菅野芳秀のブログ

▼ニッポンよ、そして君よ!

ニッポン!そして君よ!
 稲刈りが続いている。
この時期、稲作農家が気をもむのはコメの出来ばかりではない。カメムシの食痕があるかないかだ。食痕があれば琥珀色の玄米の中にポツポツと黒いコメが混じる。前にも書いたが、その食痕が1,000粒の中に1粒以内ならば一等米。2〜3粒ならば2等米。4〜7粒以上ならば3等米というように格付けされ、農協への売り渡し価格に差が付けらる。ただでさえ安いコメ価格。2等米、3等米になったなら眼もあてられない。作付け面積にもよるが数十万円の差はすぐについてしまう。
 コメ価格の暴落とカメムシの被害による格付けの低さ重なれば・・例えて言えば、好きな相手からフラレタだけでなく、付き合った時にかかったお金がまるまる経費として請求されたようなもの。選挙で言えば落選したところに、借金取りと逮捕状が一緒に来たようなものだ。
 ところで農家はそんなリスクを前にして、緊張しながら食痕の検査を受けているが、米屋さんやスーパーで売られる時には「一等米」も「2等米」もなくなってしまう。ご存知のようにただ品種と産地が書いてあるだけだ。
 もそも3等米程度(1000粒に4〜7粒のカメムシの害があったとしても、食べるコメの味にはほとんど影響がないし、消費者に渡る前に「色彩選別機」にかけてとってしまう。。
 でも、農家は審査を頭に置き、わずかな斑点も無くそうと回数多く農薬散布する。格付けを上げるにはそうせざるを得ないのだ。
日本は世界屈指の農薬大国。食の安全性よりも見た目重視の国。その等級基準を変えれば農薬の量もずいぶん減ると思うのだが、そうはなっていない。
 この制度によって、シミ一つない作物を得る代わりに、トンボやカエルなど田んぼで生息する様々な生き物が激減している。農家が農薬を吸い込み、全身に浴びる状態を招いてもいる。トンボもカエルも農家も苦しい。
 ニッポンは何を大切にしているのだろうか。
 それは国の舵取りの問題だ。そしてこの政府を選んでいる我々一人一人の問題でもある。
 改めて問わなければなるまい。ニッポン!そして君よ!お前はいったい何を大切にしているんだ。国民の命ではないのか!人々の暮らす風土ではないのか!

2022.10.02:kakinotane

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