菅野芳秀のブログ

▼オレのものだぁ!

おもしろいねぇ。どうしてこうなのだろう。
遊び、愛情表現、ケンカ、散歩、虫を追いかける姿・・・ニワトリたちを見ているといつまでも飽きることがない。それに彼らの一つ一つの行動が人間社会に重ねることもできて、おもわず苦笑してしまうことが多いんだよなぁ。

例えば食事風景だけどね・・。ニワトリたちは三種類の食事をとっている。トーモロコシ、カキガラなどが入ったいつもの「定食」に、野菜くずや草の「サラダ」、それに「日替わりランチ」と呼んでいる学校給食の残りものだ。このランチ、当然のことながら種類が多く、ひじきの煮もの、煮魚、ポテトサラダ、かぼちゃの煮つけ、スパゲッティーなどさまざまだ。

 ニワトリたちは、このランチがことのほか楽しみらしく、トラックに積んで近付いていくと、それを察して、近くにいる者達だけでなく、遠くで遊んでいた者達も「キャッ、キャッ、キャッ」と大きな歓声をあげて駆け寄ってくるほどだ。 これをタライに小分けして部屋ごとに与えるわけだけど、それぞれの鶏舎の戸を開け、彼らの中にドスンと置くと、間髪入れず、すさまじい勢いで飛びついてくる。面白いのはここからだ。

 夢中でタライを突っつく群れの中から、なにかを口にくわえてサッと部屋の隅っこのほうに逃げ出すものが必ずいる。自分が見つけた「いいもの」を独りじめしようという魂胆のようだ。

「いるいる、こんな奴が、人間社会にも。」

ところが、これを横取りしようと追いかけていくものが、これまた必ず出てくる。

「うん、これもいるぞぉ。」

争奪戦の結果、たいていの場合、その「いいもの」は持ち出したニワトリの口には入らず、結局は追いかけていったニワトリか、さらにそのニワトリを追いかけた第三のニワトリに奪われてしまうのだ。

「これも同じだよなぁ。」

それでも最初のニワトリは、食事の間中、懲りずに同じことを繰り返しているからおもしろい。

実際のところタライの上には、同じものがたくさんあり、何も逃げ出さなければ食べられないものではないのに・・・。現にタライの前から動かずにもくもくと食べているニワトリもいるのだから。

「大局観が欠落しているというか、目先の欲に振り回されて、自分を見失っているというか・・・。結局ソンをするのはこういうものたちなんだよなぁ。」

 口にくわえて逃げ出すもの、あわててそれを追いかけるもの、動かず、ただもくもくとたべているもの。どちらがいいというのではない。いろんなニワトリがいていいのだ。社会というものはそういうものだし、だからおもしろいともいえるのだから。

あっ、そうそう、ここから何か教訓を引き出してやろうという訳ではないんだよ。ただおもしろいと・・。それだけなんだけれどね。

ニワトリたちは今日もにぎやかにそれをやっているよ。



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