一体、何が描かれていたのか。「思い切ったプラン」と胸を張ったその“のり弁”にはおそらく、行き交う人々で賑わうJR花巻駅前のイメージ図が付されていたはずである。そのシンボルともいえる、住宅付き図書館の「駅前」立地構想がコケてしまった。ある意味で、絵に描いたような“失政”劇である。

 

 「図書館と橋上化とは別物のプロジェクト」と言い続けてきた上田市長がこの攻防戦の後、ポロリと本音をもらしている。「JRは花巻駅の橋上化をやりたいと思っており、橋上化の話が進めば、土地の売買について真剣に話をしてくれる可能性はある。橋上化がなくなった際には、駅前に図書館を建設することについてもどうなるか分からない」(令和4年6月開催の市政懇談会での発言)―

 

 「駅橋上化事業の見返りが図書館の駅前立地だった」―“のり弁”の背後から次第にこんな構図が輪郭を伴って、姿を現してきた。社有地の売却には一貫して否定的だったJR側は駅橋上化の基本協定の締結を受ける形で令和5年12月、駅前用地(スポーツ店敷地)の譲渡に応じるという方針転換に踏み切った。ある意味、双方にとっての“手打ち式”だったのかもしれない。

 

 あの“サプライズ”騒動からさらに5年が過ぎた。いま、「駅前と病院跡地」に絞られた立地場所の意見集約が大詰めを迎えている。しかし、その前提になる候補地の事業費比較では病院跡地の”災害リスク”がことさらに強調されるなどその公平性に疑念が生じている。さらに、最終的な意見集約をする「対話型市民会議」の応募参加者はわずか75人(実際の出席者は第1回目が65人、第2回目が64人)で、民意を反映するにはほど遠い構成になっている。

 

 一方、昨年12月21日に開催された第2回市民会議では二つの建設候補地をめぐるフィールドワークが実施されたが、参加者はたったの9人。「我こそは」と手を挙げたという、これが市民会議参加者の実際の姿である。50年どころか「百年の大計」とも呼ばれる文化施設―図書館の立地。その現場に足を運ばずして、建設候補地の「メリット・デメリット」を判定しようという、その傲慢さに私は怒りさえ覚えてしまう。「知の殿堂(図書館)に対する冒涜(ぼうとく)ではないのか」と…。他方、「病院跡地」への立地を求める市民グループの署名数は北海道から沖縄まで(宮沢)賢治愛好家や図書館ファンを含め、その数は10,269筆にのぼっている。この数値の歴然たる乖離に目を凝らしたい。双方を比べること自体が愚行というものである。

 

 和歌山市や広島市がそうであったように、当市イーハトーブはなまきの図書館問題も結局は「駅前再開発」と一体化した“不動産”案件…賑わい創出のための“ダシ”にすぎなかったのだろうか。だとすれば、この5年間に費やされた膨大な時間と莫大な金はドブに捨てられたも同然の税金の浪費(ブルシッド・ジョブ=どうでもいい仕事=壮大なる無駄)…つまりは市民に対する“背信”行為だったと言わざるを得ない。

 

 それにしても、市側はなぜこれほどまでに「駅前」立地にこだわるのだろうか。「ワンセット」構想がもたらす相乗効果によって、駅前の賑わいを創出したい―。最初からそう説明した方が市民の納得が得られやすかったのではないのか。なのになぜ…。何か表には出せない事情でもあったのであろうか。「黒塗り公文書」の闇の向こうにもうひとつの「闇」がほの見えてくる。さらにどす黒い何かが…。“暗黒”行政という名のトンネルの先には何が待ち受けているのだろうか。注目の市民会議の最終回は1月26日(予備日は2月15日)に開催される。

 

 

 

<蛇足>~「黒塗り公文書」というミステリー

 

 黒塗り公文書の「闇」と格闘しているうちに妙な醍醐味みたいな感覚を覚えるようになった。たとえるなら、推理小説のなぞ解きに挑戦するような…。なにせ、100枚近くに及ぶ、いわゆる“のり弁”の肝心の部分は隠されているのだから、この謎解きはまさに「当たるも八卦当たらぬも八卦」―。もしも、私の見立てが見当違いだったら、是非とものり(海苔)をはがして、弁当の中身を見せて欲しいものである。とくにも、22個の“のり弁”の中にはどんな「マル秘」(隠し味)が隠されていたのかを…

 

 

 

 

(写真は旅先の仕事部屋を占拠した、100%黒塗りの“のり弁”の山。その数は何と22個にも)

 

「黒塗り公文書」の闇を暴く(中)…そもそもの始まりは図書館と橋上化との「ワンセット」構想だった!!??

  • 「黒塗り公文書」の闇を暴く(中)…そもそもの始まりは図書館と橋上化との「ワンセット」構想だった!!??

 

 上掲の写真を見ていただきたい。「最大スペックのラフデザイン」と名づけられた花巻市作成のイメージ図で、JR盛岡支社に提供された資料である。日付は2017(平成29)年7月10日。現在も立地予定地のひとつであるスポーツ店敷地跡に建つ図書館(当時の構想は3階建て)と橋上駅とが通路で繋がっているのが見て取れる。長い間の市政課題だった新花巻図書館と駅橋上化(東西自由通路)という二大プロジェクトは当初は実は「ワンセット」構想だったという動かぬ証拠である。「駅前か病院跡地か」―という立地場所の意見集約が大詰めを迎える中、すでに8年も前に新図書館の「駅前」立地が既成事実化していたことをこのイメージ図は物語っている。

 

 上田(東一)市政の政策基盤である「花巻市立地適正化計画」(2016年=平成28年6月策定)には駅橋上化事業とともに、新図書館の立地先については「(旧花巻病院跡地を含む)生涯学園都市会館(まなび学園)周辺」と明記されていた。ところが、翌年(2017年=平成29年)8月に策定された「新花巻図書館整備基本構想」の中では「候補地を数か所選定した上で、基本計画において場所を定める」と変更された。この候補地の拡大方針の直前に「ワンセット」構想が秘かに想定されていたことを考えれば、基本構想の策定は新図書館を「駅前」立地にシフトさせるための政策変更だったことが誰の目にも明らかである。

 

●「JR花巻駅橋上化(東西自由通路整備)及び新花巻図書館の駅前立地にかかるJR東日本盛岡支社との交渉記録文書すべて」(令和4年11月12日付)
 

●「平成29(2017)年の花巻市議会9月定例会の補正予算案(都市再生事業費)の質疑の中で存在が明らかになった、同年6月発足の『まちづくり勉強会』(JR東日本盛岡支社と花巻市で構成)にかかる復命書や会議録など関連資料」(令和5年3月30日付)―

 

 「まず、駅前ありき」を疑った私は上記2件の行政文書の開示請求をした。その結果、「花巻市まちづくり勉強会」(平成29年6月7日から同30年10月3日まで10回開催)や「花巻駅周辺整備調査定例会」(平成29年12月15日から同30年8月7日まで9回開催)などの組織の存在が明らかになった。駅前再開発を協議するJR東日本盛岡支社との間の非公開の合議体で、市側からは図書館を所管する生涯学習部と駅橋上化を担当する建設部が常に同席する形で進められた。この二つの組織の中では一体、何が話し合われたのか。判読可能な断片的な文脈の背後から双方が「ワンセット」構想に向け、合意形成に至る経緯が少しづつ見えてきた。

 

 「駅舎以外、市として図書館とともに機能付けするものは何か」(JR)、「さくらんぼ東根駅舎(山形県にある奥羽本線「さくらんぼ東根駅」)は2階通路が開放的に作られ、そのまま行政組織(図書館)につながっている」(JR)、「図書館と複合施設によって描くまちづく案と自由通路や駅舎の整備に関するオ—ソライズのタイミングが合うと分かりやすい」(市)、「上層階が図書、低層が多機能スペ-スかと。これらを一体で運営できる手法があるとよい」(JR)、「図書館と複合の事業で周辺の価値を高めていく。その分周辺の価値が上がり、税収をペイできる」(市)、「駅舎、図書館複合、店子等全体事業を紐づける理論武装が必要になる」(JR)…

 

 一見、順調に進みかけていた「ワンセット」構想だったが、新図書館の立地を優先させたい市側と駅橋上化を急ぎたいJR側との間に次第に隙間風が吹くようになった。後述(このシリーズの「下」)するが、この時期ある驚くべき図書館プロジェクトが降ってわき、上を下への大騒ぎに発展しつつあった。水面下での攻防を伝える、二つの会議とは別の復命書(2020年8月26日付)にこんなやり取りがある。

 

 「図書館整備との関連性で、図書館が決まらない限りは、自由通路整備は進められないということか。単独で進めることは可能か」(JR)、「図書館と自由通路はセットで考えるものであり、図書館の話が駅前で出来なくなった場合に、自由通路を単独で整備するかどうかを別に判断することになると思う」(市)、「市民的にも議会的にも自由通路整備をやろうとなったとしても、図書館が決まらないうちに、自由通路だけ先に進むのはまずいのか」(JR)、「現在は図書館とセットとすることで、事業効果が高くなるとしている。セットにすることで図書館的にも自由通路的にも良い」(市)―

 

 商工団体や農業関係者、PTAや同窓会、観光業者…。この機と前後して、駅橋上化の早期実現を求める各種団体の動きが活発になった。要請書の内容はほぼ同じだった。市議会の質疑で「図書館との一体化を狙うやらせ要請ではないか」という疑念が巻き起こった。当時の私のブログにこんな記述がある。「コロナ禍のうっとうしい日々、二人の男が地域に分け入り、その地のボスたちと何やらヒソヒソ話し合う姿があちこちで目撃された。“やらせ要請”の旗振り役と目され、一人は市長の後援会事務局長を名乗る革新系会派の現職市議で、もう一人は建設畑が長い副市長。この二人三脚ぶりはつとにまちの評判になり…」(2021年6月9日付)

 

 「駅前再開発」=「ワンセット」構想という基本原則は崩さないまま、駅橋上化(東西自由通路)事業は2024年(令和5)年6月、ひと足先に基本協定の締結にこぎつけ、令和10年度末の供用開始を目指している。その一方では、宮沢賢治とゆかりがある「旧総合花巻病院跡地」への立地を求める声も草の根ように広がりつつあった。病棟群が撤去され、霊峰・早池峰がその雄姿を現した瞬間、「図書館立地の最適地はここしかない」―。こんな声の高まりを背に複数の市民団体が賛同を求める署名運動に立ち上がった。他方の市側は遅れがちな図書館の駅前立地に向け、秘かに起死回生の打開策を模索し始めていた。

 

 

 

 

(写真は「ワンセット」構想のイメージ図。黒塗りだらけの文書の中で、このイメージ図だけがなぜか、開示された。うっかりミスだったのか)

 

「黒塗り公文書」の闇を暴く(上)…92%が真っ黒けの「暗黒」行政~対岸の火事にあらず!!??

  • 「黒塗り公文書」の闇を暴く(上)…92%が真っ黒けの「暗黒」行政~対岸の火事にあらず!!??

 

 「コモン(公共物)の収奪作戦」「1400枚の黒塗り公文書」「自治体のデタラメ行政」「役所VS.市民」「官製談合疑惑」「不存在」「民間委託の闇」…。こんな章立ての本書を読み進むうちに鳥肌が立つような感覚に襲われた。迷走を続ける新花巻図書館の“立地”論争の背後に同じ闇(やみ)がうごめいているのを感じ取ったからである。

 

 「その文書の裏側では、透明性のある行政とはほど遠い。何か尋常ではないことが、いまこの瞬間も着実に進行していることが、改めて感じられた」―。『「黒塗り公文書」の闇を暴く』の著者、日向咲嗣さんはまえがきにこう記している。本書は著者が6年の歳月をかけて、いわゆる“のり弁”の闇を暴いたスリリングなルポルタージュである。「陰の主役」「出来レース」「アリバイづくり」「寝耳に水」「内部告発」「逆ギレ」…。文中に散りばめられたこんな言葉の数々にこっちの肌感覚がいちいち反応した。足元のイーハトーブはなまきでも寸分たがわない事態が同時進行しているからに他ならない。

 

 「知性と感性を醸成する場」―こんなスローガンを掲げた「和歌山市民図書館」がオープンしたのは2020(令和2)年6月5日。レンタル大手のTSUTAYAや蔦屋書店を展開する「(株)CCC」(カルチャー・コンビニエンス・クラブ)が指定管理者の、いわゆる“ツタヤ図書館”である。立地場所は南海電鉄(本社、大阪市)が再開発を進める和歌山市駅前で、総工費123億円のこの事業には国庫補助など巨額の公費が投じられた。「図書館が駅前活性化のダシに使われるのでは…」―こんなうわさを聞き付けた日向さんは関連資料の文書開示請求に踏み切った。

 

 段ボールにびっしり詰められた開示文書が送られてきた。1400枚以上の文書のほとんど(約92%)が真っ黒く塗りつぶされていた。送り主が新図書館建設を担当する当の「市民図書館」だったことに日向さんはショックを受けた。「実施設計会議」「図書館定例会議」「南海和歌山市駅周辺活性化調整会議」…。辛うじて判読できた文書からこれまで外部には知られていなかった組織の存在が次々に明らかになった。13回にわたって開催された「図書館定例会」に至っては議事録の96・76%が真っ黒だった。「何かあるな」…

 

 県と市に南海電鉄を加えた「活性化調整会議」がスタートしたのは新市長が初当選する直前の2014(平成26)年6月。首長の交代を機ににわかに浮上したのが市民図書館の「駅前立地」構想だった。そんな中、関係者への突撃取材や市民団体の協力、そして内部告発者の決死の覚悟によって少しづつ、闇の実態が白日の下にさらされた。例えば、公募前にCCCだけが市長相手にプレゼンをし、その席に再開発を担当する部署と図書館を所管する教育委員会のスタッフが同席するなど癒着の構造も浮き彫りになった。まるで、“宝さがし”みたいな解読を進めていくうちに、日向さんはこんな発言に遭遇する。

 

 「市民図書館を誘致したいし、タイミングを逸したくない想いがある。新市長に直接お話をさせていただいて、トップダウンで決断をお願いしたいとも思っている」(2014年6月27日付)、「本社の意向として、市民会館と市民図書館の両方があった方がコミュニティをつくりやすいが、優先順位が高いのは市民図書館」(2014年7月9日付、いずれも南海電鉄側)―。「“暗黒”行政は和歌山だけには限らない」と日向さんは被爆地・広島の事例も紹介している。

 

 「JR広島駅前か、平和記念公園近くの現在の公園地内か」―。当市が図書館の”立地”論争に揺れていたと同じ時期、広島市でも市民を二分する論争が続いていた。2021年秋、市側は平和記念公園に近接する中央公園内の市立中央図書館をJR広島駅前の商業施設へ移転する構想を突然、公表した。市民参画もないままの「寝耳に水」に市民団体が署名運動に立ち上がった。「国際平和都市にふさわしい図書館はどうあるべきか」という呼びかけに1万7千筆以上の反対署名が集まった。一方、移転計画の経緯を知るために求めた開示文書はここでも真っ黒けだった。

 

 日向さんはこう書いている。「最初から結論が決まっていて、どんなに市民から批判されようとも、立ち止まって再考したり、丁寧に説明したりすることもなく、なりふりかまわず、その結論に向かって邁進していく。そんな広島市のこの問題での姿勢は、大量の公文書の黒塗りという目に見える形で現れたのだった」―。私は無意識のうちに「広島市」を「花巻市」と読み替えていた。「公共交通の利便性や駅周辺の活性化(賑わい創出)」―。こんなうたい文句の「駅前」移転案は2026年度の実現を目指している。まるで、当市と瓜二つの構図ではないか。

 

 「花巻市情報公開条例」(平成20年3月制定)はその目的について、高らかに謳う。「この条例は、地方自治の本旨にのっとり市民の知る権利を尊重し、行政文書の開示を請求する権利につき定めること等により、市の保有する情報の一層の公開を図り、もって市の諸活動を市民に説明する責務が全うされるようにするとともに、市民の市政への参加を促進し、開かれた市政の推進に寄与することを目的とする」(総則)…よくもまぁ、真っ黒く塗りつぶしたくなるのはこっちの方である。

 

 

 

 

(写真は“暗黒”行政にメスを入れた日向さんの著書)