菅野芳秀のブログ

▼鶏舎の雪囲い

たいへんお待たせいたしました。ようやく「稲刈り」が終わりまして、今日から再開です。なんか、文章の書き方をすっかり忘れてしまったかのようです。気楽なニワトリの話は「ぼくの・・・」へ、それ以外の文章は「虹色の・・」へ。それぞれが重複している文もあるので、バックナンバーの文章も含めて、雪が降ったら休んで整理しなければと思っています。それではおのおの方、これから・・参りますぞ。

里にも何度か雪が降った。春まで消えない雪を指して「根雪」というが、いまやそれがいつ来てもおかしくはない時期に入っている。例年ならば、消えたり、降ったりを数回繰り返したうえで、ドカッとやってくるのだが、昨年は初雪がそれだった。「まだ大丈夫だよ。」とタカをくくっていた農家は大いにあわてた。でもあとのまつり。収穫すべきたくさんの越冬野菜が、雪の下でそのまま春を迎えることになった。

「農家は・・・」なんて、他の人のようなことをいっているけれど、この辺がぼくの限界でしょうか。お察しのように自分のことなのだけど。
 
何しろわが里は毎年2m弱の積雪を記録するところ。根雪はいつ?明日か、明後日か・・・、その時期がせまってくると、人びとは家や畑の周りを走り回るようになる。野菜の取り入れ、家や庭木の雪囲い、果樹の支柱たて・・もちろん雪の下で潰れてしまうようなものは外に放置することはできない。やるべきことはたくさんある。さすがに12月も半ばとなると、すっかり冬の準備を終えている農家がほとんどなのだが、横着なぼくは例年のように、まだ半分しかすんでいない。肝心の鶏舎の雪囲いがまだ終わっていないのだ。

「よしひで、早くしないと雪がくるぞぉ。あっちだこっちだと農作業をほっといて飛び回っているからこんなに仕事が遅くなってしまったんだ。世間に笑われるぞぉ。みっともなくてはずかしいごとぉ。外に出て行くのはやめて、はやくしんなねごてぇ。」
88歳と84歳の両親は嘆く。嘆かれるのは50代になったぼく。情けない話だが、毎年のことだ。

 冬の間、ニワトリ達は鶏舎の中ですごす。屋根があって、四面が金網で、新鮮な空気が通り抜けていく。春から秋にかけては快適だが冬はまったく事情が違う。雪囲いをしなかったら大変だ。金網を通して吹雪が容赦なく入り込み、一晩で中は真っ白になる。鶏舎の中で積雪10cmとなることもめずらしくはない。そうなると寒さと冷たさでニワトリ達は動けない。すみの方でひとかたまりとなってじっとしている。

 やがて雪が解けても床はどろどろ、田んぼのなかにいるような状態になってしまい住まいとしては最悪だ。玉子を産むどころではなくなってしまう。鶏舎のなかにぼくが入っていくと
「どうにかしてくれよなぁ。やってらんないよお!もっとしっかりしてくれよな。」
ニワトリからもそんな嘆きの声が聞こえてくるようでなさけない。

スコップを持ってきて丹念に鶏舎の雪をかたづけ、乾燥したモミガラを厚く敷き詰めることで何とか過ごしやすい環境をつくるのだが、ダメージは大きい。ニワトリとぼくとの「信頼関係」にもきっとひびが入っているはずだ。

鶏舎を金網の外から透明なビニールで囲い、板を打ち付け固定する。固定があまいと、吹雪がいっぺんにビニールをはがしてしまい、ビリビリと破いてしまう。吹雪の破壊力は大きい。
 
もっと早くからやればいいものを、いつもぎりぎりにならなければできない性分。毎年、雪降りのなかでの作業となる。ハナミズを垂らしながら、冷たさで手がかじかむのを耐えながら・・でも、ま、こんな作業も嫌いではないけどね。ヘッ。

 ピリピリするような寒さのなかで、かがんだり、伸びたり、釘を打ったり、ビニールをはったり、・・・していたら
「おい、腰を壊すなよ。」といいながら、幼なじみの正さんが手伝いにきてくれた。こりゃありがたい。あんたにはいつも助けられるなと礼をいいながら、ハナミズを垂らしながらの作業を続けたのだった。

 写真は手伝いに来てくれた正さんと雪囲いの様子。


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2006.12.20:kakinotane
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