Planning agency kaori

▼外構@雑草シリーズ(3)

   草むしりで思い出すのは、
   約二十年前に亡くなった父方の母、
   私にとってのおばあちゃんだ。
   几帳面で、きれい好きで、
   庭の草むしりも祖母の仕事だった。

   どんなにちいさな草の芽も
   すぐさま取ってしまうしまうから、
   うちの庭は新たな種がこぼれ落ちても、
   祖母が認識している以外の草花が
   まったく育たなかったほどだ。

   痴呆が始まってはいたものの、
   草むしりの日課を怠ることはなく、重い病気もせず、
   日曜日の朝、自分の部屋で亡くなっていた。
   最初に見つけた母がいうには、
   掛け布団の上にころりと横になったいたそうだ。
   医師を呼んで診断してもらった死因は脳梗塞だった。

   葬式の準備が始まって、
   ご近所の方が手伝いに来てくださり、
   聞くところによると、
   祖母はその日の朝も草むしりをしていたらしい。
   いつものごとく、余計だと思った草をめざとく摘み取り、
   たぶんちょっと気分が悪くなって自分の部屋で横になり、
   そのままお迎えがきたのだろう。

   人生の終わり方として、
   これほど幸せな逝き方はないと思う。
   大好きな草むしりを逝く当日まで堪能し、
   天寿を全うしたおばあちゃん。
   なんともうらやましかぎりだ。

   どうしてその血を少しでも
   受け継がなかったのかと悔やみつつ、
   ある朝、ふと駐車スペースを見ると、
   私の敷地とお隣の間の部分に生えていた草だけが
   抜き取られておいてあった。

   はて、実家の誰かがここを通って、
   私の手ぬるいむしり方にあきれかえり、
   少しだけでもと抜いていったか。

   すまんのぉ・・・と思い、母に電話した。が、
   「私は抜いてないよ」とひとこと。
   「じゃシズカちゃんかな。
    よろしく言っておいてくださいな」
   と電話を切った。

   そんな電話をしたこともすっかり忘れていた数日後、
   母から電話があり、
   「みんなに聞いたけど、家じゃ誰も抜いてないって」。

   えぇぇーー。じゃぁ誰よーー。
   草むしりマニアがいて、
   通りすがりに我慢できずに抜いていったとか・・・??

   「とにかくさ、雑草って虫が増えたりして、
    不快に思う人もいるんだから、
    ご近所の迷惑にならないように、
    きちんと抜きなさい」。
     
   またしても家族に怒られてしまった41歳の夏。

   抜いてくれたのは、きっと、天国のおばちゃんだ。
   お盆も近くなって、新築した孫の家を見に降りてきて、
   現世での草むしり魂に火がついてしまったのだろう。
   
   ありがとう、おばあちゃん。

   今日からは自分で抜きます。


2006.09.19:kaori
[2006.09.23]
修行 (kaori)
[2006.09.23]
エネルギーを是非! (びおとーぷ)
[2006.09.21]
山形の冬 (kaori)
[2006.09.20]
お元気そうで! (びおとーぷ)
[2006.09.20]
草取りマシーン (kaori)
[2006.09.20]
草とりとは・・・ (rin)

HOME

(C) Kaori Asakura

powered by samidare