菅野芳秀のブログ

▼第11回 伝染病知らずのワケは? 05,4,21

 吹雪の中、鶏舎に入っていくと、スズメとニワトリがエサを分け合っていた。いいぞぉ、生き物同士だ。困っているときはこれでなければいけないな、ウン。見ている僕の中にも、ほのぼのとした思いがうまれてくる。

 ひよこ屋さんがやってきたのは去年の春ごろだったかな。彼は外で遊んでいたニワトリ達をみながら「ずいぶんとのどかな風景だねぇ。ところで伝染病対策はどうしている?」と聞いてきた。ゲージ養鶏のようにかごに入れ、宙に浮かしているのと違って、同じ地面をたくさんのニワトリ達が踏む。伝染病が広がりやすいのではないかというわけだ。

 「このように遊ばせておくこと自体が対策かな。あとはきれいな水と新鮮な空気、それにいい食べ物だね。自然養鶏を始めてから20年になるけど、伝染病はただの一度も経験していないよ。」と答えたが、彼はとても考えられないことだとしきりに首をひねっていた。でも事実なのだから仕方がない。

 そのひよこ屋さんがスズメとニワトリが一緒にいる目の前の光景を見れば、きっとまた「伝染病の・・・」といいだすだろう。昨年の「鳥インフルエンザ」以来、指導機関も防鳥ネットだ、窓なし鶏舎だと野鳥に対する警戒を呼びかけ、補助金を出してニワトリ達をいっそう自然から切り離し、隔離する方向へ誘導しようとしている。

 「だけどね、ひよこ屋さん・・・」とやっぱりいいたいよな。人工的に隔離されたニワトリ達がいともたやすく死んでいくのは病気への抵抗力が弱いからだと思うよ。これを更に隔離する方向に進めたのではもっとひ弱なニワトリができてしまうだけだ。悪循環だし、そもそもそんな卵はおいしくないよ。

 求められていることは自然の遮断ではなく、できるだけ自然のなかで、自然とともに飼い、ニワトリの本来もっている生命力、抵抗力を高めていくことで病気を克服することさ。そんなニワトリが産んだ玉子だからこそ、おいしいし、身体にもいい。スズメだって自然の一部だ。一緒にいたっていいんだよ。

 こんど彼が来たら、こんなことを言ってやろうと思っていたら、「北朝鮮に鳥インフルエンザ発生。10万羽を処分」のニュース。うわっ、またか。
 だけどね。うふふ、負けないよ。この機会をつかまえてね、日本国中のニワトリが、自然ともっと近付いて暮らせるように変えてやろうと思っているんだからさ。

そうだよね、同志諸君。
 

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2006.04.17:kakinotane

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