Planning agency kaori

▼日曜随想4月分

山形新聞の日曜随想4月4日掲載した随想です。


「山形で学んだこと」 

勤めていた広告の制作会社が倒産したことをきっかけに独立し、
約15年になる。
入社当時はコピーライターの肩書きをもらい、
最初に担当したのがシニア向け情報誌の編集だった。

60歳〜80歳代の方のインタビューもあり、
思えば25,6歳の若輩者に、ご自分の貴重な人生観を語ってくださり、
今読み返したら間違いなく赤面するヘタッピな文章を
了解してくださった方々には、本当に感謝するばかりだ。 

現在は情報誌の編集、取材、お店や企業の販売促進について
アイデアを提案しているほか、
4年ほど前からはコミュニティラジオのパーソナリティとして、
毎週土曜日に生放送の番組を担当させてもらっている。

毎回2〜3名のゲストをお迎えし、
山形のさまざまな活動をうかがっているので、
私にとっても新しい発見がある3時間だ。
正確な数字は出せないけれど、
企画の打ち合せも含めると毎月20〜30名位の方とお会いしているだろうか。
時間が不規則な仕事なので、
自己啓発になるようなセミナーに出かける機会も
ほとんどないまま過ごしてきたが、
私は山形の日常を生きる人達から、あらゆる教えを頂戴し、
人から人へのご縁もいただいてきた。


先月、山形県立山辺高等学校のご依頼で、
リーダーのあり方と企画の立て方について講座を行なった。
参加者は生徒会執行部とホームルーム委員を務める生徒さんたち。
私が高校生の頃なんて、こんなにしっかりしていなかった気がするなぁ、
と感心しながら黒板の前に立つ。

広告の仕事ではディレクターやプロデューサーといった役割があり、
求められるのがリーダーシップ性だ。
まずは自分の中に持っている資質を見つけてもらえるよう、
理想像を書き出して発表してもらった。
「自分の意見を言える人」、「相手の話を聞ける人」、「明るい人」など、
この先社会に出たとき、恋愛をしたとき、母親になったときにも役立つ答えがいくつも出てきた。

私がこれまで出会った方々から学んだ要素を挙げてみると、
「過剰な自我がなく寛大な人」、
「臨機応変に対応ながら、焦点がブレずに進める人」、
「細やかに気配りしつつ、状況を俯瞰で見ることができる人」。
そして「"愛"があるかを物差しにできる人」
(去年の大河ドラマ「天知人」以来県内各地に愛の文字が登場し、
おかげでこのストレートな言葉を口にする気恥ずかしさもなくなりました)。

すべての要素を満たすことはむずかしいけれど、
ピュアな情熱があれば、人は力を差し出してくれるように思う。
人の上に立つときに限らず、人間として生きていく上で、
リーダーの感覚はあらゆる場面で役に立つ。

続いて企画の立て方では、学校祭をテーマに、
グループに分かれて会議をしてもらった。
プロであっても温泉のごとくイベントのネタが湧いてくるのは稀で、
「うーん」とうなったまま時間が過ぎていくことはよくある。
大切なのは、煮詰まる時間を恐れないこと。自分や周りを責めないこと。
軽やかに気分転換をして、ひらめきを信じること。

講座の途中で、私も一つひらめきがあった。
何に使うか決めないまま、家から用意していった麻の紐があり、
それを席の列ごとに1本ずつ渡すことにした。
一番前に座っている人が端を持ち、
途中に座っている人は紐を後ろの席へ送っていく。
もう一方の端を一番後ろの人が受けとる。
長さが足りないからみんなが立って近くへ集まり、
端と端を持つことができた。

学校祭の目的はみんなが一つになることだ。
自ら席を立って、思いを近くの人に手渡して、
知らない人同士も触れ合っていける機会を作り出すのがリーダーの役目。

最後に、紐を持った人同士が向き合って、
「こんにちは」「ありがとう」と声にだして言ってもらった。
くすぐったいような笑いがおきて、あたたかな空気が教室に流れた。

紐を手渡しながら心がつながっていく光景を見ることができ、
私自身もいい時間をいただいた。


山辺高校のみなさん、お声がけくださった沼澤先生、
ありがとうございました。

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愛やね (kaori)
[2010.04.13]
ありがとう! (だんぼ)

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