菅野芳秀のブログ
▼白になって、緑になって・・・
我が家の前に広がる水田はおよそ800ha。見わたす限りが田んぼだ。その田んぼ、ちょっと前までは、一面むせかえるような緑だった。今は急速に黄色へと変わりつつある。秋が来たのですねぇ。
白になって、緑になって、黄色になって、白になるものな〜んだ?答は田んぼ。
じゃ、白になって、青になって、赤くなって、白になるものは?答は山。
風景の支配的な色が変わるとき、子どもを相手にこんな「なぞなぞ」を出していた。じっさい、季節の変化に合わせて、前に広がるだだっ広い水田と後ろに横たわる朝日連峰が、広大なスケールでその色合いを変えていく。
そんな中に入っていると「オレの年収は同世代のサラリーマンの1/3にもみたないけど・・・まぁいいかぁ。」こんなおおらかな気分になっていくんですねえ。
でな、季節の変化にともなって音も変わっていくんだよ。田んぼを中心に振り返ってみると・・・春、雪解け水が用水路を流れ始める音。とどろくトラクターの音。「ちょろちょろ」と田んぼに水が入る音。かえるたちの大合唱。夏、せみたちの鳴き声。田んぼを渡る風がサラサラと硬質の音を出すようになれば稲刈りの季節、秋だ。
白いお米は、それらの音を吸い込んで成長する。ふくらんだお米は、ふるさとの音のパッケージ。パキッと割って耳元に持っていってごらん。カエルやセミの声が聞こえるぞ、なんてね。(ここのあたりがちょっとはずかしい)
もうじき稲刈りだ。今年、2.2haの僕の田んぼには殺菌剤、殺虫剤を使用しなかった。お盆のころまでは順調に成育してきたのだが、その後、急速に「いもち病」がでてきた。これはカビが作り出す病気で、高温多湿の気候が続くと発生する。それにかかると稲は成長途中で枯れていく。
堆肥を多く入れすぎたのかな。肥満した人がどちらかといえば病気にかかりやすいように、稲も栄養過多は病気に弱くなる。春先の堆肥散布のときはその辺を考えながら施したのだが・・・。
農協の技術指導員は「農薬を制限した人や使わなかった人にずいぶん被害が出ているよ。」と教えてくれた。
「当たり前に農薬をかけておけばいいものを。」まわりからこんな声が聞こえてきそうだ。いもち病にかかった田んぼを前に、環境や食の安全性を説いてもほとんど説得力がない。農薬を制限してお米を作る運動全体が笑われているようでとても辛い。
被害を補償する「農業共済制度」というのがあるが、それに該当するには、共済組合に被害届を出して、幾人かの農民評価員に見てもらわなければならない。彼らは田んぼをくまなく診て回りながら評価を下す。その間中、ぼくはさらし者になっている気分になる。被害届け、出すのは止めようかな。なーに、その分、酒を制限・・・無理かな。
全部の田んぼに被害がでたわけではない。また、LLの網目を通っていくおコメしか発送しないので、病気にかかって未熟に終わったお米は消費者に届くわけではない。発送するのは健康なお米だけだ。消費者には迷惑をかけないが・・それでも悔いが残る今年の米作りとなった。
白になって、緑になって・・・なんて言っている場合じゃないよなぁ。
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2007.09.14:kakinotane
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