菅野芳秀のブログ
▼あとは自分で何とかしよう
いよいよ農業の世界は切羽詰まってきた。特に稲作では際立っている。「おれ、都会人だから関係ない」って?食糧を供給してきた農業の危機は、あなたの食といのちの危機に直結している。
まず、いま食べ物の供給地である農村で起きていることを稲作を中心に、思いつくままあげてみる。
@ 農民はどんどん離農している。もちろんずいぶん昔からその傾向はあったが、ここ数年はそれ以前とは比べものにならないぐらいの早さと規模で離農が進んでいる状態だ。村では今までになかった「農仕舞い」(農終い)という言葉が行き交う。安さを求めて風土の違う海外の農産物と無理やり価格競争させ、国内農産物を買い叩いてきた結果だ。農家のコメの出荷価格は生産原価にすら届かない。こんな国ではアホらしくて農民なんてやってられないという事だろう。自分の家族の為のわずかな畑や水田を残して、後はきれいサッパリと離農する。
A その結果、農民と言えば、少数の大規模農家(法人)と、今さら勤めには……と残った、わずかな年寄りだけ。就農している農民の年齢ピークは70〜73歳。その人たちもあと数年で現場から離れていくだろう。そのあとを継ぐ世代はほとんどなく、わずかな大規模農業だけが残るのだろうが、それもやがて離農に追い込まれていくだろう。無策のなか、国内農業には破綻への道だけが開かれている。
B プロの農民たちが逃げ出すぐらいだから、現場は慢性的労働力不足。だから圃場も充分に管理できない。水田から春の若草の風景が消えつつある。代わりに広がっているのは、除草剤による枯草の風景だ。農法の省力化、ケミカル化だ。SDGs?どこの話だ?
C そこに追い打ちをかけているのが海外に依存している化学肥料と家畜のエサの高騰。そして、農業機械の高騰だ。機械への補助金があるだろうって?それは昔の話。今は規模拡大など「成長路線」の計画書を提出できなければ補助の対象にはならない。よって現状維持の菅野農園などの家族農家には一切の補助金が無く、いったん故障したらそのまま離農するしかない。つまりは「小農はやめてしまえ」という事。事実、どんどんやめている。
D その上、頻繁な異常気象とコロナウイルスや政変などによる流通ルートの不安定さだ。その結果、最悪のシナリオが近づいているようにも見える。これは国民的な問題だ。そうなったなら遺伝子組み換え作物であろうが、農薬漬けの穀物であろうが、それがコオロギなどの昆虫食であっても、手に入るものは何でも食べなければならなくなる。
E トマホークの買い付けなどと言っている場合じゃない。安定して食べ物を確保する道、自国の農を育てる道こそ肝心だったのだが、農の崩壊過程に入った今となってはもう遅すぎかもしれない。
F そんな事態が近づいているにもかかわらず、食べ物を粗末にするおバカな番組が横行して、食の危機を改善する民意が育たない。政治も国民のいのちを守る、最低限の役割を果たしていない。
もはや「ゆでガエル」状態だね。感性が完全にイカレテしまっている。
だけど、全ての国民がアホなわけではない。ある種の破局が近いことに気付いている人たちは、首都圏を離れ、あるいは離れずとも、田畑と暮らしとの距離を縮め、自力で生存の道を確保しようとしている
ちょいと話が変わるがな。3月下旬の夜半。わが家の鶏舎にキツネが侵入して、ニワトリ100羽を残らず殺していくという事態が発生した。厳重に警戒している中での出来事だった。もし侵入に失敗したら、俺たちが彼等を捕まえていた。現に菅野農園では今までにも7匹ほどのキツネを捕まえ、処分している。それでも奴らは来た。食べ物を求め、覚悟の上での侵入だったのだろう。
食べ物が無いという事はそういう事だ。命がけのこと。人間だってキツネにもなる。
俺は幾度となく、警鐘を打ち続けてきた。あとはあなた方が自分で何とかするしかないな。でもな、最悪の時を迎えた場合でも、残っている小農はきっと、あなた方と共に一緒に食べ物を探す努力はすると思うよ。でも基本は「自分で何とかすること」だ。
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2023.06.01:kakinotane
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