菅野芳秀のブログ

▼今年の田んぼはどんな色か?

  田んぼは今、黄緑(きみどり)。少しずつ黄色に近付いている。その黄色、年によってはまばゆいばかりの黄金色になることがある。その美しさといったらたとえようがない。長年田んぼの秋を見てきたこの私でさえ、しばらくそこから動けなくなるほどだ。今年はどんな色になってくれるのか。

 もうじき稲刈りだ。出穂は例年に比べ10日は遅れていたから、今月の下旬ぐらいからだろうか。種まきから今日までに、たくさんの出来事があった。もしかしたらこのブログを見ているあなたは「菅野がまじめに百姓しているわけがない。」と思っているかもしれないので、ちょっとまじめに・・・・こんなことがあった・・・と。

 今年は長い梅雨で、ほとんど一ヶ月、毎日、毎日が雨降り。全身にカビが生えてくるのではないかと思えるほどだったよ。日照不足と、ときおり「あれっ」と思うような低温のなかで、稲の成育は進まない。
  
 こんな気候のときは「いもち病」が心配で田んぼの周りを幾度も見て歩いた。農協の広報も「いもち病注意報」を出して気をつけるよう呼びかけていた。
 いもち病とは一種のカビがつくりだす病気で、葉につくと緑の葉に点々と茶色の斑点ができる。それがみるみるうちに増えていき、やがて稲の体ぜんぶが萎縮したようになって枯れていく。葉のいもち病が軽度ですんでも、それで終わりなのではなく、やがて穂のいもち病に変わっていく場合が多い。ひどい場合は、田んぼ全体が茶褐色になり、全てが枯れ上がってしまったかのように見えるほどになる。そうなると悲惨だ。大きな減収は当然だが、残った米も貧弱でまずい。やっかいな伝染病だ。
 これにかかると、農家は気落ちのあまり「火をつけて燃やしてしまおうか。」と思うほどだ。私はまだ経験がないけれど、恐ろしさは充分知っている。

 雨と曇天が続き、高温多湿。いもち病の蔓延する条件は充分にそろっている。実際、あっちこっちの農家から「ついに発生」の声が上がっていた。すでに農家は一度目の防除を終え、二度目の準備を進めていたが、我が家はまだやっていない。
 私は何度か田んぼを見て回っていた。そしてある日、ついにいもち病を発見。まだ軽度だけれど、堆肥が多く落ちて、稲の葉色が濃いところにチラホラと発生している。ザワッときた。

 地域づくりだ、レインボープランだといって田んぼをはなれる機会が多い私は「それ見たことか、あいつの田んぼは・・・」と言われることのないように、田んぼの管理には他の人よりいっそう気を使っていた。その上更に、周りの農家には農薬を減らそうと呼びかけていたのだから・・大きな被害が出たら影響は決して小さくはない。やばい。

 天気予報を見れば、これからも長雨は続くらしい。長年、殺菌剤、殺虫剤をやらずに来たけれど、今年は止むを得ないと思えた。ここはひとまず殺菌剤をやろう。そう決断せざるを得なかった。お米を待っている関西や関東の人たちの顔が目に浮かんだ。

 その後は暑い夏がもどり、いもち病の心配はなくなったのだけれど、あの時点では仕方なかったと思っている。だけど・・・。

 今年もようやく収穫の秋が近付いてきた。でも、思いは複雑だ。

 おもわず目を細めてしまうほどの輝きをもつ黄金色の田んぼは、朝晩の気温が低く、日中は高温だという天候が条件だという。

 今年の田んぼはどんな色を見せてくれるのだろうか。


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2006.09.10:kakinotane
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