「酒の唄」 by財津和夫
ひとりの男を知っている。
腹が立つほど人が良く。
酒を肴に酒を飲む様な、酒に溺れて死んだ奴。
あいつの口癖は、酒のプールで泳ぎたい。
そんな冗談を、真面目な顔で喋ってた。
何が悲しくて、そんなに酒を飲んだのか。
何が悲しくて、いつも酔い潰れたのか。
酒は飲め飲め飲め、淋しさを飲み干せ。
酒は飲め飲め飲め、儘ならぬを飲んでしまえ。
酒はいくら飲んでも、飲まれちゃだめと、お袋が良く言ってたけれど。
酒に飲まれて飲まれて騙されて、
初めて飲んだ味がする。
でも、出来るなら、酒は飲まない方がいい。
利口な奴なら、深酒はしない。
僕の心を初めて裸にした女。
酔った心に蘇える。
忘れてしまった筈だったのに、何故おまえは消えてくれない。
でも、出来るなら、酒は飲まない方がいい。
出世する奴なら、酔った振りが出来るもの。
たった一度の人生に躓いて。
取り戻せなくなくなったなら。
飲んで飲んで飲んでエヘラエヘラヘラと。
笑うだけというあいつ。
酒を飲まずに淋しさを。
消せる奴が居るのなら。
教えてやってくれ、あいつにその術を。
酒は飲め飲め飲め。
淋しさを飲み干せ。
酒は飲め飲め飲め。
儘ならぬを飲んでしまえ・・・。