鴨が葱を背負って来る

鴨が葱を背負って来る
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 ――ねえ。」
 ――なあに。」
 ――明日、兄貴来る日だね。」
 ――ええサラミを買っていらっしゃるわ。」
 ――僕が、起きているのを見て驚くだろうな。」
 ――そうね。でも、あんたいい気になって、あんまり無理しちゃ駄目よ。」
 幸子は何気なく振返った拍子に旻の眼を感じて、身を固くした。
 ――ねえ。」
 ――なあに?」
 ――僕は、幸せだよ。」
 ――…………」
 ――幸子さんが、たった一度接吻してくれたばかりで、こんなに元気がついてしまったのだって、兄貴にそう云ってみようかな。」
 ――あんたは、悪党よ。」
 ――結構……」
 ――あたしが、あんたを愛しているとでも思ったら、それこそ大違いだわ。」
 幸子は、花をうっちゃって立ち上がった。
 ――嘘だ! 幸子さんは、心の底では誰よりも一番僕を愛していなければならない筈だ。一時眠っていた昔の僕たちの恋が目をさましたのだよ。あんなに一途だった人間の愛情がそう簡単に亡びてしまうわけはないのだからね。僕は長いこと待った……」
ひどく申訳のないような顔をして:鴨が葱を背負って来る
2012.04.01:kamo:count(288):[メモ/コンテンツ]
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