菅野芳秀のブログ

▼野菜の質の低下 04,12,19

 長井市ではレインボープランという名の生ごみと農作物が地域の中で循環するまちづくりをすすめているが、この事業に国内だけでなく外国からの視察者も多い。

先日、タイの東北部にあるカラシン県ポン市から市長一行がやって来た。

 すでに同じタイ国のコンケーン県ブアカーオ市では「レインボープラン」という名の、同じ事業が始まっているが、ポン市でもこのプランを実現しようと市長自らが視察に出向いて来られたというわけだ。

 タイでレインボープランを求める背景には環境や農業、食料のどれ一つとっても日本の私たちより深刻だという状況がある。たとえば農業だが、輸出用の商品作物を増産しようと農薬と化学肥料を多投してきた結果、土が疲弊し、満足に作物が育たなくなっている農地が増えているということだ。

「化学肥料によって栽培された作物を食べ続けてきたことも一因だと思いますが、人びとの免疫力が低下しています。糖尿病、高血圧、ガンなどの病気も増えてきました。私はいま市民の健康を、食の面から守ることが行政のとても大切な仕事だとおもっています。そのためにも是非レインボープランを実現したい」と市長は語る。

 日本の場合も輸出こそしなかったが、堆肥から化学肥料へと農法を変え、タイと同じように効率と増産による最大利益を追い求めて来た結果、土が疲弊し、それが主な原因となって作物の弱りを引き起こしてきた。

「食品成分表」(女子栄養大学出版部)によって1954年と、約50年後の2001年のピーマンを比較すると、100gあたりに含まれるビタミンAの含有量は600単位から67単位へとほぼ1/9に激減している。ビタミンB1も0,1mgから0,03mgに、ビタミンB2は0,07mgから0,03mgへ、ビタミンCも200mgから76mgへと、のきなみ成分値を下げているのだ。

これには驚かされる。

 今の私達がビタミンAをピーマンからとろうとしたら54年当時の9倍の数を食べなければ同じ分量にはならない。成分の下落は他の野菜にもいえること。身体は全て食べ物からつくられていくことを考えれば、この数値の低下はちょっと恐ろしい。

 ポン市の市長が指摘するように、作物の質の低下は、それを食する者の免疫力、生命力にも大きな影響を与えるだろう。

政治や行政の最大の課題は、人々の健康、すなわちいのちを守ることである。そのいのちを支えるのはいうまでもなく食べものだ。その食べものを育むのが土であるならば、土を守ることは第一級の政治課題でなければならない。ポン市の市長さんの話を聞きながらそんなことを考えた。
 
ぜひ成功して欲しい。俺たちもこれからだ。

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2006.04.17:kakinotane

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